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何かを始めてみたくなる『蜜蜂と遠雷』(恩田陸)

久しぶりに小説を読んだ。おうち時間が長くなったコロナの恩恵。

この本を知ったきっかけは、2019年に宣伝会議主催の「編集ライター養成講座」で、講師の方が話題にしていたことからだった。

「本の売り場づくり/POPの書き方」講座で、三省堂書店有楽町店副店長(当時)の内田剛氏が、

「『蜜蜂と遠雷』のブックデザインは、鈴木成一さんのデザイン。この本は『2017年本屋大賞』に選ばれている。」と。

その時から、ずっと読んでみたかったので1年ぶりに読むことができた。

ちなみに「本屋大賞」という言葉も、「編集ライター養成講座」を受講して初めて知った。ふだん、算数や数学の教材編集ばかりしていて、ものがたりを読んだり、知ったりする機会などほぼなかった。本好きの方から見れば、なんとお恥ずかしいことか…。

「本屋大賞」は、こちらも「編集ライター養成講座」の講師をされた博報堂ケトル取締役の嶋浩一郎氏が作られた。

嶋先生は、

「インサイト=ターゲットの隠れた欲望を引き出すことが大切」

とおっしゃっていた。

先生が書店を回っていると、書店員が口々に不満を言葉にしていたのだそう。

「なんであんな本が直木賞なのよ!」←(私たちには、もっと売りたい本があるのよ!)

直木賞はいわば作家が選ぶ賞。全国の書店員が選んだ「いちばん売りたい本」を本屋大賞としてみるのはどうかと嶋先生は考えた。

書店員が不満気に話していた「文句」には、意外とインサイトが隠れているという。

前置きが長くなったが、この本の感想を。

読んでいる途中で、曲が聞きたくなり、YouTubeで検索。

「ふーむ。こういう曲なのか~。」

聞こえない音楽を文でここまで表現できるとは。

栄伝亜夜(イメージでは、映画化された松岡茉優)とマサルとのやりとりで、自分が高校生の時に感じた恋心を思い出した。

第一次予選で明石の弾く姿に、妻の満智子が見守るシーン。まわりから音楽家である夫を見下された時の屈辱感や、今まで夫が練習してきたこと、夫の苦悩する姿・言葉などを思い出しながら、ピアノに向かっている夫を応援するシーンでは、涙があふれてきた。本で泣くのは久しぶり。

一気に読み進められた。

読んだ後は、ほんとに久しぶりに自分もピアノを弾いた。

「あ、こんなに清々しいなんて!」

私もピアノ、定期的に弾いてみようかな。でも、この時期だけかもしれないな。仕事が忙しくなったら、きっとできなくなってしまうんだろうな。

コロナで自粛の間、家でできる癒しの時間。またひとつ、みつけられてよかった。



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