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フキへの怒りで意気投合したのか、はたまた刺し子をするお千代を紗代と錯覚したのか、
一向に立ち直る気配のない駄目幹助とは裏腹に、お千代は精神的に急成長を遂げていった。お守にとどまらず、クリの着物の刺し子も買って出たのだ。まだまだ針を刺すことに慣れないお千代だったが、赤ん坊の刺し子の定番模様である、麻の葉の模様に挑戦した。すくすく育つ麻に子どもの成長をかけて、どの家でも赤ん坊には麻の葉模様の産着を着せるのだ。
悲しみを乗り越えようと動き出した村で、お千代もじっとなんてしていられなかった。
村を襲った感染病。それは五月に始まり年の暮れまで続いた。生き残ったのは半分ほど。八十三人いたのが四十一人にまで減ってしまった。
お千代の住む村、大泉は人口が百人にも満たない小さな村だ。
徳川三代将軍家光公御時のこと。甲斐の国の山間にある小さな村にお千代は生まれた。
恋も仕事も頑張る女子の物語「梅すだれ」が、もうすぐ始まるよ! お楽しみに!!! 木花薫