マガジンのカバー画像

梅すだれ

102
恋も仕事も頑張る江戸女子、お千代の物語!ですが現在、猿彦や松之助など天草の隠れキリシタンのストーリーから、雑賀の国の物語が展開中。
運営しているクリエイター

#切支丹

23-3 梅すだれ 肥後の国

庄衛門を見るとお菊はいつものように嬉しそうに「上がりなされ」と家に上げた。庄衛門の大好物の湯葉を皿に盛って「食べなされ」と置いたが、この日の庄衛門は手を付けない。いつもなら話をする前、お菊の顔を見るよりも前に食べ始めるというのに。「腹でも壊しなすったと?」と顔色の悪い庄衛門を心配するお菊に、庄衛門は探るように尋ねた。

¥100

21-2 梅すだれ 肥後の国

日が昇りしばらくすると直忠がふんどし一丁の爺やを連れて来た。死体の処理をさせるために川で行水をしていた爺やに声をかけたんだそうだ。この寒いのによくも川の中にいたもんだと言われた爺やは雪解け水で身を清めると一年間元気に過ごせるのだと濡れた体で寒がりもせずに笑った。

¥100

21-1 梅すだれ 肥後の国

話し終わった与兵衛は空か海かはたまた原城を見通すように前を向いている。直忠は胡坐をかかずに右膝を立てた体勢でいつもの木の下に座った。右手は腰にさした刀の鍔を触っている。与兵衛が鬼に化けて襲い掛かってきても切れるようにだ。

¥100

20-5 梅すだれ 肥後の国

海に面した高台で木に縛りつけられた与兵衛は、幾日も海風に吹かれて過ごした。  隣の木の下に座り込んだ役人に、 「口を割らぬか。死んでしまうと。話せば解いてやると言うとっと。」 と何度言われようと、与兵衛は原城のことを話さなかった。  全部で何人いるのか?  どこに誰がいるのか?  益田四郎はどこにいるのか?

¥100

20-4 梅すだれ 肥後の国

朝日が顔を出し、お柿と太郎を飲みこんだ暗闇を消し去った。海が太陽をを反射して輝き始めたと言うのに、そこに不釣り合いにも横たわる与兵衛がいた。 (いたずら好きのイルカがまた死体を運んで来たと!)

¥100

20-3 梅すだれ 肥後の国

夜皆が寝静まると与兵衛たちは海へ潜った。有明海を二里半(10km)泳げば天草に着く。皆の食料の為にと女たちが海藻を採った時、妻のお柿は誰よりもたくさん採った。泳ぎが得意なのだ。そんなお柿なら十分泳いで渡れる距離だから安心して三人で海を渡り始めた。

¥100

19-2 梅すだれ 肥後の国

六郎太の息子、六一郎は二年前に天草へ来た。移住するにあたり切支丹の娘、クネと一緒になり、昨年息子が生まれたばかりだ。

¥100

19-1 梅すだれ 肥後の国

村は五、六家族を一組にして七つの組に分けられていて、各組には作之助が選んだ組頭が一人ずついる。土着の天草の民や九州地方からの移住者が多い四つの組をまとめるのは大頭の太郎兵衛で、それ以外の三つの組をまとめるのがこれまた大頭の馬四郎になっている。

¥100

18-6 梅すだれ 肥後の国

深くイエス・キリストに心酔する松之助であったが、懸念もあった。あの集まりに一緒に行った五人のうち二人は同じ村の者だったのだ。それに加えて村は違うが埋め立て作業で見たことのある者が一人いた。

¥100