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小さな一人用の家に着いた爺やは男を囲炉裏の前で下ろした。薪をくべて火を起こすと鍋に水を入れて炎の上に掲げた。 「女子でなくて悪いが」
日が昇りしばらくすると直忠がふんどし一丁の爺やを連れて来た。死体の処理をさせるために川で行水をしていた爺やに声をかけたんだそうだ。この寒いのによくも川の中にいたもんだと言われた爺やは雪解け水で身を清めると一年間元気に過ごせるのだと濡れた体で寒がりもせずに笑った。
話し終わった与兵衛は空か海かはたまた原城を見通すように前を向いている。直忠は胡坐をかかずに右膝を立てた体勢でいつもの木の下に座った。右手は腰にさした刀の鍔を触っている。与兵衛が鬼に化けて襲い掛かってきても切れるようにだ。