闇のブローカーと不動産 第5話「恐怖の口頭契約」
「ご無沙汰しております、松本です。突然で申し訳ありませんが、ienaiさんが先日購入された戸建に、森さんが住みたいと仰っています。よろしいでしょうか?」
私は少し考えたが、毎月のローン返済が始まっており一刻も早く入居者を見つけたかったのでOKを出した。
しかし、そこから地獄の日々が始まった。。
通常であれば、建物の賃貸借は仲介会社を挟んで契約書を結ぶ。
契約書はいわば「最悪の場合の約束事」であるが、当時の私は本当に愚かで契約書も覚書も何も締結せず、二つ返事で自分の大切な不動産に住まわせてしまった。
森は初めのうちはきちんと家賃を支払っていたが、そのうちに遅れたり半額しか払わないようになり、そのうちに全く払わなくなってしまった。
催促をすると「必ず払います」と返事が来るが、結局支払われない。
初めのうちは私も腹が立って何度も催促していたが、そのうち疲れてきて途方に暮れていた。
と、完全に諦めかけていた私であるが、とある不動産営業マンとの出会いにより事態が変わっていく。