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HKK入院日記 1日目その4


(今回はちょっと下の話になるので苦手なかたはスルーしてくださいね)

ここまでの内容
→スキー場にて立木に衝突
→左骨盤骨折と判明
→ドクターヘリで緊急移送
→ICUで尿意到来

スキー場で休憩した時にトイレには行っていたものの、それ以来数時間トイレには行けていません。もともと膀胱が小さいのかトイレが近い私。

ICU(集中治療室)の広い部屋の真ん中でポツンと1人身動き取れない状態です。それでももうこれは我慢できない、となって呼びかけます。

「すいませーん!あのーすいませーん!」

気づいてくれた看護師さんがシャキシャキと近寄ってきてくれます。

看護師さんは病棟やジャンルによってだいぶ性格や雰囲気が変わることがわかりました。ICUは超シャキシャキしてます。この後移ることになる外科病棟はホンワカしてました。

「すいません、尿意がありまして」

女性看護師さん「はい分かりました。ちょっと待ってくださいね」

そう言って尿瓶を持ってきてくれました。
生まれてこのかた寝たまんま尿瓶に放尿したことはありません。そしてまだ自分の下半身の状態はスノボウェアこそ脱いでいるものの、タイツとスポーツ用タイツを二枚重ね履きしていました。そのスポーツ用タイツがかなりキツイ伸縮性のもので、パッツパツ状態。

看護師さん「あーこれ脱ぐの難しいですよね」

わし「すいません...」

看護師さん「腰と足を持ち上げて動かすことになるので、もうこれ切ります?」

わし「あ、え、あ、はい。切ってください!」

看護師さんがハサミを持ってきてタイツ二枚を切ってくれました。ボクサーブリーフ一丁になったわけですが、これからどうする。

看護師さん「じゃあこれでしてください。」

その時近くにもう1人女性看護師さんがいたので看護師さんが席を外すように声がけてくれましたが取り組み中のようでその看護師さんは「見てないのでしちゃってください〜」とその場にいて作業していました。

わし「マジか」

その後少し経って室内にいた看護師さんも用事を終え、部屋を出て行きました。

ボクサーブリーフの社会の窓をゴソゴソとこじ開けてなんとかいたす準備はできました。そして顎を思い切り引いて顔を下に向けながらどうにかこうにか尿瓶をあてがいました。

そして私はこの時重大なミスをしてしまいます。

足を動かせないことに気を回し過ぎていた私は尿瓶を体に対して90°で当てていました。寝ている体に横からあてがう感じです。尿瓶の形を想像してもらうと分かるのですが、あれってちょっと入り口が上向きについてるんですよね。

これを太ももの付け根から横向きに当てるとなると尿瓶が横倒しの格好になっちゃうんです。そんなことにはもう考えが及ばないくらいの尿意が襲ってきていました。とりあえず尿瓶の口にあてがって準備はできていたのでもうあとは"寝たまんまで放尿する"という理性の扉をOPENするだけでした。限界点を突破した尿意がそのまま理性の扉も解放してくれました。

なんとも言えない罪悪感・背徳感に襲われながらも排尿の心地よさもあり、もうそれはそれは筆舌し難い感覚が全身を支配します。

その時!下腹部に暖かさを感じてハッとしました。溢れていました。尿...😭

尿瓶の口にうまくあてがわれておらず、横倒しになった尿瓶からおよそお猪口2〜3杯分の尿がボクサーブリーフに染み込み、広がっていました。

「やっっっっっっっっべ」

必死になって尿を一旦止めます。一瞬止めたすきにどうにか体を右向けに倒し、尿瓶を正常な向き・角度に直しました。「あ、これこの向きで使わないと漏れるんだ」と当たり前のことを失敗をもって理解し、尿瓶の本体を下へ下へ押し込みました。入り口を上向きにした状態でもう一度放尿再開です。

今度はうまくいきました。尿瓶の中にどんどん尿が溜まっていきます。同時に尿瓶本体がどんどん温かくなっていきます。湯たんぽみたいでした。

そして次の問題です。

「これ、容量オーバーせんか?」

尿瓶はだいたい900mlの容量なのですが、放尿を始めて感覚的に50%くらい終わった時点で尿瓶も50%を超えるくらい尿が溜まっていました。

もうでもどうしようもない。

と腹をくくり、尿瓶を必死に下に下に押し込み、入り口を上向きにキープしたまま、出し切りました。

なんとかギリギリおさまってくれました。800mlは出たんじゃないかと思います。

「すいませーん。終わりました。」

と看護師さんを呼びます。

女性看護師さん「終わりましたかー」

わし「あ、はい、でも、ちょっと最初、漏れてしまいました。」

看護師さん「最初だと難しいですよね。大丈夫ですよー。あとで着替えましょうねー」

わし「ううう、すいません。ありがとうございます...」

こうしてどうにかこうにか人生初の尿瓶体験は完了しました。これ以降、尿瓶は両股で挟む格好で体に対して180°(水平・まっすぐ)で使うとよいことが分かりました。あとは溜めずにこまめに出すことですね。

ベッドから動けないことによる数ある制約の中でも排泄は避けて通れない道です。ここをクリアしないとどうにもなりません。よくこれが嫌で我慢して水分を取らなくなってしまう患者さんもいるようです。しかし身体的にもそれはよくありません。ある意味もう開き直っていくしかありません。

「痛みと排泄は本人しか分からないので、しっかり教えてくださいね」

入院が決まって病棟に移動した直後、看護師さんにそう言われました。

そうです。私は入院することになったのです。

続く


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