僕の右ポケットに しまってた思い出は やっぱりしまって歩くよ
4月になると、大学一年生の寮生時代、同室の仲間達と一緒に聴いた歌を思い出す。
聴いた、どころか、自転車を漕ぎながら思い切り合唱までして。
田舎なのをいいことに、笑いながら大声で。
それは全然、春の歌ではないのだけど。
あれは、いずれ来るかもしれない別れを孕んだ曲だった。
来ないかもしれないけど、来るかもしれない別れ。
やっぱりいつか皆んな別々の道を歩き出す。
寮は一年限りで、二年生に上がるとわたし達が通うキャンパスはバラバラになる。
同室の仲間達とは、一年後にバラバラになることが決まっていた。
初めから決まっている別れに向かって、だけどこの歌は、それを寂しく思うばかりのものではなかった。
あなたがいない季節。
あなたのいない日々。
それでもわたしにはわたしの道があって、そこを歩いていく時に、きっとあなた達と過ごした日々が頭の中を巡る。
また一歩前に踏み出すための力になるのだ。
たとえ「その時」がひとりでも。
ひとりきりの道のり、でも、皆んなで歌ったあの歌は、皆んなで過ごした
あの日々は。
別れてからも胸の奥で、きらきらと巡り続ける。
ひとりでも、歩いていけるように。
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