短編小説 泣いてもいいから
「手術しないと、以前の様に歌う事は難しいかもしれないです」
「そうですか」
家に帰っても病院で言われた事が頭の中でずっと再生されていた
歌以外に私には何も無かった
その歌さえも無くなってしまった
もう私には何も残っていなかった
バンドも解散して、何の為に生きているのか
生きている意味が消えてしまった
時間が足りなくてずっと焦っていたのに
今はする事がなくて時間が永遠の様に感じてしまう
「喉の調子はどうですか?」
「相変わらずです」
「どうしますか?」
「もう少し考えても良いですか?」
「わかりました、薬出しときますね」
病院が嫌いだった、
励まして来る看護師や医者が好きになれなかった
「お姉さん大丈夫?」
「大丈夫です」
下を向いてベンチで座ってると知らない男性から
声を掛けられた
「何か飲み物いる?」
「平気です」
「あ、そう」
「何処が悪いの?」
「喉です」
「なんだ、全然平気じゃん」
何なんだこの男
イラッとした
「お兄さんは何処が悪いんですか?」
「うーん、心臓かな」
「……すいません」
「なんで謝んの?」
「何となく」
「悪いと思ったなら連絡先教えてよ」
「良いですよ」
軽そうで凄い嫌だったけど
罪悪感から教える事にした
「リカコいい名前だね」
「ありがとうございます」
これが奏多との初めての出会いだった。
奏多は最初の印象こそ最悪だったが
人の痛みを理解してくれて、とても優しかった
出会いを重ねて行く事にその優しさに惹かれた
そんな奏多から告白されて、私達は付き合い始めた
奏多から、大事な話があると言われ、喫茶店に来ていた
「お待たせ」
「私もさっき来たところ」
「何飲む?」
「コーヒー」
「すいません、コーヒー二つ下さい」
「で……大事な話って何?」
私は正直プロポーズされると思っていた
「俺手術するから、梨香子も一緒に受けよう」
「え……」
想像していた話と違い過ぎて理解が出来なかった
「歌手目指してたんでしょ?理香子の歌聞いてみたいわ」
「――わかった」
「手術終わったら、曲聞かせてね」
私達は運命的な事に同じ日に手術が決まった
「理香子なら絶対夢を叶えて歌手になるよ」
「私の歌聞いた事ないでしょ?」
「昨日夢で歌手になった理香子が笑顔で歌ってたの聞いたよ」
そう笑顔で言うと、奏多は手術室に運ばれて行った。
私の手術が無事に終わり目を覚ますと
担当の主治医は深刻そうな顔をしていた
私が奏多と会う事はもう2度と無かった。
続きはこちらで読めるので良かったら
読んでみてください
読む際は
泣いてもいいからを聞聴きながら読んで欲しいです‼︎
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