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海外に学ぶ都市再生の考え方−「ニューヨークのパブリックスペース・ムーブメント」を読んで
こんばんは。こんにちは。毎日更新41日目です。
今日は仕事始めでした。
出勤するほうが、シャキッとしますね。でも、能登半島地震や北九州の大火事、JALと海保の事故、とても明けましておめでとう、とは言えず。職場もわりとそんな感じでした。
今日は2024の1冊目の読書録。
東大の中島直人先生らが書かれたニューヨークのパブリックスペース・ムーブメントです。
ちなみに本のタイトルのパブリックスペース・ムーブメントという言葉はニューヨークの公共空間制作を牽引してきたNPOが出した20周年報告書のタイトルだったそうです。
どんな本?
最初に中島先生からの総論が書かれており、20以上のプロジェクトが経緯や考え方、その後の変化などをまとめて解説されておりました。水辺や街路、公園、民間開発、計画論などの切り口ごとに章立てされていました。
先月、本が届いたときに、サラッと読もうとしたけど、とても中身の濃いものだったので、時間があるときにしっかり読み込もうと年末年始の休みにとっておいたのでした。
献本してくださった著者の関谷進吾さんからは、「NYに行くときにみるべきポイントがわかる」と勧めてもらいましたが、いやいやご謙遜。
そんなもんじゃなくて、とーっても勉強になりました。
というのは、知ってるプロジェクトも初めて知るプロジェクトもありましたが、全体を通しても、横串で通じるものを感じられます。
ニューヨークが何を考えているか、「都市再生の芯」みたいなものが伝わってきました。
全体を通して思ったこと、気になったこと
随所に、そのプロジェクトの上位計画やビジョンの話が書かれていて、その目標設定がすごく参考になりました。
例えば、P68”境界なき公園事業”の目標は
①全ての人を歓迎しアクセスしやすくする ⇨出入り口を入りやすく
②近隣に美しさを広げる ⇨外(道)からの視認性の改善
③コミュニティのために賑わいをつくる ⇨歩道を公園のように
こんな計画、目標がいっぱい出てきて、なるほど〜と思ったのでした。
ついでに、目標が達成されているのか、評価がどう管理されているのかも気になりました。
目標設定が勉強になったということは、課題の観点が勉強になったということです。
全体的に「ニューヨーク市が公共空間を何のために大切にしているのか」が伝わってきました。
多様性だったり、人とのつながりだったり、まちを生きたものにするために、公共空間を増やそうと、しかもちゃんと”使われてる”公共空間を増やそうとしているんですね。
使われるように運営までデザインすること含めて整備だ、と書かれていました。
あとは、公共空間のプロジェクトで、こんなに気候変動が意識されているのか、ということも驚きました。
ストリートデザインマニュアルの植栽の項目が、ハリケーンサンディ後には小項目から大項目に格上げされていたり。
ウォーターフロントのプロジェクトでは「単に洪水を防ぐためのインフラ整備でなく、コミュニティをつなぐ多様な機能を有する公共空間のあり方を問う」コンペをされていて、防災の世界とまちづくりの世界がちゃんと繋がっているんですねえ。(そんな組織体制も解説されていました)
特に心に残った箇所3選
勉強になることがありすぎて、付箋もメモもいっぱいですが、青い付箋が特にビビビときたもの。
3つ選びます。
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公共空間の哲学
はじめの青付箋は、第1章の総論の最終ページでした。
ここで議論になっているのは「公平性」である。
公共空間は人々のつながりを促す場であり、階級や人種などによって分断された都市を再結合し、共有していくという、パブリックスペース・ムーブメントの目指すべき都市ビジョンが公平性をめぐる議論を通じて示されている。
すぐあとには、「都市を共有する」だとか、「公共空間は経済・社会・政治的な違いを超えて多様な交流をもたらすプラットフォームである」と解説されています。
なぜNYが力を入れたのが公共空間なのか、がよくわかりますね。
まずは即席、うまくいったらお金をかけて再整備
次はプラザプログラムの解説の箇所から。
NYでここ15年で数多くのプラザ(=街路上の広場)が整備されていっていました。
多数のプラザに共通する特徴として以下が挙げられていました。
②広場の路面はペイントで即席に仕上げられる。
まずはプラザの居心地を体験してもらい、地域関係者の合意が得られた場合にのみ、高質化の再整備を行う。(後略)
LQC(LighterQuickerCheeper)ですね。
日本でも「まずは社会実験から」という流れは定着しつつありますが、それでもペイントで即席、というのは本当に簡単に済みそう、な印象を受けます。お金をかけるのは、関係者の合意を得られてから!
ガイドラインをどう活かすか
日本でもよくある、ガイドライン作ったものの、それが浸透しない問題。
NYはストリートデザインマニュアルを策定した際に、それをどう実現させたかの方法が書かれていました。
マニュアルを、キャピタルプログラムと呼ばれる交通局のハード高質化や空間再配分の事業で必ず参照されるようにプロジェクトマネジメント(スコープ管理およびディレクターによるデザインレビュー)へ組み込んだ
ガイドラインに沿っているかを確認するよう、ポイントを設けているんですね。なるほど。やっぱこれくらいやらないとダメってことですね。日本も質のフェーズに入っていくのだから、補助事業がガイドラインに適合しているのか、確認するようにしたらいいんですね。
公共空間の活用は私有化か?
まずこの見出しの付け方にグッときました。編集者さんのセンス?すごいです。
この問いに対して、単なる私有化にならないために、
ストリートマーケットであっても、1つ1つの屋台ではなく、全体の感覚をつくりだす必要があります。(中略)飲食店巡りを公共空間としての役割に接続する方法を見つけなければならないのです。
ということでした。冒頭のニューヨークの公共空間制作を牽引してきたNPO(DTPS)の創設者のクレア・ワイズさんのインタビューのセリフでした。
日本でもNYでもこの問いは同じなんですね。
というわけで、ニューヨーク、見に行かねば!
今年、行けるかな・・・
もし公共空間やまちづくりに関わる方がニューヨークに行かれる場合は、この本は必読です〜!
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