見出し画像

もし自分の会社の社長がAIだったら?

2016年5月17日の日本経済新聞の一面に「AI社長の下で働けますか」という記事が掲載された。
まさに、AI社会の未来を予見する記事である。
その記事の中には「決断が人の役割」とも記されている。
最近の中では一番インパクトを受けた記事だ。
早速、その後のセミナーや講演、会社説明会で毎回引用している。
なぜ、この記事をそれだけ活用している?
それは私自身が、社長の仕事の半分以上はAIで代替できると思っているからだ。
いや、正確に言うとAIに代わってほしいとさえ思っている。
実際に私が日々行っている仕事の大半は、現場把握、情報収集・判別、ビジネスチャンスの発掘、リスク察知などだ。
そして、日々の多くのメール処理など。
確かにAIで問題ない。
もちろんそれは数年先、10年先のAIも含めたICT活用でという意味だが。

社長業というのは、一見とても属人的な印象があるかもしれない。
好奇心旺盛で大胆でリスクテイクも平気でする。
創業者は特にそうだ。
少なくとも、日本の高度経済成長時代を支えてきた中小企業のタフな社長のイメージがオ-バーラップするだろう。
とりわけ、中小企業の創業者はとてもアナログ的でAIとは無縁であると思われている。
この点は私もそう思う。

ここで、少し社長の仕事を考えてみよう。
組織を創り、組織をリードし、チームで成果を出すための強力なリーダーシップが必要である。
そして、事業の創造、マーケット開拓などの先見性やチャレンジ精神も条件である。
あとは、日々発生するリスクや問題に的確に処理する判断と対応策の指示も必要だ。
もちろん、部下に何を任せて、自分が何をするかという権限移譲の責任範囲の明確化なども人事制度の構築と運用と併せて不可欠なものである。
社員育成は当然、社長のする仕事のひとつである。

そしてもうひとつとても重要な社長の役割がある。
それは「決断」である。
山で遭難したときに誰が決断するかという類のものでもある。
そのためには、社長自らが一番感度の高いレーダーの役割を果たさなければならない。
空港の管制塔をイメージしてもらえればわかりやすい。
今の時代、言うまでもなく情報過多の時代である。
さまざまな要因が重なってのことであるが、この流れはますます加速する。
今や中小企業といえども、世界の経営に関係する情報をキャッチアップできる時代である。
今すぐにアフリカでビジネスする、しないは関係ない。
経営判断するための情報収集の範囲がすでに地球規模に広がっているのは間違いない。
一方、日本国内を見ても、地方活性化、シニア活用、インバウンドの増加など、地方の情報にも精通しておく必要がある。
毎日のようにAIやロボットやビックデータなどの言葉が、メディアを賑わしている。
これらのテクノロジーや仕組みを経営判断のためのツールと考えるのも正しい。
そして、経営環境そのものに影響を及ぼす、社会やビジネスインフラの変化という言い方もできるだろう。

さて、冒頭の話に戻ろう。
社長の仕事はAIで代替できるのか?
皆さんどう思うだろうか?

社長ではない人の場合、「もし自分の会社の社長がAIだったら?」で考えると腑に落ちるかもしれない。
とはいえ、職業や経験、ICTへの精通度、関心度などの違いで反応は千差万別だろう。
そもそも、AIを知らない人もいる。
ICTでさえも世間の大半が知らない。
当然、この類の記事の言いたいことなんかチンプンカンプン。
それも当然だろう。
AIをなんとなく知っている人でもICTアレルギーの人に言わせると、「そんな時代は来ない」と確信めいたように語る。
おそらく「来ない」のではなく「来て欲しくない」のだろう。

「人間が主役の世界からAIが主役になる?」

アナログ派には許されない話なのだ。
これはもっともな話である。
私もそう思う。
これからもずっと人間が主役であるべきだし、そうでないならテクノロジーや科学技術の発達は意味をなさない。

しかし、現実を直視することは大切だ。
すでに、日本のような先進国に限らないが、ICTは私達の生活や仕事に組み込まれている。
今更、これを否定できない。
役に立っているかどうかの議論に関しては別の機会に譲る。
しかし、無駄なエネルギーも使わずに、歩くことがいくら環境に良く、健康に良いといっても、いまさら車がなかった江戸時代には戻れない。
社長が日々、長年の失敗経験やさまざまな情報などを頼りに経営判断をする。
時には、会計士などの専門家などにも相談する。
弁護士も企業経営のリスク対策では欠かせない。
そもそも、会計士、弁護士などの職業は、AIにとってかわられる職業であるのは間違いない。
知識と経験と論理的対応力が主たる仕事だからである。
おもてなし業ではないし、サービス業ではない。
これらの専門職は、ホテルの受付がロボットになる・ならないの次元の話ではない。
ホテルのサービスの場合、お客さんがそういうのがいやだと思えば利用しなければよい。
お客さんが望めば、人によるおもてなしやサービスはなくならない。
しかし、人によるおもてなしを望むなら、ある程度の出費を覚悟して満足を得ることだ。
人手不足の日本国内はそういう時代に来ているということである。

一方、さまざまな職人や専門職はどうだろうか?
これらは随分前から、よく経験と勘と度胸の世界と言われてきた。
ノウハウの伝承には暗黙知ではなく形式知が必要であると
長年の経営課題でもある。
簡単に言えば、他人が見えるように記録しておくことだ。
記録になってしまえばICTの領域。
そこにAI的に膨大なデータや情報を使って判断し、ロボットやIOTの仕組みを介してさまざまな作業ができる。
こういう時代が来たのである。
とても効率的だし、合理的だ。
なによりも、人間が疲れなくて済むし、ストレスも間違いなく軽減される。

弊社は、実は、アフリカのルワンダでICT現地法人を設立準備をしている。
先月の上旬に、アフリカに訪問したこともあり、冒頭の記事の内容を見てドキッとした。
この記事の出だしは、
「ルワンダにオフィスを設けたらどうか?」である。
ルワンダでICTビジネスを始めるかどうかをAIが取締役会で提案する。
あまりにも、今の私とオーバーラップした。
私はすでにAIに頼らず、ルワンダでのビジネス活動を決定していたが、考えてみたら、簡単なAI的な判断を行っていたに過ぎない。
今後、長年のベトナム経験とICTビジネスが地球規模で重要になる。
しかも、周囲は農業国である。
こんな材料から判断した訳だが、これは、いまどきのAIであれば間違いなくアフリカビジネスはGOなのである。
あとは、私自身の度胸、決断ということになるのかもしれない。
冒頭の記事を見てから、毎日こんなことを考えている。

そして、弊社が担うべき次のテーマもより鮮明に見えてきた。
それは、「アナログが主役でICTを有効活用できる仕組みを創造する」である。
AIがとってかわるだろう分野はたくさんある。
社長の仕事とは限らず、職人の領域もそうだし、ホワイトカラーの領域も該当する。
経理などは真っ先になくなる仕事のひとつだろう。
これらの今ある仕事が、段階的にAIに置き換わった時はどんな世界が広がるのか?
おそらくより“人間らしさ”を求める世界となっているのではないか。
ICT社会の中で人間がそのことを再認識し、人間が主役となり、仕事も進むのではないかと思う。
改めて企業経営が人間らしさを武器にすることができる時代が到来するだろう。
それは、弊社が創業時から提唱してきたヒューマンブランド力を強化することでもある。
そういう意味では、今は産業革命始まって以来の変革期だ。
こんな時代に経営をしている喜びを噛みしめている。
そして、弊社の未来の活動に向けて俊敏に準備を進めているところだ。

ICT社会の未来を考えるセミナーにおいてこのことを皆さんと議論してみたい。

画像1

(本記事は、ブログ「近藤昇の会社は社会の入り口だ」に、2016年6月8日に投稿したものです。)

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!