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初めての旅①~久慈・八戸弾丸ツアー~

今でこそ、会えば「次はどこへ行こうか」が話のテーマになるT先生と私だが、私たちが初めて旅らしい旅に出かけたのは2017年の夏のことで、そう古い話でもない。記憶の断片を拾いながら、最初の旅を振り返ってみたい。

2017年7月のある休日。茹だるような暑さを避けて、私たちはいつものようにドトールでアイスティーを飲みながら、たわいもない会話を交わしていた。その時だった。きっかけはよく覚えていないが、私が「この時期になると三陸にホタテとウニを食べに行きたくなるんですよね。岩手の久慈のあたり」と何気なく呟いたところ、T先生が「私は八戸に行きたい」と言い、「岩手と八戸なら近い。ぐるっと回れるんじゃないか」ということで、滑り台で背中を押された子どものようなスムーズさで驚くほどするすると話はまとまった。
これは私の持論だが、人生において「そうなるべきこと」というものがあるとすれば、それは荒波に抗って掴み取るものではなく、こんな風に、当人もそうとは気付かないほどあっさりと叶うものだと思う。人生、時には流されてみるのも悪くない。

さて、その流れに任せて、軽い気持ちで岩手までの生き方を調べてみると、新幹線を使えば東京駅から盛岡駅までは2時間ちょっとで着くが、久慈に行くにはそこからさらに時間がかかることが分かった。交通費もばかにならない。
しかしgoogle先生はこういう時私たちを見放さない。東京から久慈へ行く方法を調べていると、東京駅から久慈駅に向かう「きずな号」という夜行バスが定期的に出ていることを教えてくれたのだ。
バスが東京駅を出るのは22:45。久慈駅には翌朝の9:15に着くので、バスでの移動時間は10時間半となる。10時間といえば、飛行機なら日本からハワイに着いてしまう時間だが、料金は1万円弱と新幹線に比べてかなり格安だ。しかも、乗り換えも無しで寝ている間に久慈に着いてくれるなんて素晴らしい!ということで、夜行バスで行くことを決めた。
日程はいつにするか、ここがまた難関だった。T先生と私の休みを取れる日がなかなか噛み合わない。ようやくここならと丸を付けたのが、8月19日(土)だった。

19日の朝にきずな号で久慈に着き、そこから北上して八戸に向かい、帰りは青森から帰ってくる、というプランは決まった。
せっかく10時間以上かけて旅をするのだから、どこかで1泊したい。私はごく自然にそう考えたが、タイミングが良くなかった。8月と言えば、世の中は夏休み真っ盛り。もともと宿泊施設が少ないエリアである上に、なにせ探し始めたのが7月末では、値段と施設のバランスの良さそうなところはことごとく埋まっている。
「どうしましょう?」とT先生に相談すると、「でも、考えてみたら泊まるほどの見どころはそんなにないと思うから、そのまま帰ってくるのもありだと思うよ」といつもに増してクールな回答が返ってきた。「な、なるほど」、そもそも夜行バスでの旅行なんてほとんど経験のなかった私は、特に深く考えもせず、帰りの夜行バスを探し、八戸駅から東京駅まで行くバスを予約した。確か7000円くらいだったと思う。「こんなに安くていいのだろうか」と思った記憶が残っている。


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