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何が「豊かさ」を決めるのか(078)

こんにちは、紺野うみです。

「豊かに生きる」とは、どんな生き様のことだと思いますか?

ごくごく単純に考えれば――、お金が十分にあること。

立派な地位や肩書きを、手に入れていること。

たくさんの人に認められ、好かれていること。

……そんなところでしょうか。

でも私は今、「本当の豊かさ」について、また少し違ったことを思い浮かべています。

「自分という人間を内から満たし、その人生を最大限に活かすこと」なのではないか、と。


心の水を分け与えること

自分に自信を持てずにいる人は、誰かのために尽くしたり自分の時間や力を捧げたりすることで、自分以外の者から頼りにされ、認められることを望みます。

――イメージしてみてください。

もし、心の中に水があるとしたら、その人は一生懸命に自分の中の水を別の誰かに分け与えることで、感謝や存在価値を得ようとしているのです。

心の器に入っている水は有限なので、いつかはその水がなくなるかもしれないことも解っていて、それが怖いと思いながらも、他者に捧げることをやめられません。

だって、それをしないと「自分自身」の価値や存在意義を、感じられないと信じ切っていますから。

自分では自分のことを信じられないけれど、他者からの言葉や評価は信じられる。

だから、自己犠牲をしているという自覚がありながらも、それをやめられないのです。

誰にも必要とされなくなってしまうことが怖い、だから、自分を削ってまで走り続けてしまう……。

世界に、自分が見放されてしまうのが怖いのです。

だから、「お金」や「地位」「名誉」や、他人からの「言葉」や「評価」という形ある「豊かさ」を得たいと思う。

それらで自分を覆って武装することで、心に巣食う「不安」や「自信の無さ」を脱ぎ捨てたいのではないでしょうか。

どうして、そんなことが言えるのか?

――私も、外からの評価にばかり振り回されて、自分の心を殺し続けていたことがあったからです。

でも、どんなにがんばっても、他者のために尽くそうとも、なぜか上手くはいかなかった。

いつまで経っても自分を認められず、好きにもなり切れず、他者の顔色を見ながら過ごす時間は苦しいものでした。


心で水を湧かせること

そんな生き方にもほどなくして限界が来て、自分の心の水が枯れかけたとき、私はやっと自らの過ちに気づきました。

本当に心豊かに生きたいのなら、考えるべき「順番が逆だった」のだと。

人に水を配る前に、自分の内側から「水を湧かせる術」を知らなくてはならない。

それさえ掴むことができれば、あとは自分の思うまま、こんこんと湧き出る水を好きなようにさまざまな場所や人に注ぐことができますから。

最初に知ろうと思ったのは、これまでないがしろにし続けてきた「自分」のことです。

他人の意向にばかり合わせてきた「自分」と言う人間が、本当はどんな個性を持っているのかを知らなくてはいけません。

自分が嬉しくなるのはどんなときで、哀しくなるのはどんなときか。

怒りが沸くのはどんなときで、それを解消するのに役立つものは何か。

望んでいるやりたいことは何で、できれば避けて通りたいことは何か。

やっていて楽しいことは何で、つまらないと感じることは何か。

人並み以上にできることは何で、人よりも劣ることは何か。

これまでに積み重ねてきた人生の中で、何をしているときが苦しく、何をしているときは幸せだったのか。

これらを丁寧に拾い集めて、その中で自分を幸福な感情で満たすものに、触れる時間を増やすことにしたんです。

そこからしばらくは、どんなに小さなことでもいいから、「ああ、幸せ」と自分自身の心が本気で思えることにだけ、触れていくことにしました。

つまり、それは自分の心の内側から、水を湧きたたせる作業だったのですね。

それまでの自分への罪滅ぼしのような気持ちも込めて、誰かに注ぐためとか分けるためとかは関係なく、まずは徹底的に自分の心に集中してあげることにしました。


自分の水を絶やさぬこと

私は自分の心の水の湧かせ方を知って、やっと、自分のことを好きになることができました。

そして不思議なことに、一度そうなってみればもう、自分にできること・やりたいこと・やるべきことがちゃんと解るようになったんです。

誰かの言葉や力や評価がなくても、勝手に心がどんどん元気になっていきました。

そして、ごくごく自然な形で、内側から溢れてくる水を使って誰かを喜ばせたり人の役に立ったりしたくなった。

溢れるほど持っていると、今度は、その豊かさの欠片を人に差し出すことで、「形のない豊かさ」に触れることができると気がついたのかもしれません。

別に、差し出したことの見返りがなくたって、そんなことは大して気にならないんですよね。

自分が差し出せることそのものが幸せに繋がっていて、それによって喜んでくれる人がいることを想像したり知ったりするだけでも、たまらなく幸せで。

とにかく、内にあった自分の価値を知って、それを外の世界にも活かしていけると知ったとき、無限の可能性があるように思えたんです。

「自分を満たす生き方を実現すること」

それが、私が自らの経験を経て到達した、「豊かさ」のかたちでした。

もちろん誰もが、私と同じ「豊かさ」を求めているわけではないと思います。

「豊かさ」のかたちすらも、自分の心と人生の中から、「自分らしいもの」を探していかなくてはいけません。

迷ったときは、いつだって、自分の心に訊いてみてください。

そこに、「自分の人生」の答えはあります。

むしろそこ以外には、きっとないのだと思っています。


紺野うみ

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