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梅すだれ

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恋も仕事も頑張る江戸女子、お千代の物語!ですが現在、猿彦や松之助など天草の隠れキリシタンのストーリーから、雑賀の国の物語が展開中。
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2022年12月の記事一覧

22 梅すだれ 肥後の国

お菊の村登立は北から海が入り込んでいて湿地が多くそれほど作物のとれる土地ではない。お菊が十二歳で奉公へ出ていたのは食い扶持を減らすためだった。それなのに子どもを連れて帰ってきたのだから実家でのお菊は肩身が狭かった。子どもを産んだばかりの姉に「坊ちゃんは育ててやるからお前は奉公へ行け」と言われてもお菊は首を縦には振らず「坊ちゃんはおいが育てると」と息を吹き返した庄衛門を家宝と言わんばかりに大切に育てた。

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21-5 梅すだれ 肥後の国

「きれいに拭いてから埋めてやらんと」 と言う婆ちゃんに、 「坊ちゃんを埋めることなんてできんと」 とお菊は抱いたまま坊ちゃんを放そうとしない。

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21-4 梅すだれ 肥後の国

「ぼっちゃん!ぼっちゃん!」と何度呼び掛けても目を開けることもなく息もしていない。しかしその夜は屋敷に残っていた布団の中で坊っちゃんを抱いて寝た。もう二人の坊ちゃんと使用人が何人もいて賑やかだったお屋敷では夜だろうと誰かしらの気配を感じるのが常であった。なのに音ひとつしない。坊っちゃんと二人冥土の入り口に取り残されたようで淋しさが体の奥から湧き上がってくる。お菊は布団を頭からかぶると「奥さまぁ」とすすり泣いた。

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