マガジンのカバー画像

結婚したい女たち/木花薫

55
妥協なんてしないアラサー女三人の物語。立野香(たつのかおり)、一花(いちか)、お琴(こと)は生まれも育ちも違うが婚活で親友になる。お互いを羨み切磋琢磨するが運命の歯車が回り始め……
運営しているクリエイター

#子育て

婚活アラサー女子が運命と格闘する小説「結婚したい女たち」

 noteで連載をして5か月で書き上げた「結婚したい女たち」。アラサー女子三人が婚活で出会い親友になります。しかしお互いをうらやんでばかり。そんな中容姿でひけを取るお琴が大胆な行動に出ます。モデル体型の一花とアイドル顔負けのかわいい香に追いつこうとお洒落にいそしんでいたけれど、到底かなわないと観念したお琴が選択したことは・・。  壊れる女の友情は形を変えて作り直されていくのでしょうか?!見た目も生まれ育ちも違う女子たちが切磋琢磨して結婚というゴールへ向かっていきます。しかし

38 結婚したい女たち 告白

木下秀雄四十三歳は大きく息を吸った。ゆっくり吐くと一枚の紙を手に部屋を出てキッチンへ行った。夕食の片づけをしている一花に「話がある」と声をかけたのだけど「見てわかるでしょ今忙しいの。あとにしてよ」と素気無く言い返された。昔の一花なら子どもの頃飼っていた犬のように「なに?」と駆け寄ってきたのに。結婚してすっかり変わってしまった一花。 四年前に新入社員として入社して来た時は名前の如く花が咲いているように美しかった。ラッキーなことに部署が同じで話をする機会はいくらでもあった。年齢

有料
100

35 結婚したい女たち 告白

「一花ちゃん」 と実紀の優しい声が響いた。 殺人未遂という恐ろしい罪を語ったというのに一花を見る実紀の眼差しは温かいままだ。どんな自分でも受け入れてもらえると思えるほどに実紀から息子を落としたことを非難する気配は感じられない。そんな見守るような実紀の存在に安心した一花は、 (この人になら何でも言える) と自分を止められなくなった。いや止めたくなかった。すべてを吐き出したくなって更なる罪を告白した。

有料
100

34 結婚したい女たち 秘密

五年前の九月。夏休みが終わって新学期が始まりまだ暑い日の続く頃だった。 暑さがピークに達した午後三時。一花はダイニングで窓の外を眺めながら座っている。一歳十か月の息子英雄は寝室で昼寝中だ。一緒に昼寝をしていた時もあったけれど最近は息子のいない自分だけの時間が欲しくてこうやって息抜きの一時を過ごすようにしている。 真っ青な空に浮かぶ大きな白い雲は疲れた一花の心に一枚の絵として映った。現実感がなかったのだ。心地よさそうに浮かぶ雲を見ていたらこのまま青空へ飛び込みたくなった。

有料
100

20 結婚したい女たち 一花の家

景色をひとしきり楽しんだ香とお琴がダイニングに戻るとやっぱり一花の元気がない。 「一花どした?」 とお琴が心配して声をかけた。それで気づいた香も、 「顔色悪いよ」 と一花をみつめた。 「最近いそがしくてあんまり寝てなくて」 言葉少なな一花の目の先のリビングにはたくさんの本が乱雑に置いてあった。開かれたページには人体図のイラストが載っている。ヨガのポーズをより深く理解するために一花は解剖学の本で骨格筋の勉強をしているのだ。

有料
100