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SFCコントローラーの謎

SFCのコントローラのボタン配置の話がツイッターで話題になっていて、自分もツイッターで連投したのですが、いくつか間違いがあり、あらためて整理したものをNoteでアップします。発端はこちらの記事で、その後にこちらのサイトをみて、いろいろと触発されました。

話のきっかけはPS5で〇と✕のボタンの意味が統一されたことです。日本では○が決定で✕がキャンセルでしたが、海外では反対でした。そしてPS5で海外仕様に統一されました。これで4つあるボタンの一番下が決定で、その右上がキャンセルになりました。

では、なぜ日本では○が決定で✕がキャンセルだったかというと、スーパーファミコンのコントローラーのボタン配置にならったというのが通説です。スーパーファミコンのコントローラーでは下段右がAボタン、下段左がBボタンになっています。ところが、プロトタイプでは親指の向きに沿ってA、Bボタンが並んでいます。上段左がAボタンで下段左がBボタンです。これが製品版では下段右がAボタンで下段左がBボタンになっています。

これについて任天堂の宮本さんが、2005年に立命館大学で行われたDICEシンポジウムで興味深い発言をしています。Gamewatchのレポートでは次のように報じられています。「宮本氏の認識の中ではゲームの基本は、あくまで十字キーとA、Bボタンであり、差別化を図るために、C、Dに相当するボタンをわざとX、Yとし、視覚的にもグループ分けしている。」

このレポートでは省略されていますが、この前にゲームボーイのボタン配置についても説明されています。実はこの時自分も会場にいて取材していました。取材記事はすでにサーバから消えていますが、HDDから文字おこしを引用してみます。

「初代のゲームボーイ。(中略)この時にボタンがA、Bという。呼び名は左下からB、Aなんですけど、少し斜め上に上がりました。このほうが親指の動きに対して自然になじむということで、少し上よりにボタンが動いたんですね。

これはこれがまた困った問題を生んでいきます。スーパーマリオはBダッシュというのを使ってましたので、こう押せない、こうして押さないといけないということで、手首が痛いというので、非常に困ったんですが、汎用的にはA、Bボタンは自然に押し分けられる方がいいということで、こういうデザインになりました」

「そしてこれがスーパーファミコンに発展していきます。スーパーファミコンではこのYのボタンをBとして使って、スーパーマリオはこういう風に押せるように作りました。ところがA、Bのボタンはこういう風に並んでいるのが自然なので、A、B、C、Dと言わずに、A、BとX、Yは別のグループであるという風に捉えまして、こういう括りを入れて2つのグループを別に使って下さいと。」

「だからこれはゲームが上手になってきた人は上を使っても良いけど、下手な人は下の2つで遊んで下さいという思いが、少し込められて作っています」 

文字だけで理解するのは大変だと思いますが、ご容赦ください。ポイントはこの「初心者は下の列、上級者は上の列も含めて遊ぶ」ようにボタンが配置され、ガイドもつけられたという点です。少なくとも講演ではそのように語られています。

ただし、この考えはローンチタイトルのスーパーマリオワールドでいきなり覆されます。スーファミのA、Bボタンでマリオを遊ぶのはゲームボーイ以上に難しいからです。そのためBでジャンプ、Yでダッシュという謎仕様になります。親指の動きとしては正しいのですが、コントローラーのガイドとは反しています。ハードとソフトの開発の連携が取れていません。 

これは推測ですが、「初心者は下の列、上級者は上の列も含めて遊ぶ」という考えから、土壇場でボタン配置のちゃぶ台返しがあったのではないでしょうか。また、ファミコンとスーファミのコントローラーのシリアル通信時のボタン情報の関係性からも、そのことが読み取れます。

余談ですがこの時期、AボタンとBボタンの役割規定が任天堂のゲームは微妙です。スーファミの「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」もAでアクション、Bで攻撃でした。「Aで決定、Bでキャンセル」という操作の約束はドラクエ=任天堂以外のゲームを起点に広まったので、任天堂としてはこだわりが薄かったのかもしれません。

もっともBでジャンプ、Yでダッシュという操作はパッと見てわかりにくいものがあります。スーパーマリオカートのBでアクセル、Yでブレーキも同様です。そのため、ニンテンドー64ではAボタンが右下、Bボタンが左上に配置されています。親指の向きに即した自然な配置です。Aボタンが一番下というのは、PSの海外仕様とも一致しています。

ただし、これがゲームキューブでは中央に大きくAボタン、その左下に小さくBボタンとなり、再びAが右、Bが左となります。余談ですが、3Dゲーム時代になって、AとBの同時押しという局面が減ってきたことが原因かもしれません。

話が行ったり来たりで恐縮ですが、このようにゲームコントローラーの歴史という視点で見ればスーファミはボタンが2つから4つになって、LRボタンがついて・・・とさまざまな挑戦と実験が行われた一方で、混乱がみられた時期だったように思われます。

個人的にはドラクエのUIデザインの変遷が興味深いですね。Aで決定、Bでキャンセルを創り出しながら、いろいろ細かく変わっていきます。ドラクエVではAボタンはコマンドメニューを開く機能が割り当てられていて、かわりにX=便利ボタンが生まれました。

ドラクエでA、〇ボタンが便利ボタンになったのはDQ9やDS、3DS以降になります。こんなふうにファミコン時代に比べてスーファミ時代は、まだまだ操作系について混乱の痕跡がみられます。さらなる研究や資料公開が待たれます。 

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ゲーム教育ジャーナリスト NPO法人国際ゲーム開発者協会日本 名誉理事・事務局長 ゲームライターコミュニティ代表 ゲーミファイ・ネットワーク運営 東京国際工科専門職大学講師 ヒューマンアカデミー秋葉原校非常勤講師 日本デジタルゲーム学会正会員