ワタナベ|国語科

公立国語科教諭。指導案や実践などの覚書。

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公立国語科教諭。指導案や実践などの覚書。

最近の記事

大人扱いと生徒

 探究が流行っている。探究では、調べ、発表し、課題について深く考える(時に解決を求められる)ことがある。どこかのコンテストに応募して大人のような資料を作り、大人顔負けの発表をし、大人と同じように社会に関わっていくことを様々な学校で行なっている。  しかし、生徒は子どもである。未熟だとか大人と同じことしても出来ないとかそういうことを言いたいんではなく(往々にしてそこらの大人よりよくできる)、子どもであることを強調したいのだ。ルソーによって子どもは小さな大人でないと発見されて数百

    • 百人一首で歌合

      はじめに 百人一首が一定の生徒に人気があり、(主に男子)大半の生徒に人気がないのは、恋愛的内容が多いこともあるが、古典というだけで拒絶反応を起こしているようにも思われる。そこさえ乗り越えてしまえば、生徒に魅力を伝えられるのではないか…。 歌合なら…  平安時代の雅な遊びに、歌合がある。歌を詠み合い、その優劣を決めるというゲームだ。歌合には様々な役割があるが、今回の授業では以下の役割に留めた。あくまでも目的は百人一首を楽しむこと。いろいろあっても仕方ない。 方人(かたうど

      • 地域に開かれた学校|学校×図書館

        はじめに コロナで一気に進んだ感があるが、学校の形が変わろうとしている。イエナプランの複数の学校や千代田区立麹町中学校、大阪市立大空小学校、軽井沢風越学園などを中心として、実践事例が様々なところでとりあげられている。好き嫌いにかかわらず、学校はきっと今のままではいられず、変わっていくのだろうと思う。 地域との連携について そんな中で、最近地域に開かれた学校という言葉もよく聞く。地域や外部との連携は、実の場の設定についても大きな役割を果たすと思う。でも、実際に外部と連携しよう

        • 補遺:中学生と短歌|表現の効果に着目する

          はじめに 以下の投稿で、短歌についての授業をについて書きました。最高の短歌を探すという目標を生徒と立てた実践でした。最終的に鑑賞文を書いてもらったのですが、素朴にすごいなあ、と思うものが多かったので、いくつか(個人が分からない程度に)紹介します。中2ってすごいな。 作品例(一部改変) 短歌は、およそ千三百年もの昔から人々に愛され続けてきた日本独特の詩の形です。そんな短歌の中から、私が、〇〇が最高の短歌を選んでみたいと思います。 に、続けて書いてもらいました。 解釈それぞれ

        大人扱いと生徒

          とんかつvsえびフライ|比較して読み、比較して書く

          はじめにnoteみたいな活字に塗れて平然としている人たちの界隈なら、教員でなくとも「とんかつ」や「盆土産」という作品を憶えているのではないでしょうか。  雲水になる少年に、入門前日の夜、とんかつを食べさせる物語と、盆に出稼ぎから帰った父がえびフライを買ってくる物語。えびフライをはじめて食べた時の「しゃおっ」という描写とか、いつもより厚いとんかつとか、やたらと旨そうなんですよね。お腹が空く人が続出するこれらの作品は、2つとも三浦哲郎さんの作品です。今回はこれら二つを比べる授業を

          とんかつvsえびフライ|比較して読み、比較して書く

          本紹介『本を読めなくなった人のための読書論』若松英輔

          はじめに 若松英輔さんの文章を読むと、本を読むかあという気にさせられる。一方で、本を読まなくてもいいかあ、という気にもなる。一度読書会に参加した時、その緩やかさというか穏やかさに不思議な感じがした。少しスピードを落とそうかな、と思えたのは若松さんの本に出会ってからのような気がする。 気になった言葉たち「少なくとも読むことにおいて、速くできるようになることは、ほとんど意味がありません。 むしろ、時間をかけて「たしか」にできるようになることだけが大切で、速くできてもよいことはほ

          本紹介『本を読めなくなった人のための読書論』若松英輔

          本紹介『国語〈2〉詩と物語をあじわう (シリーズ授業 実践の批評と創造 2)』

          はじめに すごい本、すごい時代があったもんだ。編集メンバーが、稲垣忠彦、大村はま、谷川俊太郎、河合隼雄、竹内敏晴、佐伯胖…他(敬称略)という一人で何冊も書ける超主役級のメンバー。しかもこのメンバーが別々に出てくるのではなく、一つの授業について話し合う。今だからこそ読んでもらいたい本。詩と物語をあじわうっていうテーマも素敵ですよね。 気になった言葉たち あらゆる点で示唆に富んだ本だと思っているのですが、その中からいくつか抜粋。 竹内 (こにし略)たとえば、今、日本語全体で母

          本紹介『国語〈2〉詩と物語をあじわう (シリーズ授業 実践の批評と創造 2)』

          文豪カードゲーム|国語のゲーミフィケーション

          はじめに 文学史の時間、子供の死んだ目。ぶつ切りの知識。時間制限。実は凄まじい知識を持った一部の生徒たち。どうにか楽しく、学力差を感じさせずにお互い学び合えないもんか…。 授業概要準備 文豪カード配布。今回は夏目漱石、森鴎外、島崎藤村、樋口一葉、志賀直哉、川端康成、三島由紀夫等。生徒はそれぞれの文豪カード裏側に箇条書きで3点情報を書く。(例えば、森林太郎、舞姫、軍医) 案①:文豪探し 六人程度のグループの形。カードを裏返して並べる。教員が文豪の名前を言う。裏面の情報から、

          文豪カードゲーム|国語のゲーミフィケーション

          語り手と創作|アイスプラネットの心情解釈

          はじめに 中学教科書に掲載されている、椎名誠さんのアイスプラネットはなんとも面白い。しかし、ある日突然気付いたのです。私はぐうちゃんに対する共感のウェイトが重くないかと。中学生の主人公を微笑ましく眺める目になっていないかと。 津田由起夫、38歳、いそうろう  そう、私はほぼ年齢がぐうちゃんだったのです。かたや生徒は主人公と同年代。もしかしなくても、私が読んでいるものと生徒が読んでいるものは違うのではないか。彼らは主人公の心情にはたやすく迫っていけるけれど、義弟の家で暮らす

          語り手と創作|アイスプラネットの心情解釈

          中学生と短歌|表現の効果に着目する

          はじめに どうにも短歌の授業は好きじゃない。自分も作れるわけじゃないし、生徒に作らせても評価できない。生徒自身も短歌ってなんか堅苦しいし、定型に落とし込むだけで精一杯。とりあえず教科書を読んで、説明、オマケみたいに生徒の創作…自分に染み付いたこの悪の流れを断ち切りたくて、あれこれやった結果がコレです。生徒ってすごい! 目標自分の好きな短歌を見つけ、その魅力を伝える。 短歌の読み方を知り、短歌を深く分析する。 学習指導要領上の目標平成29年告示 中学二年 読むことC エ

          中学生と短歌|表現の効果に着目する