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梅すだれ

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恋も仕事も頑張る江戸女子、お千代の物語!ですが現在、猿彦や松之助など天草の隠れキリシタンのストーリーから、雑賀の国の物語が展開中。
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2024年1月の記事一覧

29-2 梅すだれ 雑賀-旅立ち/ 木花薫

マサにお桐も一緒にと言われたお滝であったが、お桐に九州の話をすることはためらわれた。雑賀の人間だと言ってもいいほどにお桐は雑賀に溶け込んでいる。そんなお桐が聞いたこともない西の果ての九州へ行きたいと思うだろうか。お桐に言い出せないまま数日が過ぎた時、三日後に出る船で九州へ行けることになったとマサから告げられた。

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29-1 梅すだれ 雑賀 旅立ち

時は戦国。タカベの絶賛する「こんないいところはない」という雑賀にも激震の走ることが起こった。室町幕府の将軍、足利義昭が織田信長を見限って挙兵したのだ。根来の鉄砲隊は義昭の部隊であったから、当然反信長派へ転向、雑賀は混じり気なく信長の敵となった。

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28-9 梅すだれ 雑賀 お滝の恋

(三日に一度では物足りない。毎日マサに会いたい)

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28-8 梅すだれ 雑賀 お滝の恋

お滝が家へ戻るとお孝が遊びに来ていた。 「お孝ちゃん、久しぶり!」

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28-7 梅すだれ 雑賀 お滝の恋

待ちわびるお滝の前に、マサはいつにも増して顔を緩ませて現れた。 「おタキちゃん、会いたかったなあ」 お滝が言葉を返す間もなく、マサはお滝を抱きしめた。 マサの焼けた肌からは昔懐かしい父ちゃんの匂い、海の香りがする。お滝は浦賀にいた頃を思い出して、ここが私のいる場所なのだと雑賀に来て以来初めての安心感を感じた。

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28-6 梅すだれ 雑賀 お滝の恋

ざわつく心のまま過ごした二日間が過ぎ、マサに会える朝が来た。しかしお滝のはやる心とは裏腹に、嵐が海を荒らし雑賀の村に激しい雨と風を叩きつけた。誰も外には出られず、ただ家の中で嵐が通り過ぎるのを待つばかり。その家も吹き飛んでしまうのでは心配するほどの風が低いうなり声をあげながら吹き荒れている。

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28-5 梅すだれ 雑賀 お滝の恋

マサの姿が見えなくなるとお滝は笠を拾ったが、被ることはなかった。マサの大きな手に揉まれた胸には痛みが残っている。その胸を隠すように笠を抱いた。今さっきマサにされたことを思い出すと腹の底に火がついたように体の奥が熱くなる。なめられたうなじの感触が火を燃え上がらせて体全体を焦がしそうで恐怖さえも感じる。炎を吹き消すように足早に家へ戻った。

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