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【 瞑想の書 】実践のために

「瞑想の書」noteについて

この『瞑想の書』は入門・初心者向けの内容です。瞑想を実践する上での基本的なことは網羅されています。

瞑想の注意点や「基本的な瞑想」「慈悲の瞑想(トンレン)」と「明晰夢の瞑想(明晰夢の見方)」が含まれています。
番外編として「内丹(仙道、小周天)の瞑想」が含まれます。

瞑想の書』についての説明 



Ⅰ. 瞑想ブーム


今現在、瞑想がトレンドやブームであると言われています。
特に米国では、その勢いがすさまじく商業的にも注目され一大産業になっているようです。
市場規模も年々拡大の「成長産業」のようです。

宗教や精神修養の伝統の中で、心の平安や「悟り」を得るために行われてきた瞑想が商業ベースで捉えられるのは違和感がありますが、今のところは、この大きな流れが止む気配が全くありません。


大きな視点で見た場合、この特に米国の瞑想ブームの背景の一つには、科学、教育、情報リテラシー・・・などの進歩発達による知性水準の向上によって、またキリスト教(宗教)自体にも闇があり、キリスト教(宗教)への幻滅が広がっているということもあると私は思ってます。
宗教の没落は米国に限ったことではないし、今に始まったことでもありませんが。

そうは言っても物質的な事柄以外に心の支えとなるようなもの、心に平安を与えるものを欲する人々も多くいるように思われ、そういった人達はキリスト教(宗教)に代わるものを求めているのではないかと思います。

その大きな受け皿が、仏教やヨガなどの東洋の思想・宗教やスピリチュアルになっているようです。

しかしやはり知性、教育、教養の程度が一定水準以上の人達にはスピリチュアルのお伽噺は受け入れられにくいです。
東洋の思想・宗教に関しても、仏教はかなり前から米国で(亡命したチベット仏教僧の影響もあり欧米で)流行しているようですが、なじめない人達も多いと思います。

そういった状況下で、現代の科学文明において瞑想が宗教色をできるだけ排し科学の援護射撃を受けて人々に受容され、市民権を得て、商業的にも大きな市場を形成するようになったのだと思います。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

瞑想の効果・効能は盛んに喧伝されていますが、個々の人々が瞑想に惹かれるのは、例えば仕事のパフォーマンスの向上や集中力、創造性の向上、それに健康に良く医療費の節約に役立つだろうといった、はっきりとした実利的な目的ばかりが理由ではないと思います。

本人も気づかない本能的な理由もしくは衝動に駆り立てられているようなこともあるのではないかと思います。

そういった、はっきりとした実利的な理由を持つ人もいるでしょうが、実際に瞑想すれば分かるのですが、現実的には少しばかし瞑想したからといって、知能指数の際だった向上はないですし、写真のような記憶力も得られません。
瞑想する時間を資格の勉強や仕事のスキル向上のために向けた方が、パフォーマンスも収入も上がるかもしれません。

それでもキリスト教の教会が人も金も集まらずに、あちこちで閉鎖されている一方で、ここまで瞑想が人々を惹きつけるのは、ヒトという生物としての基盤に根ざす何かが瞑想にあるからなのではないかと思います。

それは、大脳が発達し、高度な知性・情操を発揮するようになったヒトの精神性に関することではないでしょうか?

米国は、政治・経済・軍事・科学技術におけるスーパーパワーであり、地球上・人類史において物質文明の極を体現しているように思います。
しかし、そのような物質的な発展をむかえ、その利便性を享受しているハズの人々は、果たしてそれによって心の平安も得ているのか?

このような疑問が人々の間で漠然と、しかし現実的な影響力をもって存在し、それが今日の瞑想の隆盛を育む土壌となっているのでは、と個人的には感じています。
私は瞑想するのはヒトとして生物学的にも利点のある本能であると思っています
そして瞑想は発達した大脳を持つに到ったヒトの心の平安に関するものであり、クオリティ・オブ・ライフに資するものであると考えています。

関連記事:人類の進化と瞑想の起源~人類は瞑想すべき方向へと進化してきた

Ⅱ. 瞑想研究の歴史

瞑想や瞑想周辺のボディワークやリラクゼーション法が、健康に良いという主張は昔からありました。

日本では幕末、明治以降も仏教修行者に限らず、政治家、軍人、実業家、教育家、芸術・文芸家、思想家、社会活動家などの中に座禅をする人が多数いました。

「元始、女性は太陽であった」で有名な女性解放運動家の平塚らいてうも学生の頃に座禅を始めました。
座禅によって心身の調子が改善し、心も軽くなり精力にも満たされ一日中動き回っても疲れなかった、というような内容のことを書き残しています。
座禅は平塚らいてうの思想にも影響を与えたのではとも言われています。

欧米では今から100年以上前から、東洋の宗教・思想に関心を持つ人が増えていき、それにともなってヨガの体操、呼吸法、瞑想、禅なども紹介され、少しずつ知られ実践されるようになりました。
そしてちらほら、ヨガや瞑想が心身に良い効果があるという主張が、著名人問わずなされるようになりました。

有名なヴァイオリニストで指揮者でもあったユーディ・メニューインは、心身の不調をヨガのリラックス法で乗り越えたと言われています。
感動したメニューインは、ヨガの師であるアイアンガーの著書の序文を書くことまでしました。
ちなみに、このメニューインのヨガの師アイアンガーは、アイアンガーヨガの創始者です。

1950年代くらいから熟練したヨガの修行者や、禅の修行者を対象とした生理学的研究や脳波研究の報告が見られるようになりました。

同じ時期に中国では医療の分野で、気功の健康効果が熱心に研究されるようになり、文化大革命など困難な時期を経て、整理され発展していき、80年以降に日本でも一時期気功ブームがありました。
またインド発祥のTM瞑想(超越瞑想)という瞑想法が、1950年くらいから欧米にも紹介され、70年以降にTM瞑想の健康効果が研究され、宣伝されるようになりました。

面白いのだと1980年代にリラクゼーション反応の研究や心身医学で有名なハーバート・ベンソン博士(ハーバード・メディカル・スクール)らによるチベット密教の「ツンモ」の修行者の調査があります。

「ツンモ」とは特殊な瞑想と呼吸法で体温を上昇させ、寒い中でも薄着で瞑想ができるとするもので、ベンソン博士らは実際に修行者の体温上昇が確認できたそうです。
(このツンモに関しては、数年前にも再び欧米の研究者らによって調査され、やはり体温上昇が確認されました。
ちなみに、これと似たようなことができる人にヴィム・ホフというオランダ人がいます。以前、明治ヨーグルトR-1のCMで雪の積もった中パンツ一枚でヨガをやっていた男性です。The Icemanと呼ばれているそうです。ヴィム・ホフ・メソッドというのを提唱しています。
ツンモにしろヴィム・ホフの方法にしろ、こういったことには人体の非ふるえ熱産生のメカニズムが関わっているのではないでしょうか。)

しかし、まだしばらくはビジネスの分野だけでなく、科学や医療の分野においても瞑想に対する抵抗感、偏見は強かったです。

2000年位を境に、瞑想への抵抗感も少しずつ和らいでいったように思えます。
脳・神経科学や脳活動を観察するための技術の進歩によって、より科学的に瞑想を研究することができるようになりました。

瞑想の科学的研究者の中には、自らも熱心に瞑想する科学者もいます。
脳や幸福感、利他心との関係で瞑想のことを調べると、ほぼ必ず登場する有名な人物にリチャード・デビッドソン(Richard Davidson)とマチウ・リカール(Matthieu Ricard)がいます。

リチャード・デビッドソンはウィスコンシン大学の神経科学者で、1970年代ハーバード大学の博士課程の時に関心を持ち、それ以来瞑想の実践者のようです。
マチウ・リカールはフランスのパスツール研究所で分子生物学の博士号を取得した生物学者で、デビッドソンとの共同研究もあります。ダライ・ラマの通訳をしていて、自らもチベット仏教の僧侶で瞑想の熱心な実践者です。

2003年にはマサチューセッツ工科大学(MIT)で開かれた会議にダライ・ラマ14世が招待
この会議では瞑想の科学的研究にも触れられ、デビッドソンとリカールの研究も発表されました。
2005年にはダライ・ラマ14世が北米神経科学会の年次総会で講演しました。
この時も瞑想の科学的研究が取り上げられました。

マインドフルネスの医療分野への活用も1970年代にジョン・カバット・ジンによって提唱されて以来、研究、実践、発展がなされていました。
米国のいわゆる「セレブ」の間でもヨガや瞑想が流行しました。

今日の「瞑想ブーム」の形成には、最先端をいく米国のIT企業などが、瞑想を研修などに採用したのも大きいと思います。

Googleの優秀なエンジニアだったチャディー・メン・タンはマインドフルネスをベースとした研修プログラムSIY(サーチ・インサイド・ユアセルフ)を提唱。この研修プログラムはGoogle社内で評判になり、ビジネスの世界で瞑想が注目される要因にもなりました。

チャディー・メン・タンの著書では「サーチ・インサイド・ユアセルフ」(英治出版)や「たった一呼吸から幸せになるマインドフルネス JOY ON DEMAND」(NHK出版)といった邦訳があります。


今や市民権を得た瞑想ですが「他のリラクゼーションと比べて、瞑想は何か特殊なのか?心身に対する効果は他のリラクゼーションと差異がないのでは?」といった疑問などが指摘されています。
また瞑想の危険性、副作用といったことも指摘されています。

このnoteで、具体的な瞑想のやり方を含め、瞑想の入門・初心者向けに役立つ情報を述べていこうと思います。

第1章 瞑想のリスク


時代の先端を行くIT企業においても導入され、様々なメリットが説かれている瞑想ですが、一方で危険性や副作用といったリスクはないのでしょうか?

実は瞑想のリスクは昔から指摘されていたのです。

なぜリスクが生じるのでしょうか?
簡単に言うと瞑想の実践によって、特に熟練者の場合においては明確に、心身に、人体の脳・神経生理システムに日常生活を送っている時とは違った特殊な状態が生じるからです。
(このような特殊な状態が生じるからこそ、瞑想に効果・効能があるのです。)

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