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お桐が十五歳になる正月、タカベはご機嫌だった。正月用にお桐が作った煮しめを食べながら、目の前の娘二人を眺めて(大人になったなあ)と感慨にふけった。
山のふもとの村でありながらタカベの兄カブトは海に憧れた。子どもの頃から村のみんながしている山を中心にした農作業の手伝いを嫌がり、浦賀の港へ下りていって荷物の積み下ろしを手伝ったり船の修繕を手伝ったりしていた。