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【書評】「キュー ──心と心を通わせる合図の出し方・見つけ方」ヴァネッサ・ヴァン・エドワーズ (著), 御舩 由美子 (翻訳)

この本ではどういう疑問を解決できるか?

この本では、うまく自分のアイデアを伝えるにはどうすればよいか?という疑問を解決できます。
言語、非言語、声、イメージなどコミュニケーションにおいて重要な役割を果たす要素を理解し活用することでこの疑問を解決するための具体的な戦略とテクニックを提供します。

この本との出会い

相手に自分のアイデアを効果的に伝えるには論理的に伝えることが重要だ。
主張を考えて、根拠を漏れなく並べ、論理構造もチェックし私は完璧な主張を作りあげた。
この主張を結論から端的に話せば相手にうまく伝わることは間違いない。
「私の、え~、しゅ、主張はこうだと考えていますが~、え~根拠としては~、え~っと、3つありまして、3つありますぅ、まず一つ目は~~~」
自分の話しているところを録画して見返してみると完璧な論理なはずなのに全然説得力がなかった。
そんなときに出会ったのがこの本です。

本書の内容

この本ではコミュニケーションにおいて重要な役割を果たす言語、非言語、声、イメージの効果的な扱い方が書かれています。
それらの扱い方を知ることで相手があなたのアイデアに興味を持ってもらうことができ、相手はあなた自身の魅力に気づくようになります。
読んですぐに実践できる具体的な方法が豊富に含まれており理論だけでなく実践面でも非常に役立つ一冊です。

キューとは

本書のタイトルとなっているキューとは何かについて説明します。
キューとは人間が送り合う、強力なシグナルのことで言語(知的、幼稚な単語など)、非言語(ボディーランゲージなど)、声(大きさ、スピードなど)、イメージ(服装、色など)によるものがあります。
これらをどう扱うかによって相手に響くメッセージになるかどうかが決まります。

目指すべきはカリスマ的魅力を与えるキュー

キューをどのように扱うことができれば相手に響くメッセージになるのでしょうか。
本書ではキューによって相手にカリスマ的魅力を感じさせることが重要だと述べています。
カリスマ的魅力について詳しく説明するとカリスマ的魅力とは有能さと温かさを兼ね備えた魅力のことであります。
有能さだけでは、仕事ができるが関わりにくい印象を与える印象を与える可能性があります。これでは相手に最大限の魅力を感じさせることができません。
また温かいだけの場合も相手に好印象を与えることができますが頼りなさを感じさせ最大限の魅力を感じさせることができません。
有能さと温かさを兼ね備えたカリスマ的魅力を感じさせることが重要です。

キューの扱い方 4種類のキュー

カリスマ的魅力を感じさせるためのキューを4種類に分けて説明します。
4種類とは非言語によるもの、声によるもの、言語によるもの、イメージによるものです。

非言語のキュー

まずは最も重要な非言語のキューについて説明します。
ある研究によると、非言語のキューは全コミュニケーションの65%~90%を占めるとされ、その効果は極めて大きいです。
ここでは、非言語のキューを使ってカリスマ的魅力を発揮する5つの方法を紹介します。

  • 身を乗り出す
    身を乗り出すことは相手に関心がある、熱中していることをアピールすることができます。自分が重要なことを話すとき、また相手の話に賛成を示すとき、相手に協力姿勢を示したいときは身を乗り出してみましょう。

  • オープンな姿勢をとる
    オープンな姿勢をとることは相手に心を開いていることを示すことができます。オープンな姿勢とは腕を組んだりせずに身体と相手との間に何もない状態にすることです。何か間に物理的なものを挟んでコミュニケーションをとるのもよくありません。
    相手と心を通わせたいとき、アイデアをひらめかせたいとき、売り込みをするときはオープンな姿勢になりましょう。

  • 身体を向ける
    相手に身体を向けることは相手に集中していることを伝えることができます。つま先、胴、頭を向けることで相手に身体を向けることができます。
    相手に話を聞いてもらいたいとき、相手に経緯や関心を伝えたいときは相手に身体を向けましょう。

  • 相手との距離を意識する
    相手との距離を適切に保つことで親しみを感じさせることができます。
    ただし、相手のパーソナルスペースに不用意に入ってしまうと不快感を与えてしまうので注意する必要があります。
    不快感を与えず適切に近づくためには身を乗り出したり、高さを合わせたり、ジェスチャーを使ったり、握手をしたりといったアクションを採用します。
    相手と素早く親しくなりたい場合は相手との距離を意識して行動しましょう。

  • 視線を向ける
    視線を向けることは相手に何に注意を向けているか示すことができます。
    相手に視線を向けることで相手のことを大切だと伝えることができます。
    また注目してほしいところに視線を向けることで相手もそこに注意を向けてもらうことができます。
    相手の会話に集中するとき、一緒に笑うときは少しの時間でいいので相手と目を合わせましょう。

声によるキュー

次に声のキューを紹介します。
言葉をどのような口調、音量、速さ、抑揚で伝えるかは何を言うかと同じくらい重要といわれています。
声のキューを使ってカリスマ的魅力を与えることができる5つの方法を紹介します。

  • 声に感情を込める
    感情を込めて話すことは話す内容をより魅力的にすることができます。感情を押し殺すと、自然体にも冷静にも見えず、むしろ無関心に見えてしまいます。
    魅力的な話をするときは感情をこめて話しましょう。

  • 自信を感じさせる話し方をする
    低い声、適切な抑揚、大きめの声で話すことは自信を感じさせることができます。 半疑問形やフィラー(「えぇと」「それで」などつなぎ言葉)、早口で話すと自信がないと感じさせます。
    性別や文化、人によっても最適な声は異なるので自分にあった自信の感じさせ方を見つけられるようにしましょう。自分の話している姿を録画して見返すことで効果的に改善ができます。

  • 呼吸をコントロールする
    呼吸は魅力的な声で話すための重要なキューです。息を吐きながら話すことを意識すると良いです。特に緊張した状態では息を吐ききった状態で話してしまうことがあります。
    誰かと話す第一声はリラックスして息を吸ってから話しましょう。

  • 自分の空間を拡げる
    自分の空間を拡げる姿勢で話すことは相手に魅力的に感じさせるための非言語のキューであり、また力強さと自信を伝えるキューでもあります。両肩を開き、胸を張り、顎を上げ、両腕を胴から離して話すことで自信と力強さを感じさせる声を出すことができます。
    縮こまった姿勢ではなくオープンな姿勢で話すようにしましょう。

  • チャネリング(模倣)
    話し方の手本になる人に自分がなったつもりで話してみると様々なキューを取り入れることができます。自分がスティーブジョブズだったら、孫正義だったら、どんな風に話すだろうと考え実際になったつもりで話してみよう。
    スピーチの前には偉大なスピーカーの動画を見てなりきりましょう。

言語のキュー

どのような言葉を使うか意図的に変えることでカリスマ的魅力を与えることができます。何も考えずに形式的な言葉だけを使うのはやめましょう。受け手に”知って”ほしいことだけイメージするのではなく、どう”感じて”ほしいのかについてもイメージしながら言葉選びましょう。
どのような言葉を使えばカリスマ的魅力を与えることができるのか、使う場面ごとに紹介します。

  • どんな時でも意識して使うべき言葉
    次の言葉を話の中やメールの文章などで用いるとカリスマ的魅力を与えることができます。
    興味深い、リードする、すばらしい、魅力がある、優秀、創造的

  • 始まりに使うべき言葉
    次の言葉を会話のはじめに使うことでカリスマ的魅力を与えることができます。
    みなさん、おはようございます!、今日は、わくわくしています、みなさん、ようこそお越しくださいました、では共同の作業を開始しましょう、早く一緒に始めたくてうずうずしています

  • 結びに使うべき言葉
    次の言葉を会話の結びに使うことでカリスマ的魅力を与えることができます。
    一緒に取り組めることがにわくわくしています、~するのを楽しみにしています、どんな質問でも喜んでお答えします、私たちならできる!、あなたの成功を願って、すばらしい仕事でした、お疲れ様、いろいろとありがとうございました

  • 挨拶で使うべき言葉
    次の言葉を挨拶の時に使うことでカリスマ的魅力を与えることができます。
    最近、何かわくわくするような仕事をしてる?チームの仕事ぶりはどうですか?、何かお手伝いできることはありますか?今週末、何かおもしろい予定はありますか?

  • 相手に合わせる
    相手の言葉や言い回しを適切な程度に真似ることでカリスマ的魅力を与えることができます。過度に真似すぎると逆効果になってしまうこともあります。相手と自分が使う言葉を意識し適度なバランスで話しましょう。

イメージのキュー

相手に与える視覚的イメージを演出することでカリスマ的魅力を与えることができます。イメージのキューを扱う3つの方法をご紹介します。

  • 価値、外見、ブランドを高める
    自分の価値、外見、ブランドを高められるような視覚的イメージを創り出そう。自分の服装、所持品はどういうイメージを与えるかを意識して選びましょう。またビジネスでのプレゼン資料の色、書体がどういうイメージを与えるかについても意識して選択しましょう。

  • イメージ画像を使う
    プレゼン資料、オンライン会議の背景、チラシなどに使われるイメージ画像が与える印象を意図的に使いましょう。私たちの脳は0.013秒見ただけでイメージを識別できるといわれています。なるべくイメージ画像を入れるようにして狙い通りのイメージを抱かせるようにしよう。

  • 色の効果を使う
    特定の色にはその色がもたらす効果があります。色の影響を理解し効果的に使いましょう。赤は行動を起こさせる、青は冷静さや信頼性、緑は進めやエコ、黄色は温もりや心地よさといったイメージを与えると一般的にいわれています。これらは文化や個々の感覚によっても異なるということも留意しておきましょう。

以上がこの本で述べられているカリスマ的魅力を与えるための4つのキューを扱う手法です。
是非これらの手法を日々の取り組みに取り入れてみてください。
少しずつですが相手の反応がよくなっていくはずです。

学びと変化

本書からコミュニケーションをする際に注意すべきポイントを網羅的かつ具体的に学ぶことができました。
この書籍で述べられていることを一つずつ実践していくことで相手へ意見が効果的に伝えられている感触が得られています。
些細なことですが相手に報告する際は小さなことでも相手に頭、身体、つま先を向けて身を乗り出して聴くなどすると相手は気持ちよくフィードバックをくれているような気がします。
またメールなどでもカリスマ的魅力を感じさせるワードを入れることによって相手から良い反応の返信をいただくことができています。
周囲の人に魅力的に感じてもらうことは人が集団でなければ生きていけない生物である以上必要不可欠の能力です。
是非、皆様もキューのすばらしさを体験するためにキューを意識した取り組みにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

参考:書評スライド



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