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さんにんめ。私たちはしらないうちに誰かを救っている。


土屋大吉(29歳)工場責任者

朝起きると、久しぶりに兄弟のグループlineが動いていた。弟からだ。(グループ名は株式会社キョーダイである。)

「兄ちゃん、お酒好きだったよね?スナックしようよ。」

またいつもの弟のほら吹きが始まった。

めんどくさいから、とりあえず、当たりさわりのない返事をしておこう。(真ん中の弟はめんどくさいから既読すらつけていない。)

「ええやん。社長よろしくお願いします。」

二年前は突然、「蒸留所を作ろうぜ。」と持ち掛けてきた。

突拍子もないし、意味もわからないのでスルーしたが、今回はスナックか。

しばらくしたら、この話もなくなるだろう。と思っていた。

しかし、今回はどうやらいつもと調子がちがった。

「物件決めてきた。」

そんなメッセージと共に、そこには、年季の入ったスナックであっただろう店舗の写真があった。

「本気?」

「僕はいつも本気だ。みんなでやろうぜ。」

だめだ。ついていけない。弟は小さいころからこうだ。

こうと決めたら、もうそれしか見えない。いつも振り回されてばかりだ。

でも、俺は昔とはちがう。今は安定した仕事に就いているし、これ以上振り回されてはいけない。

俺は大人なんだ。そう言い聞かせる。

「お店出来たら、客としていかせてもらうね。がんばれ!」

そう声を掛けることが、俺が弟に出来る唯一のことだ。

そして、一応、父と母に弟がやりたいことがあるから、応援しようと伝えた。

でも、なんで弟は兄弟で商売をしようと昔からいってくるんだろうか?

そんなこともなんとなしに母に伝えると、

「あいつはね、昔から見る目はあるのよね。」と言った。

確かに、弟は3兄弟の中で一番早く結婚した。

もしかしたら、弟には本当に見る目があるのかもしれない。

じゃあ、俺もいつでも弟を助けられるように日々準備をしておかないとだな。

#創作大賞2024
#エッセイ部門
#つながり

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