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ウルトラマンの水中メカの謎について真面目に考えてみた『実物大の特殊潜航艇S号の大きさとは?』

ウルトラシリーズではジェットビートル、ウルトラホーク、ポインター、マグマライザーと様々なメカが登場しますが、水中メカというものはあまり活躍しません。
昭和シリーズでは特に第二期ウルトラシリーズでは、『設定上は存在するけど、本編では活躍しない』というパターンがほとんどです。

そんな不遇の水中メカの第一号こそが、初代ウルトラマンで登場した『特殊潜航艇S号』となります。


◆はじめに:特殊潜航艇S号について

初登場したエピソードは記念すべき第1話「ウルトラ作戦第一号」
そうです。ウルトラマンの一番最初のエピソードでジェットビートル、小型ビートルと共に初登場した由緒正しき、ゲストメカの始祖にもなるのです。

その第1話での活躍は、湖に潜った怪獣ベムラーを空中からのジェットビートルと一緒に攻撃するというものでした。
最後はベムラーの反撃で壊されてしまいますが、初陣で巨大怪獣との戦闘を飾ったとてもインパクトのあるシーンでした。

このS号は型番が付いており、登場するエピソード毎にそれぞれ違う機種となっています。
第1話で登場したのは『S16号』さらにその後、10話「謎の恐竜基地」と24話「海底科学基地」で登場した際はそれぞれ『S21号』『S25号』という型番の機体が登場します。

水中翼には魚雷装備。サーチライトやソナーも完備。

登場回数は全39話中、たった3回だけと少ないですが、ウルトラセブンに登場した潜水メカ・ハイドランジャーが登場回数の割にまともな戦闘シーンが少ないので、見せ場が多いS号は結構恵まれた扱いだと言えます。

ウルトラマンは序盤の終わり過ぎから撮影の都合でプールが使えなくなって水に関連するエピソードがほぼ展開できなくなったため、その点はちょっと不遇と言えるかもしれません。

◆S号のスペックとディティール

公式が発表しているS号のスペックについては、以下のようになっています。

  • 全長:9メートル

  • 全幅:2.4メートル

  • 重量:24トン

  • 速度:20ノット

  • 乗員:1名

となります。S号は水中翼が付いているので、全幅はそれも含んだ値でしょう。
現実の潜水艦と比較するなら、第二次大戦中にドイツが開発した特殊潜航艇『ビーバー』というものがあります。

ちなみにこの潜水艇は大した活躍もできずに終わってしまったそうな。

こちらの動画では現代技術で復元されてしっかり動いています。
(42:00あたりから実際に搭乗しています)

ビーバーのスペックは以下の通り。

  • 全長: 8.9メートル

  • 全幅: 1.6メートル(魚雷なしの船体で約1メートル)

小型の潜水艦なので、こうして見ると特殊潜航艇S号もかなり小さいのが分かるんですね。
映像を見る限りでも、S16号とS21号はコクピットもかなり狭いのがよく分かります。

狭苦しそうなコクピット

◆特殊潜航艇S25号の謎

さて、特殊潜航艇S号の公式スペックは上記の通りなのですが、実はこれには大きな謎があります。
S16号とS21号はスペック通りなのは間違いないのですが、S25号の方はこれに当て嵌まりません。

映像を見ると分かりますが、S25号はコクピットが広くなっていたり、居住区が設けられて5人も乗っていたりと明らかに機体がS16号・21号よりも大型の機体だというのが分かります。

圧倒的に快適そうな広さに

ちなみに円谷プロ公認のPC-98のゲーム『ウルトラ作戦 科特隊出撃せよ!』でもプロトタイプのS号というものが登場しますが、こちらも少なくとも3人乗りなので1人乗りのS16・S21号より大型なのは明らかです。
キャップやフジ隊員はどうやって乗ってるかは不明ですが……。

使われている絵がS21号なのはご愛敬

以上のことから、S25号やプロトタイプについては公式のスペックが当て嵌まらないので、具体的なスペックが謎となっています。

◆『S25号』の大きさを考察してみる

他の乗り物との比較

そういう訳で、このS25号の大きさがどれくらいのものなのかを現実の乗り物などと比較しながら色々と考察してみることにしました。
放送された映像を見ると

  • コクピットはS16号同様セイル部分にあり、背後の短いタラップですぐ下の居住区に降りる。

  • 居住区は大人が直立できる高さ。

  • 奥行きは5~6人は並んでいられる。

  • 幅はタラップの広さと壁までの距離でおよそ3人が並べられる。

といったことが分かります。
なので、基本的な構造は以下のようになっています。

天井までの高さや室内の幅はマイクロバス(高さ:1.8~1.9メートル 幅:約2メートル)に近い感じと言えるでしょう。
ちなみにウルトラ作戦に登場したプロトタイプは完全三人乗りとした場合、そこまで大きくは無いと思うので以下のような感じで搭乗していると思われます。

後ろの席は横並び?

無論、装甲の厚さや設置されている床、その下に配置されているであろう計器類も計算に入れなければなりませんので、このままという訳にいきません。

日本海軍が開発した有名な特殊潜航艇に『甲標的』というものがありますが、そちらは全長がおよそ24~25メートルに対して船体の直径が1.8~1.9メートルでも、居住区内はS25号のような余裕はなくかなり狭いとされています。
なので、S25号は全長はともかく幅と高さはそれ以上でなければなりません。

公式スペックを倍化してみる

S号の公式スペックを単純に倍化してみると、以下のようになります。

S25号は50メートルの巨体とされるグビラと水中戦を繰り広げている場面がありますが、それを見てもかなり大型の機体であると言えます。
なので、全長だけなら2.5倍程度が適切と言えましょう。
しかし、これだけでは正確な大きさは把握できません。

メカコレクションのプラモデルで立体化されている特殊潜航艇S号ですが、このプラモの大きさは実際にスケールで計ってみると以下のようになっています。

  • 全長:99ミリ

  • 全幅:24ミリ

  • 全高:18ミリ

  • 船体幅:10.6ミリ

  • 船体高さ:12.2ミリ

  • セイル高さ:6ミリ

  • セイル長さ:14ミリ

  • セイル幅:3ミリ

  • 翼幅:6.7ミリ

全幅部分は公式のスペックからミリに変えると合致するのですが、全長の方は合わないんですね……。
まあ、そこはフィクションなので仕方がない所もありますが。
とりあえず、全長を公式に合わせるために90.91倍に変えてみます。

公式スペックに合わせる場合
プラモをそのままメートル換算にした場合

プラモから算出して予想の2.5倍にすると船体幅が一般的な路線バスくらいになるので、ほぼこれくらいと言えます。
しかし、全数値を全て同じに倍化すると矛盾が発生してしまいます。

それはセイル部分の幅です。
普通にプラモのデザインそのままをS16号に合わせてみると、明らかにセイルの横幅が小さすぎるんですね。
上で紹介したS16号にほぼ近いビーバーの潜航艇は、コクピットであるセイルの幅が50~60センチくらいなので、S16号もそれくらいは無いと乗ることすら不可能な訳です。

なので、均等に倍化しただけではS25号の大きさは算出できません。
そこで、セイルの幅をビーバーに合わせた上で縦・横・高さの比率を以下のように変えた上で見てみます。

これを見る限りだと、24、25メートル換算でちょうど船体の幅や高さも居住区の広さ+装甲の厚さ等に適していると言えるかもしれません。

◆結論&あとがき

私が導き出した特殊潜航艇S25号の大きさはズバリ『ウルトラセブンのハイドランジャーの半分くらい』です。
ハイドランジャーの公式スペックでは全長48メートルなので、S25号は24~25メートルくらいの大きさでないと本編映像のような居住区を設けるのは無理だと判断しました。
ちなみにプロトタイプの方はそんなに大きくないと思われるため、上の画像の例では全長15メートルくらいとしました。

この大きさで色々な乗り物と比較してみると、以下のような感じになります。

ハイドランジャーがいかに大きいかが分かる。

特殊潜航艇S号はデザインがシンプルに加えて本物の潜水艦に近いので、S16号くらいなら実物が作れそうな感じがします。
何とも夢があるウルトラメカだということがよく分かりました。

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