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『売り様の国』と『お客様の国』が交錯する時代で働く

日本国内のサービスレベルは世界でもトップクラスだ。
しかもそれに加えて、この前の東京オリンピック誘致活動で、「おもてなし」というキーワードが世界に発信されたことにより、海外からの観光客も日本の「おもてなし」に期待を膨らませている。
日本国内での企業による顧客獲得競争が激化してすでに20年以上になるが、今や、経営改善の課題は何かと聞かれると、お客様を大事にする取り組みを最重要視している企業が多い。

その現場でよく使われている改善のキーワードは「顧客満足度の向上」である。
高度成長期ど真ん中の時代は、右肩上がりに増えていく潜在顧客が常にあり、昨今のように顧客の囲い込みの努力をしなくても、ある程度の品質の商品やサービスを提供すればビジネスはうまくいった。
今は状況は一変している。

あらゆる業界が顧客の奪い合いを繰り返している。
ここ最近は特に、少子高齢化によるマーケットの縮小も重なり、厳しさは増す一方である。
まさに、「お客様は神様」の時代である。
とはいえ、以前はここまでお客様至上主義を謳う企業も少なかった。
どこか自然にお客様と対峙していたように思える。

ここ数年の顧客満足度向上合戦は悪循環を生み出しているとしか思わない。
海外に出たら、世界一行儀がよい日本人も日本国内では大クレーマーに変身する。
最近では、耳慣れて驚かなくなったが、モンスターペアレントが大学にまで登場しているという。
大学は、純粋に商売とは言い難い部分はあるが、クレームを発生させないように先生たちもピリピリしているという。
近年、問題のあるクレーマーの言動はますますエスカレートしている。
客が怒って、店員に土下座させたというSNSへの投稿も出てくる有様である。
これでは企業で働く者は、疲弊し、ストレスが溜まるのも頷ける。
このストレスを抱えた状態で、自分自身もお客という立場にも変わる。
それでは確かに悪循環である。

とにかく、日本は行き過ぎた笑顔重視のサービス方針に大きな問題がある。
良いサービスを実現するために、笑顔での接客は大切だ。
顧客対応での笑顔が大切であることは否定はしないが、単純にお客様に喜んでもらうための心からの自然の笑顔であればよいが、今のサービスの現場に立つ人たちは必ずしもそうとは言い難いだろう。
私の知り合いの元キャビンアテンダントの友人が面白いことを話していた。
彼女は、仕事柄、笑顔が特に重要なので、毎日、鏡に向かって笑顔のトレーニングをしている。
これを10年も続けていると、とにかくどんな場面でも笑顔でいることができる。
実際に葬式に参列した際も、つい人の顔を見たら笑ってしまったという。
今ではそれが悩みになっている。
信じられないような話だが本当らしい。
ベトナムのセミナーでこのネタを話したら、結構、ウケた。

一方、今のアジアの国々はどうだろうか?
そもそも、お客様を大切にしているのだろうか?
初めてアジアを訪れた日本人は、彼らのサービスの酷さに嫌気がさす。
どう見ても、客である私たちを大事にしているとは思えないのだ。
空港、ホテル、レストランなど、どこへ行っても不満がたまる。
ベトナムだけに限らないが、お客様は、サービスする側にとって、どちらかというと面倒くさいのだろう。
そう感じている人たちが多い。
実際に「仕事をしてやってる」という意識の方が強い。
こんなことをボヤいていたら、ベトナム人の友人は笑いながらこのように諭す。
「この国は、まだ、売り様の国よ」

今の日本は働くことでストレスが溜まっていく。
一方で、アジアで私たち日本人がお客になることは、違う意味でストレスが溜まる。
そして、アジアで私たち日本人がお客様にサービスを提供すると幸せになれる。
なぜならば、ちょっと丁寧にサービスをするだけで喜んでもらえる。
日本の飲食店などでアルバイト経験のある高校生クラスがベトナムで顧客対応したら、「素晴らしい」と褒められるはずだ。
商売の原点を勉強するためにアジアで経験を積む。
今の若者にはとても大切なことだと思っている。
当社はレストランなどのサービス業をベトナムで展開している。
インターンにチャレンジしたい方、いつでも連絡ください。

(本記事は、ブログ「近藤昇の会社は社会の入り口だ」に、2015年6月15日に投稿したものです。)

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