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私のプレイリスト 中村佳穂

中村佳穂

京都府出身のシンガーソングライター。
ソロ、デュオ、バンドと、様々な形態で音楽性を拡張し続ける。
一昨年に公開された細田守作品『竜とそばかすの姫』では声優を務めるなど、多方面で活躍をみせている。



中村佳穂

・1992年5月26日生まれ(30歳)
・京都府出身
・バンドではピアノを担当
・主な共同制作者に、荒木正比呂、深谷雄一、西田脩大、MASAHIRO KITAGAWAらがいる。


略歴

 京都府で生まれた彼女は、音楽好きな母の影響を受け、2歳の頃からピアノを習い始める。ピアノ教室では、先生の弾いたピアノを聴いただけで覚えるなど、幼い頃から才能をみせていた。
 絵を描くことと音楽を聴くことが大好きだった彼女は、将来画家か歌手になると幼心に決心する。

 「音楽室に槇原敬之のサイン入りグランドピアノがあるから」という志望理由で大阪の高校に入学した彼女。絵も音楽も好きな彼女は、美術部と吹奏楽部を兼部して活動していた。
 美術部に関しては半幽霊部員でありながら、先生のアドバイスを受け、美術大学を受験する。見事合格した彼女だったが、高校の卒業制作で絵を描いていた時、自分は音楽をやりたいと思い、大学入学を辞退。涙ながらに絵を諦め、一年間大学を選び直す。
 京都精華大学人文学部に入学した彼女は、入学してすぐ音楽活動に取り掛かり、20歳の頃から作曲を始める。精力的に曲作りを続けた彼女は、大学生にしてCD3000枚を売る人気を獲得する。
 2016年のフジロック出演をきっかけに音楽関係者の注目を浴び始めた彼女は、その後もフェスやライブ活動を積極的に行い、多くの名曲を生み出す。
 デュオやバンドのライブも成功させ、2021年には映画の声優を務めるなど、ますます活動の幅を広げる。






きっとね!

 ダンサーの「yurinasia」が『きっとね!』に合わせて踊る動画を見て、中村佳穂の存在を知りました。

 歌とダンス。表現の方法は異なりますが、型に嵌まらない両者の天衣無縫なスタイルが見事に融合したこの映像は、私の大好きな作品であり、私が中村佳穂にハマるきっかけとなった動画でもあります。



アイアム主人公

 機嫌がいい時に自然と出る鼻歌を録音し、後で聴いて「いいな」と思ったらそれを曲にしてしまうという中村佳穂。
 『アイアム主人公』は、そんな作曲を楽しむ彼女の様子がありありと浮かんできます。

アイアム主人公 オンリーでイカしてるぜ
かっこいいね
アイアム主人公 オンリーでイカイカイカしてるぜ

 思ったことをそのまま歌にしてしまったようなこの曲。「アイアム主人公」と声に出すだけで、力が湧いてくるような気がします。

 メタ的な歌詞、語りかけるような調子、変幻自在のリズム。これまでの全てが馬鹿馬鹿しく感じてしまうほど、とことん自由です。

 この曲も、「yurinasia」がめちゃくちゃカッコよく踊っています。




KAPO


あぁもしもしかして
私は今 最強なんじゃない?
(勘違いでもいいじゃん キラキラしてるね
もっといってみちゃいな)


 中村佳穂は現在、2018年にリリースされた『AINOU』と、昨年リリースされた『NIA』の2つのアルバムを出しており、先程紹介した『アイアム主人公』は、『AINOU』に収録されています。

 『KAPO』は、新アルバム『NIA』に収録されており、前アルバムでいう『アイアム主人公』の系譜を継いだ、鼻歌色の強い曲です。


 「Hi My name is Kaho!」から始まる歌詞は、まさに「機嫌がいい時の鼻歌」のような、明るくくだけた、前向きな言葉のオンパレードとなっています。

 ぜひ「yurinasia」に踊ってもらいたい...。



そのいのち

はいからいきゅねんいっけんどし
うつつうだらんうってんだゆ
光って 光ってんだ
どうしてあなたが光っているんだ


 自由な感性で曲を生み出す彼女ですが、豊かな感性の裏には、「なんで」「どうして」の強い好奇心と洞察力があります。

 「目の前で起きていることだけでなく概念的な問題についてもとことん考える。」
 この姿勢は美大受験の際に身につけたものであり、彼女の音楽活動にも大きな影響を与えています。

 『そのいのち』は、そんな彼女の死生観が抽象画のように表現された曲です。

 壮大で、長編映画のエンディングを見ているような気持ちになるこの曲は、セットリストの後ろに組まれることの多い名曲です。




Hey日

お金ない みんなすごすぎるでしょ
お金ない みんながやばい
我が城はセーフティ 
ベッドに沈めば 文句なしの1億点 アイ!


 『Hey日』は、『NIA』の中の一曲です。同アルバムに収録された『Q日』と合わせて「平日と休日」を表現しています。

 どちらの曲も、関西で生まれ育った人間らしい楽観至上主義全開の歌詞。『Q日』が夢想にうつつを抜かした調子なのに対し、『Hey日』は怠惰な日常を誇るかのような、思い切り開き直った言葉が綴られています。

 「ベッドに沈めば文句なしの1億点」、「あぁ朝からもうアイスを食べちゃう」、「これは死ぬまでの茶番だよ」
 こんな怠けた言葉を曲にしてしまうのは、彼女くらいでしょう。





さよならクレール

さよならクレール 何気ないすれ違いの中を
泳ぎ続けたね 探してtake it for me
何気ないSOS お互い蛍みたいに



 『さよならクレール』は、アルバム『NIA』のリリースに先行して配信されたシングル曲です。

 多くの音楽関係者がアレンジやミックスに携わるこの曲。ドラムやベースに加え、シンセサイザー、オルガン、チェロ、ヴァイオリン、ヴィオラなど、たくさんの楽器が重厚な世界観を創り出しています。

 公開されているリリックビデオも凝ったものになっており、歌詞の持つ意味を視覚的に表現した素晴らしい映像からは、この曲に携わる人たちの愛とやりがいを感じます。

 また、同曲の弾き語りバージョンも素晴らしく、聴き比べると、改めて中村佳穂の多彩な表現力を感じることができます。

 ↓画質も音質もガビガビですみません...。


 ちなみに、中村佳穂のライブは基本的に撮影を許可しています。
 SNSに投稿されたお客さんの感想を見るのが楽しいからだそうです。






 中村佳穂のステージはとにかく圧巻です。

 フェスではバチバチのセットリストで会場を最高潮に盛り上げ、単独ライブでは体の芯まで響かせる歌声で聴く人を圧倒します。

 ソロ、デュオ、バンドなど、演奏形態も様々で、「吉岡悠歩」、「髙橋あずさ」、「植松陽介」といった、日本を代表するコーラスが参加することもあります。


 そんな彼女のライブで最も特徴的なのは、MCです。

 歌と喋りの境界線が曖昧で、常にメロディーを伴って喋るため、新曲だと思ったらMCだった、みたいなことが(本当に)よくあります。
 鼻歌から曲を作る彼女は、会話すら曲にしてしまうのです。



 彼女の自由奔放なスタイルは、老若男女問わず我々を魅了します。

(余談ですが、『竜とそばかすの姫』公開以後、家族連れのお客さんが増えたような気がします。
新開誠作品やONE PIECE FILM『RED』のようなミュージカル調のアニメーション映画は流行っているのでしょうか。私の周りではあまり熱心に観た人がいないので、実際の視聴者層が気になります。)






 常に自由な視点を持ち、奔放かつ圧倒的なスケールで音楽を届ける中村佳穂。彼女の今後の活躍を、これからもしっかりと追っていきたいと思います。


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