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コロナの中、不妊治療を続ける36才の医療事務職の話

鈴子さん(仮名) 医療事務 36才
千葉県市川市在住。2014年結婚。都内の薬局・ドラッグストアに勤務。2019年6月ごろから不妊治療を始める。新型コロナウイルス感染拡大の中、毎日のように薬局に出勤し、業務にあたる。彼女がどのように仕事を続けながら不妊治療をしているのか取材した。

働きながら不妊治療を続けるには、職場に近い病院で
「『ミュラー管ホルモン』が低いって言われて…。」
抗ミュラー管ホルモンとは、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンのこと。卵巣内にどれぐらい卵の数が残っているかを調べたところ、鈴子さんの卵の数はかなり少なくなっていた。検査した医師からは、「『タイミング』をやっている場合じゃない。年齢のこともあるし、すぐに体外受精を。」とアドバイスされた。

結婚後、6年間妊娠せず、仕事を続けてきた。昨年36才を迎えた彼女は、年齢のこともあり、体外受精に踏み切った。

初めての病院は、市内の病院。検査から始まった。だが、体外受精は午前中診療しかなく、仕事も続けたかったので、都内の病院宛に紹介状を書いてもらった。

「現実的に、仕事しながら不妊治療をやるって決めると、遅い時間までやっているところがいいし、都内に勤務しているから、そこから30分以内に行けないと、結局行けないから。薬剤師さんから、不妊といえば、加藤(加藤レディスクリニック)杉山(杉山産婦人科)だよねって。」


体外受精の通院回数は?
鈴子さんは、採卵→移植するまでに、平均で7日通うという。
「1回目は生理後2~3日で、2・3回目は卵胞チェックと採卵日決定、4回目に採卵、そのあとは移植前、移植、移植後の結果を聞くので合計7回休むことになる。」

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↑※杉山産婦人科ホームページより


「採卵する日は朝からだし、休まないと無理。でも、採卵の前までは遅くまでやっているから、仕事の後に行ける。」

採卵後は受精となる。卵子に多数の精子を振りかけて受精させる「体外受精」か、1個の精子を直接卵子に注入する「顕微授精」をおこなう。鈴子さんは、「顕微授精」をしている。


つらかったこと 救急車で運ばれた
採卵をするときは、麻酔の方法を選ぶことができる。
「初めてのときは、静脈麻酔にした。眠ったままでやってもらえる。でも、麻酔かけちゃうと一日働けなくなっちゃうから。運転もできない。麻酔をかけずに、午後に働いている人もいるみたい。お金がかかるから局所麻酔に変えたら、やっぱり、ダメでした。」
原因は不明だが、採卵を初めて局所麻酔に変えた日、帰宅後、夕食を食べ嘔吐。それが夜中まで続き、救急車で病院に運ばれた。その少し前も、牛肉を食べると下しやすく、吐いていた。彼女いわく、職場の薬局の近くに小児科ができて、子どもも来店するので、そのせいかもしれないと。そのときばかりは、仕事を辞めることが頭をよぎったという。

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職場の理解
治療でどうしても休まなければならなくなったとき、上司や職場の理解はあるのか。
「女の店長だから言いやすいし、子どももいるし。隠さないで言ったほうがラク。」


嫌味など言われないのか。
「そこは、みんな大人だから。お子さんが急に具合悪くなったっていうときもあるから。お互い様なのかなって。『早く帰ってください』ってそのときは言ってたし。こっちも、優先したいことができたから。」

費用はワンサイクルで約70万
「静脈麻酔でも1回5万円。採卵と移植とホルモン剤もまぜて診療も含めて70万。3回目からは5万円引きになる。200万円まで医療控除が出ることを知って、3月に申請したんだけど、まだ返ってこない。」


仕事のやりがい
「仕事内容は別に好きじゃない。達成感かも。処方箋の書類とか全部片づけたり。すっごい混んでいてお客さんが多い時に、うまくさばけたときとか。働いてると、『ありがとね』って言われることって絶対多い。大事だと思う。そういうのなくなってずっと家にいるよりはいいと思う。」


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これからは お金も見つつ 気楽に 病まないように
「いざとなったら、職場やめてもいいや、不妊治療やめてもいいやって思ったりとか。病みそうになったら気楽にしてよーって。」
不妊治療を続けていると、やはりメンタル面がいちばんつらいと言う。
「病みそうになったら、旦那さんに『ちょっとストレスたまってる』って言ったりして。してほしいこととか、イベント考えて、気晴らし考えてとか。初めての採卵の日も仕事休んでくれたし。そのあとの手術(子宮内膜ポリープ)のときも、ずっと付き添ってくれた。(旦那さんの)残りの有給が1日しか無いの。」

新型コロナウイルス感染拡大の中、マスクをしないまま咳止めや発熱で市販の薬を求めに来た客もいたとか。不妊治療のクリニックも、時間の短縮で通いにくくなっていたが、6月からは、診療時間が平常通りに戻る予定だそうだ。

「自分は子ども、そんなに欲しいのかなって。でも、今やらなきゃ後悔すると思うからやらなきゃと思うけど。」


高額な体外受精。お金とも相談しつつ、今後もできるだけ「気楽に」治療を続けていくそう。


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