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順調に出世していた「大手自動車メーカー」を辞め、転職した理由 ~有名な会社が安泰とは限らない~軸を持って転職に臨め

プロフィール 山下 啓介さん(仮名)37歳
1983年山口県生まれ。上智大学理工学部卒業。2008年大手自動車メーカー入社後、2017年に生命保険会社の営業として転職。現在の職業はコンサルタント。妻と2歳と4歳の女の子の4人暮らし。

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今の自分があるのは、数学の先生のおかげ

僕、みんなが思っているより実は結構バカなんですよ。高校の時は、偏差値40くらい。大学には行っておいたほうがいいんだろうなと思って浪人しました。その時に出会った数学の先生が衝撃的で。ボランティアでアフリカなどに医者として行ってた先生でした。アフリカの子どもたちにはいつも、「筆記用具ちょうだい」とねだられるらしいんですよ。どうしてかというと、勉強して医者になって病気で倒れている周りの人たちを救いたいから。

先生は、僕たちに「君たちは、いくらでも好きなものが手に入るでしょ。なのに、なんで何もやらないの?」って。やる気になってやれないことってなんだろうって逆にわからなくなって。こういう恵まれている環境っていうのに気づけなかった。そこから真面目にやれることはやらなきゃいけないと思って勉強しました。上智大学の工学部に入った理由も、これといってありませんでした。工学部のほうが、なんとなく広く学べると思ったので。

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「大手自動車メーカー」を辞めた理由

 自動車メーカーに入ったのは、2003年にホンダのF1レースを観戦していたことがきっかけでした。世界を相手にエンジニアが技術力をものすごく高めていって、表彰台に上ったのを観た時、感動したし、勇気をもらった。僕も、自分たちが作り上げたものを、全世界の人たちに発信していきたいと思いました。

入社後は「生産技術」部門で仕事をしていました。設計部門から、製作部門への橋渡し役。設計から上がってきたものが、そのままだと作れないということが多々ある。いかに安く高品質なものを考え出すのが「生産技術」の仕事です。車を作り始める前までの準備をするので、トライアルをずっとやり続ける。平日は工場が動いているから、その合間を縫っておこなうのですが、うまく行かない時は、突発的に休日に出て終わらせなきゃいけない。基本、僕は残業をしない人でした。年間360時間までが基本で、僕はほぼ超えなかったけど、周りはほぼ超えてた。でも、順調に出世はしてました。


毎日予定が見えなかった。ちょうどその頃、結婚を考えてた時期で。急にこの土日どうなるかわからないっていう状況は、家族をいちばんに考える僕にとって結構悩みどころだった。

いい会社に入ったからといって、別に働かなくてもいいわけじゃなくて、高い給料もらってるってことは、それなりに大変です。高い給料分の結果を出さなきゃいけない。

いい会社なのに、なんで辞めるのって思われることは理解していました。だけど、僕の中で社会的変化がすごく怖かった。特に製造業は何がどうなるかわからないし。10年前に電気業界もやられたし。あれだけ安泰と言われたシャープもやられたし。「大手」と言われている自動車会社で9年働いてきたけれど、いざ外に放り出された時に、何ができるのか不安があった。持論として、強いものが生き残るんじゃなくて、変化に対応できるものが生き残れるって思うんです。だから、35歳で動けるときに動いたほうがいいと思って転職しました。
もうひとつは、やっぱりユーザーの反応を近くで感じることのできる仕事がいいと思った。自動車メーカーでの仕事はすごくお客さんの役に立ってたと思うんだけど、エンドユーザーに直接会えるわけではないですし。

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180度違う業界へ転職

生命保険会社に転職したのは、僕がその保険会社の顧客で、担当営業の人が尊敬できる人で、その人に転職の相談をしたら、「うちに来ませんか」と勧められたことがきっかけ。はたから見れば、アホかと思われる理由だったかも知れない。技術職から営業職だから、180度違うし。でも、自分のできることから転職を考えてしまうと、幅が狭くなると思ったし。僕の中では変化を起こすのだったら思いっきりいこうと。


入社した瞬間、衝撃的にキツかったです。考え方の文化が全然違った。「ザ・体育会系」という感じ。自動車メーカーの時は、技術職だったから論理的に積み上げて、ある程度確信をもってやろうとしてたけど、そこの保険会社では、とにかく数をこなして慣れましょう、みたいな。お客さんと直接関わる仕事だから、「人として」ということをすごく求められた。話すのは、理系としてはできたけど、営業の本場の人たちのレベルについて行かなくちゃいけないってなると、結構大変だった。

でも、お客さんに「山下さんから説明を受けて、入れてよかったです」と言葉をもらったときは、嬉しかった。保険の概念を変えるからだと思う。「何のために保険に入るのか」と自分が万が一の時のことをしっかり想像してもらう。お子さんがいる人には、将来のお子さんに対する考え方を夫婦それぞれに聞く。そうすると、「夫婦それぞれの認識があった、こんなふうに自分が考えてたんだ、と整理できました」と言ってもらえたりします。

その後、コロナの影響でまったく対面営業ができなくなった。それと、自分の売り上げのために、お客さんに負担をかけてまで話をしないといけないことに違和感を感じるようになったのは事実。僕は人の気持ちを結構考えちゃうほうなので。180度違ったところで経験してみて、自分の力をもっと発揮できそうなコンサルティング会社に転職した。誰かの課題を解決する仕事。領域は広いです。問題解決は徹底的にやってきているので、そこに対してのアプローチの仕方は専門性があるので、今までの経験を生かせる仕事です。

転職を考えている30代半ばの方へ

転職をする時、まずはWant(ウォント)を考えることは大事です。自分がどうなりたいのか。35歳くらいになってきたら、自分の将来って描けると思う。5年後、10年後、20年後で、自分はどうなりたいか。自分が何をモチベーションにできるのかを考えることもすごく重要。そういうこと、ちゃんと整理したほうがいい。僕は、「家族」という部分がすごく大きくて。子どもたちに対して、なんかイヤイヤ苦しそうに仕事をしている姿を見せるよりは、自分のやりたいことを一生懸命やってる姿を見せたい。

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転職に、100%の確信はないわけですよ。8割くらいいなと思うんだったら、動いたほうがいいと思う。年齢はどうしてもネックになるから。悩んでる暇はないと思う。転職って何が難しいかというと「期限が決まってない」ことなんです。仕事は期限が決まっているけど、転職は自分が決めなきゃいけない。でも、なんとかなる!なんとかしよう!と思ったら、何とかできちゃう。自分次第です。

将来は、金融業界に入りたいです。お金で困っている人たちもたくさんいるわけで。知識があれば救えることってたくさんあるなと保険会社で働いてみて、よくわかった。そういう勉強をして、困っているっ人たちに、ちゃんとしたものを提供していきたいということが、僕の最終的な目標です。

※本文イラスト:ごるちき

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