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みちづくりはまちづくり。ストリートデザインガイドラインのポイント5選

 「路上を車のためだけでなく人のための空間として使っていこう。」「そうしたらきっと住む人の幸せにつながっていくはず。」海外のウォークシフトに憧れているばかりでしたが、日本もようやく盛り上がってきました。歩行者利便増進道路の制度ができたり、道路分野の改革が進んでいます。

 そんな中、”ストリートデザインガイドライン”は、今から1年前に国土交通省の都市局と道路局によって策定されました。第一線で活躍する専門家の先生方によって議論され作られた、”歩きたくなる街路づくりのための参考書”です。なんですが、さすが行政資料、分厚くてボリューミー。さらっと目を通すにはちょっと重すぎます。
 今日はこのガイドラインから私の好きなポイントを5つ紹介します。もちろん独断と偏見ですのでご了承ください。
※画像はストリートデザインガイドラインより。一部筆者の手持ち写真。

1.街路は通るためじゃなくて居場所にもなり得る。Link&Place論

  これまで街路は自動車交通量を基準に整備されてきました。”通り”とは何かが通るためのものという考えが当たり前になっています。何かが置いてあったり居たりしたら「邪魔だな、道におかないでよ」と思ってしまいますよね。それを、このガイドラインでは「ストリートには通行のためだけなくて、滞在つまり居場所としての機能もあるんだよ」と言っているんです。Link&Placeという考え方です。(記載箇所は22ページ)

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 ガイドライン概要紙にもこのLink&Placeを紹介するくらい、考え方を全面に出しています。日本のストリート界にとって画期的なことと思います。なお、この考え方はイギリスのピーター・ジョーンズ先生が提唱された概念とのことで、海外でも積極的にストリートの設計に取り入れられているようです。

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2.街路空間は建物の壁面も含めて考えよう。

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先日の記事で「沿道の建物の壁面がアクティブだと歩きたくなる」ことについて紹介しました。街路設計は路面だけで考えられがちですが、建物の壁面がどうかによって、歩行者にとって通りの印象は大きく変わります。
 行政がどうにかできる領域を超えていますが、少なくとも意識はしたいですね。できることならば、沿道のお店や住宅も巻き込んでそのストリートを一緒に作っていけると理想ですよね。景観条例や、できるだけ通りに開いたお店にしてもらうよう働きかけるとか。要は官民連携が大事、ストリートの再生をしかけるときには民間と繋がって動くことも大切、ということです。

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 ファサードが与える影響や、歩車道の境界のデザインについても57ページあたりから触れられているので、興味がある方はこちらも参照してみてください。

3.公共空間は使いながら作っていく。整備と活用の両輪。

 一番好きな箇所です。”公共空間の整備は作ると使うを繰り返しながら進めよう”。 数年前から強調されている話ですが、改めて「利用する立場から」「運営を意識して」デザインしましょうということですね。人口増加の時代には作れば使う流れでしたが、今の時代はどんなものが使われるものなのか、試しながら作っていかなければ、使い勝手のよい空間にならない、と言われています。

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私もこの考え方を刷り込まれて、地元の公園の再整備計画の「使いながら作る」の一助にとキャンプイベントを開催してみました。役所の再整備担当者も参加してくれましたが、「計画のイメージが沸いた」「自分ごとになった」と言ってくれていました。嬉しい限りです。

とは言ってもやはり、「使ってみる」って難しいですよね。特に行政の人にとっては。役所の内外に活用してくれる人がいれば幸運ですが、難しければまずは仲間を探してチェアリングなんていかがでしょうか。その場で過ごし場所のポテンシャルを感じることが大切な気がするので、まずは気軽にできることをやってみることをオススメします。

4.”軒先1m”活用からはじめよう。ウォーカブルへの第一歩?

 2020年は新型コロナ関連の店舗支援として、飲食店のテラス営業の許可が降りやすくなりました。(通称コロナ道路占用許可ソトノバさんのまとめの通り、多くの地域でテラス営業が行われ、図らずしも路上活用には追い風になったのではないかと思っています。

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これはコロナ関係なく、上記の「使いながら作る」のために大切なことだと思います。公共空間、道路の場合は、「まずは街の人が使うことに慣れるために、軒先1mをお店の延長として使ってみるのがいいんじゃないか」と西村浩先生が提唱されてます。(議事要旨

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飲食店に限らず、お店が通り側まで滲み出してくると、ぐっと通りが魅力的になりますね。まずは軒先1m、通りに滲み出す社会実験をやってみましょう。

5.プレイヤーの大切さ。絵に描いた餅にならないために。

 今まで書いてきたことは通りを使う”誰か”がいないと実現しません。そうです。プレイヤーが必要なんです。ストリートデザインガイドラインでもプレイヤーを見つけましょう・育てましょうと言っています。「人」に焦点が当てられること自体がとても新しいですよね。何もない状態でストリートの再整備の計画だけが進み、整備完了後には使い手のいないガランとした空間になる、なんて絵に描いた餅...!そうならないために、計画が立ち上がる当初からプレイヤーについても意識しましょうね、ということでした。

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 ですが、プレイヤーを見つけるのもこれまた難しくて、ガイドライン本文では苦戦していそうでしたが… プレイヤー探しに関しては、私は園田聡さんの著書にヒントをもらいました。また、自分の地域でのプレイヤー探しについて、とある研修で紹介させてもらいました。動画の後半部分10分30秒くらいからです、もしよければ参考にしてみてください。

おわりに:

 この記事はウォーカブルってなんやねん、どうすればいいの?とお悩みの公務員仲間に少しでもヒントになればと思って書いてみました。ストリートデザインガイドラインは「居心地がよく歩きたくなる街路の参考書」と副題がつけられています。つまみ読みをしてヒントを得れるものだと思うので、ウォーカブルの担当者の方は是非一度読んでみてください。紙に出力してを一冊机に置いておくことをオススメします。また定期的にアップデートされるようなので要チェックでもあります。

 私も公務員ですが、行政が出してるガイドラインについて私的に書くってかなりビビりながら書きました。なんですがこのストリートデザインガイドラインには思い入れもあって、まだまだ紹介したいポイントがあります。例えば笑顔度の話とか。気が向いたら続編も書こうと思いますがどうでしょう?w どうぞよろしくお願いします。

2021.3.26追記
ご要望いただけたので、続編を書きました。よければこちらもどうぞ!




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