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対処から本質へ~生きがい開花の介護を提供する「木の恵」山下優奈代表インタビュー(前編)

「ご利用者さまへ『本質のケア』をご提供するためには、
 まずはスタッフ自身が心身ともに豊かで幸せであることが大切」

そう語るのは、
デイサービス施設「木の恵(このえ)」を運営する山下優奈(ゆうな)さん。

今回、公務員保育士から婚活事業で起業、そして介護施設の代表という
異色の経歴をもつ山下さんへ、

介護施設を運営することとなったきっかけや
今後目指していきたいことについてインタビューをしてきました。


婚活事業から介護事業の現場へ


━━デイサービス施設である「木の恵(このえ)」は、
  もともとは山下さんのお母さんが作った施設だと伺いました。


そうなんです。

「木の恵」はもともと母が立ち上げた施設なんですよ。


母から木の恵を引き継ぐ前…

私は婚活のマッチング、個別指導サービスで起業をしてました!

 (婚活事業のセミナーを開催した時の写真です!)


━━婚活サービスの起業からリアルな介護の場に方向転換するのは珍しいですね。
  もう少し詳しく山下さんの経歴を教えていただけますか?


私はもともと、大学卒業後に

公務員保育士として都内で勤めていたんです。


保育園の保護者さんや地域の方からは、

やっぱり、子育ての悩みを聴くことが多くて。


大学で学んだことですとか、

先輩から教わったことをアドバイスをしていくうちに、


次第に、その場だけの対処法というよりも

親子関係の根本的な解決ができないかなって

考えるようになったんです。


そこで私は、心理学や脳科学、東洋医学など

色んなことを学んで、研究していきました。


少しでも目の前の保護者さんの

お役に立てたらいいなー!という気持ちで、


親子関係に関係しそうな学問を、

手当たり次第に学んでいったんです。


そして、学んだことをもとに、

試行錯誤しながら保護者さんと関わっていったところ、


例えば、元々は

「子どもが言うことをきかない」

って相談してくれた保護者さんが、


それって子どもの問題じゃなくて

自分自身の問題なんだって気付いてくれたりとか、


お子さんに対する向き合い方を

ガラッと変えてくれたんですね。


そして、あることに気付いたんです。


悩み相談をしてくれた

保護者さんが変わるだけじゃなくて、

そのお子さんの目もキラキラと輝きだしたんですよ!


保護者さんの悩みを

根本的に解決するお手伝いをしたことで、


お子さんが、親の目を伺うんじゃなくて、

自分のやりたいことを見つけて

キラキラと輝いていく変化を見て、


保育士として、仕事のやりがいを感じていました。


そして、もっとお役に立ちたい!と研究を重ね、

学んだことを体系立てていったんです。


その場だけの対処法では、一時的に問題は解決する…


でも、本質を見極めてそこにアプローチすることで、

保護者さんはもちろん、そのお子さんも輝いていくんだ…!


って、手探りで始めた研究が、

だんだん確信に変わっていきました。

そして、確信を深めるなかで考えるようになったのは、


「もっと多くの人に対して、

 本質で生きるためのお手伝いをするにはどうしたらいいの?」


ということ。


だって、普通は、何か問題が起きても、

その場限りの解決で

終わらせてしまうことが多いじゃないですか。


でもそれだと、

根本的な解決を先送りしているだけで、

後から同じような問題が

繰り返し起きちゃいますよね。


だから、ちょっと面倒だけど、何か問題が起きたら、

一時的にやり過ごすんじゃなくて、

根本的な原因を見つけ出して、そこから改善していく…


そういう「本質」が大事だし、

皆がそういう生き方をしていけたら、


自分も、周りの人も

もっと生きやすいんじゃないかなって思ったんです。


でも保育園では、保護者さん一人ひとりと

深く向き合えるけれど、


お役に立てる人数に

限りがあるじゃないですか。


それに、公務員のままでだと、

そういった活動にどうしても制限が生じてしまう…


そんなときに私が知ったのが「SNS起業」でした。


SNSを活用して、

自分の想いや理念、理想を発信していくんです。


「子育ての悩みや親子関係で悩んでいる人が、

 全国どこにいても、例え真夜中であっても、

 私のSNSを読むことで

 明日の活力にしてくれるかもしれない…!」


SNS起業という存在を知ったとき、私は

「これなら、たくさんの人を助けられる!」

って、目の前がパアッと明るくなりました!


私は思い切って公務員を辞め、心理カウンセラーとして独立。


保育士生活8年目の出来事です!


公務員を辞めて開始した婚活事業


━━山下さんは、もともと保育士さんで、しかも公務員だったんですね!
  起業してからはどんなお仕事をしていたんですか?


起業当初はSNSやブログに自分の思いを書きながら、

色んな方の心理カウンセリングを行っていました。


保育士の経験を活かして、

子育てや夫婦関係のご相談をメインに受けていたんです。


ですが、次第に婚活のご相談が増えていって。


ご要望にお応えする形で、

女性の婚活事業にシフトしていったんです。


具体的には、自分磨きから、出会いまでのサポート。


セミナーや個別指導などもしていました。


(婚活セミナーを開催しているときの写真です!)


そして、婚活事業を行いながら、

木の恵を立ち上げていた母の相談を受けていたんです。


━━SNS起業、そして、女性の婚活事業とは、
  現在の介護の仕事からは想像もつきません!


それが、意外と

今の仕事に活かされている面も多いんですよ!


例えば、世の中には

恋愛テクニックが溢れているじゃないですか。


出会いの場も、

マッチングアプリなど様々なものがありますよね。


たくさんの情報に惑わされて、

自分が何をしたいのか分からなくなっちゃうんです。


色んな男性とデートしても、

自分の理想が分からないからご縁を深めることができない…


そんな方が、

私の婚活セミナーに来てくれたんです。


私の婚活セミナーでは、

表面的な恋愛テクニックをお伝えするんじゃなくて、


その人がご縁を深められない根本的な原因にアプローチして、

寄り添いながら一緒に改善していきました。


その結果、

自分に自信がなかった人が

自信を取り戻して起業までできたり、

離婚寸前の夫婦がお互いの関係を修復したり。


恋愛や婚活はもとより、

相談者さまの

本質的な人生の改善につなげていくことができたんですよ。


このことは、今振り返ってみると、

現在の木の恵のコンセプトである

「生きがいが開花する介護」

にも繋がっているなあって。



木の恵では、

ご利用者さま一人ひとりとしっかり向き合って

本質からの課題を一緒に解決していくことが

大切だと考えているんです。


そうすることで、

ご利用者さまがより主体的になって、

生きがいが開花するんじゃないかなって。


婚活事業…というか、保育士の頃から行っていた

「本質を見つけること」

が、介護にも活かされてると思います!



婚活事業の苦労で学んだ「一人ひとりと関わること」


━━なるほど。
  婚活事業のお仕事は順調だったように聞こえましたが、
  壁や障害のようなものはなかったんですか?

お客さまは

「早く結婚したい!」

という理由で申し込むので、


やっぱり、

結果を早く求められることが多かったですね…!


例えば、婚活セミナーに参加するお客さまは、

「まずはテクニックが知りたい!」

となるんです。

(テクニックじゃないよ!と話している時の私です)



でも、そういう一時的な対処法では、問題は解決しないんです。


だって、結婚って、したら終わりではなくて、

ずっと続くものじゃないですか。


人生もずっと続いていきますよね。


だから、テクニックではなく、

その方その方の根本的な原因に向き合うことが必要。


早く結婚したいお客さまと、

本質的な改善をしていきたい私との間に、


お客さまから婚活のご相談をいただく最初の時点では

どうしても温度差が出てしまうんです。


婚活事業を始めた当初は、

そのギャップを埋めることに悩みました。



━━その壁はどうやって突破したんですか?


お客さまが、自分の根本的な原因に向き合う大切さを知って、

本質に辿り着くことができるように、

一人ひとりと、とことん関わっていきました!


ありきたりの話になっちゃうんですけど、

やっぱり大切ですよね…!


婚活サポートを受けても成果が出ない方には、

最後まで関わっていきました。


ときには「厳しさも愛」だと思って、

ご本人にとって

厳しい言葉をかけることもありました。


お客さまとぶつかることもあったけど、

むしろ関係性を深めることになったかなと思ってます。


「とことん向き合ってくれたお陰で、愛の価値観が変わった」

と、嬉しい言葉をいただくこともあり、


そんなときは、厳しい言葉をお伝えしたけれど、

お役に立てて良かったと暖かい気持ちになりました。


母の急逝により介護の現場へ


━━お話から、「本質を届けたい」という気持ちが一貫して伝わってきます。
  そんな山下さんが「木の恵」を引き継いだきっかけは何だったのでしょうか?


私が婚活事業をしていた頃から、

母が木の恵を立ち上げていたんです。


私の前職の児童福祉と「木の恵」の老人福祉が

同じ福祉で分野が近いこともあったので、


スタッフとの関わり方や人材の採用など

経営のお手伝いをしていました。


はじめは、自分の婚活事業の会社もやりながらでしたが


そのなか、母が急逝し、

急遽、私が木の恵を本格的に引き継ぐことになったんです。


今までは経営のサポートしかしていませんでしたが、

現場にも入るようになり、


利用者様やスタッフとのやり取りをみていく中で

「私が木の恵を守らなきゃ!」

という決意がだんだん固まっていくようになりました。


母からの施設の引継ぎはほとんどなかったものの、


公務員保育士の経験や、

母が生前の頃から仕事を手伝っていたこともあり、


思ったよりもスムーズに

木の恵を引き継ぐことができました。


特に、書類を作成するときは、

公務員の経験が役立ちました。


保育士の資格を取るだけじゃなく、


公務員採用試験にもチャレンジしたことが

あとになって役立つこととなり、


無駄なことは何ひとつなかったんだなって感じています。



実は木の恵を引き継いだ頃の私は、

婚活事業の関係で本の出版もしていたんです。

(当時は旧姓で活動していました…!)

 (私が出版した書籍になります!)

ですが、なぜか書店回りをするたびに

予期しないことに見舞われることが多くて…


トラブルに4回も遭ってしまいました。


そのとき、

私が当時からお世話になっている社長さんに

こんなアドバイスをいただいたんです。


トラブルが4回もあるということは、

婚活事業と介護事業の

二足の草鞋を履くんじゃなくて、


介護に方向転換したほうがいいっていう

証なのかもしれないねって。

その話を聞いたとき、

すごく腑に落ちました。


会社を2社経営させていただく中で、

「どちらも中途半端になっているかもしれない…」

「どちらかに絞った方がいいのかもしれない…」

という、悩みを抱えていました。

それを聞いた私は、

「母から受け継いだ木の恵に集中しよう!」

と決断できるようになりました。


振り返るとその時から心の中では、

「婚活事業を卒業して、木の恵で理念を体現していきたい」

という想いはあったんです。

でも私の中で決断出来ずにいましたが、

このトラブルをきっかけに決意が固まり、


婚活事業ではなく、

木の恵の経営に集中することにしました。


介護の場で必要なのは
「本質のケア」と「スタッフ自身が豊かであること」


━━公務員から婚活事業、そして介護の場とステージを変えたなかで、
  山下さんが「木の恵」の運営について考えていることはありますか?


一般的に介護は、

「何でもしてさしあげること」

というイメージが強いですよね。


ご利用者さまに対して、

介護スタッフが先回りして手取り足取りお世話をするような。



でも、それは、

ご利用者さまが「本来できることを行う」という機会を

奪っているのかもしれないなと思うんです。


手厚い介護は、一見親切なように見えて、

ご利用者さまの可能性を狭めているんじゃないかなって。


私が、公務員保育士や婚活事業をしてきて学んだのは、


一人ひとりの根本的な課題の解決に向けて

とことん関わっていくことと、


ご本人が本質の生き方をするためには

時には厳しいことを言ったり、

見守ったりすることも大切ということ。


ですので、木の恵でも、

ご利用者さまのご要望すべてにお応えするのではなく、

ときには見守ることも大事だと考えてます。


例えば、木の恵ではご利用者さま

一人ひとりの個性に合わせ

様々なレクレーションを行なっています。


一人ひとり、違うレクレーションを提供するのは、

人員も設備も多くかかるため、


一般的なデイサービスの介護施設では、

全員が同じレクレーションを行うところが

大半です。


しかし、

木の恵でのレクレーションは

ご利用者さまの主体性を引き出し、


ご利用者さま同士がお互いに個性を開花しあう

きっかけづくりとなるよう心がけています。


また、機能訓練についても、

「生活の中でできることが広がり、

 10年後もADL(日常生活動作)を保っていただくこと」

を目標に、一人ひとりに合わせた

継続しやすい運動を提案しています。


私たち木の恵が

「生きがい開花」

と呼んでいる介護ケアでは、

できないことを補う対症療法だけではなく、


ご利用者さまが

今までの人生で大切にしてきたことを尊重して、


そして、ご利用者さまが

主体的に未来を創造していくことを目指しています。


ご利用者さまにとって介護が必要なくなる、

というのが「本質のケア」だと

木の恵では考えているんです。


介護が必要なくなると、

「施設の売り上げが下がってしまうのでは…」

と、心配されることもあるのですが、


このような木の恵の考え方に共感してくれた

ご利用者さまの口コミや評判によって、

 

 とてもありがたいことに

ご利用者さまがどんどん増えていきました!


(レクレーションを実際に行っているところです!)


また、母の跡を継ぎ、

より主体的にスタッフに関わるなかで感じたのが、

「自己犠牲的に働くスタッフが多い」

ということ。


これは介護業界全体にいえることなのかもしれません。


ですが、

ご利用者さまへ「本質のケア」をご提供するためには、

まずはスタッフ自身が

心身ともに豊かで幸せであることが大切だと思うんですよね。


そのため、木の恵では

ご利用者さまだけではなくスタッフも元気になれるよう


化学調味料や添加物を極力無くした食事や、

私が自ら研究に関わった浄活水システムの設置、

人工的な電磁波のカットなど空間にこだわったり、


(木の恵のスタッフルームです!いるだけで回復する場所を目指しています!)
(極力、無添加の少ない安心な食材を使い、愛情込めて作らせていただいています!)


給与や手当、資格取得の支援などを充実させたりなど、

ワークライフバランスに配慮しています。


賞与が3回、正社員だけでなくパートさんにもあるのは

スタッフに好評なんですよ(笑)


介護の職場というと、どうしても

「きつい・汚い・危険」

というイメージがあるじゃないですか。


このイメージをなくしたいと考えています。


スタッフに食事や水、空間などの環境面や、

給与面でワークライフバランスをサポートして、

「働けば働くほどエネルギー、活力が湧いてくる!」


そんな環境づくりを行ってます。


木の恵を

ご利用者さまにとってもスタッフにとっても

良いものにどんどん変えていって、


私たちが、介護業界を変革する、

開拓者として、


「介護業界って、こんなにも素晴らしいんだよ!」

「誰かのために働くってこんなにも幸せなんだよ!」


と、伝えていき、

介護業界の印象を変えていきたいと思っています!


━━ありがとうございました。
  次回は、山下さんが「木の恵」を引き継いだ後のお話を伺わせてください。

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