故人を偲ぶ

 皆さんは大好きだった人、大切な人を亡くしたことはありますか?

もし、今はなくても必ずその日はやって来ます。生きとし生けるものは必ず死ぬからです。もし、死がなければそれは生ではないからです。覚悟しておくに越したことはないでしょう。

 私は十代の前半に大好きだった人を亡くしました。そして、私は亡くなった人のことを早く忘れなくてはならないと思っていました。つい一昨日くらいまで。四十九日の間にずっと泣いていたら故人がこの世を離れることができないと両親から言い聞かされたからです。

 実際、私はその人が亡くなるその直前しか泣きませんでした。その人がこの世からいなくなった事実を受け入れることができず、乾いた笑いを漏らしたくらいです。しかし、四十九日が過ぎ去り、ようやく実感が湧いて来て夜な夜な涙を流す日々が始まりました。

 そんな私がなぜ忘れなくてもいいやと思えるようになったのか。それは先日祖母と話したお蔭です。

 日本に限らず、世界的に宗教の話は御法度とされていますが、それを承知の上で私の祖母が浄土真宗の信者で信心深いことを述べたいと思います。なぜなら、恐らく先日聞かされた話は浄土真宗の教えに基づくものだと思われるからです(私自身は無宗教です)。

 祖母は

「亡くなったあともその人のことを思い出すことが最大の供養だよ。」

と言いました。私はそうなのか、と少し驚きました。泣くたびにこの世にその人を留めてしまうようで罪悪感を感じていたのですが、実際は供養していたのかもしれないと思うと気が楽になりました。

 これが宗教のやり方なのは百も承知です。しかし、それで人の心が救われるのであればそれは根本的な解決であり、良いのではないかなと思っています。まあ、私が浄土真宗に入信するかどうかは別問題ですが。

 そういうわけで、今後は以前よりは少し軽い気持ちで故人を偲ぶことができそうです。皆さんももし故人を想って泣いてはいけないとお思いでしたら、私の祖母の言葉をぜひ思い出して、思い切り心ゆくまで涙を流して欲しいと思います。罪を感じないで。

気負うことない、空気のような場所であってほしい。 記事に共感していただけたら、 サポートしていただけると幸いです。