ことばで動きを導く

身体を触られることが苦手だということを、長い間自覚できていなかった。はっきり自覚したのはカイロプラクティックの治療を受けていた時だった。背骨の上を手で直接触られると、全身に鳥肌が立つのである。施術上必要だから触っているので、危険がないことは頭ではわかっていたが、この反応は自分でもどうすることもできなかった。
ヨガの指導で、先生が生徒の身体に手を添えるなどしてアシストをする場面がある。習い始めてすぐの頃、(それがわたしの怪我を防ぐために、ほんの軽くであったとしても)手足を引っ張ったりされていたら、教室に通うのをやめていたかもしれない。
わたしがヨガの教室に通おうと決めたのが2020年3月で、ちょうど新型コロナが猛威をふるっているた時期だった。スタジオも一時休業になったり、オンラインでのクラスに切り替わったりしていた。感染予防のため生徒さんの身体には触れない。(理学療法士でもある先生が、クライアントの身体に触れなかったというのは、どれほどもどかしいことだったろうかと思う。)そこで、スタジオでは「ことばによるナビゲーション」「ことばによるアジャストメント」をものすごく研究して実践されていた。ヨガの動き、身体の使い方をことばで導いてゆくのである。それが偶然、触られるのが苦手なわたしにとっては不安なく、とてもありがたかったことを覚えている。
今でもわたしはヨガをする時、先生の動きを目で見てというよりは、ことばで導く声を耳で聴きながら動いている部分が多い。そしてマットの上で動くことに少しずつなじんできたし、先生との間に信頼関係が育ってきているので、手を添えて手足の位置を直してもらったりしても身体がこわばったり鳥肌が立ったりもしないですんでいる。

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