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私のプレイリスト Laura day romance

Laura day romance(ローラデイロマンス)

2017年に結成された日本の4人組バンド。
男女ツインボーカルバンドとして、東京を拠点に活動している。
バンド名の「Laura day romance」は、アメリカのバンド「Girls」のデビュー作『Album』に収録された『Laura』という曲に由来する。
左から鈴木(Gt.)、礒本(Dr.)、川島(Vo./Gt.)、井上(Vo./Tam.)


井上花月(いのうえかづき)

・ボーカルとタンバリンを担当
・1996年6月生まれ(26歳)
・大学では日本文学を専攻していた
・美術が好きでバンドのアートワークを担当している
・モデルや文章を書く仕事も行っている

鈴木迅(すずきじん)

・ギター、コーラス、サンプリング等を担当
・ほとんどの楽曲を製作している
・メンバー1の音楽オタク


川島健太郎(かわしまけんたろう)

・ボーカルとサイドギターを担当
・埼玉県出身
・井上とふたりでアコースティックライブを行うこともある


礒本雄太(いそもとゆうた)

・ドラムスを担当
・1994年9月24日生まれ(28歳)
・広島県出身
・他メンバーとは違う音楽サークルに所属していた


略歴

 早稲田大学の音楽サークルに所属していた鈴木がギターの川島に声を掛け、意気投合する。2人はFUJI ROCKに出ることを目標にバンドを組むことを決め、当時所属していたバンドが活動休止中であった井上をボーカルとして誘い、2017年2月、Laura day romanceが結成される。

 バンド名は「Girls」の曲から「Laura」を入れたいという鈴木と「romance」を入れたいという井上の意見を取り入れ、2つの単語を入れつつ語感のいい「Laura day romance」となった。言葉自体に特別な意味はない。

 3人組で活動していた同バンドへ、サポートメンバーを経たドラムの礒本とベースの清水直哉(しみずなおや)が加入し、5人組となる。しばらくはその体制が続いたが、2019年に清水が抜け、現在の4人体制になる。

 卒業後もバンドを続ける道を選択した4人は、ファーストアルバムを「架空の街」という独特のコンセプトで作成、リリースし、インディー・ロックバンドとしてデビュー早々話題となる。
 鈴木を中心にメンバーの音楽知識はオタク気質で、洋楽や文学の要素を取り入れた楽曲は深い味わいを生み出し、音楽ナードのリスナーを次々と獲得していく。

 現在、ベースやキーボードにサポートメンバーの協力を得ながら精力的な楽曲製作やライブ活動を行っている。








Sad number

例えばの話なら、また意味のないこと
ふたりで笑ってたかもね
さようなら代わりの sad number


 Apple Musicで『Sad number』を聴いたのがLaura day romanceに出会ったきっかけです。

 初めて聴いたはずのLauraの音楽は、まるで昔から聴き続けていた馴染みの曲のように、安心感のある聴き心地でした。
 どこか懐かしいメロディーとクセのない綺麗な歌声は、びっくりするほどすんなりと耳に入り、少しの抵抗感もなく私を歌詞の世界へと誘ったのです。

 『Sad number』は、切なくも爽やかな曲です。密かに思いを寄せていた相手と離れ離れになる時の淡い気持ちを、主人公は歌で表現しています。
 1番は別れゆく夜行バスの中での想いを、2番は別の街に住み始めてからの様子が描かれており、一曲を通して主人公のえも言われぬ感情がじんわりと伝わってきます。
 夜行バスに乗って「あくびがうつるくらいそばにいたいのに」と呟く姿はこれ以上ないほど切なく、ロマンチックです。

 Lauraに出会った曲ということもあり、この曲には特に思い入れがあります。初めてライブで『Sad number』を聴いた時は、感動しすぎて放心状態になってしまいました。
 間違いなく私の中のベストソングです。




lovers

君は眠る時に 僕の肩を借りたから
いつかその借りを返しにきてね


 男女ツインボーカルであることは、Laura day romanceが持つ大きな強みのひとつです。

 井上花月のクールでアクのない歌声が印象に残るLauraの曲ですが、そこに川島の溌剌とした発声、他メンバーの丁寧なコーラスが選択肢として加わることによって音楽性がぐっと広がっています。
 最近は井上のボーカルオンリーの曲がほとんどですが、初期の曲にはツインボーカルバンドらしい若々しい印象の曲が多く、特に『lovers』という曲にはその傾向が分かりやすく表れていると思います。

 文学的な歌詞を「lovers(恋人たち)」と題して力強く歌い上げるこのデュエット曲は、男声も女声も気持ちよく、カラオケで歌ったらかなり楽しそうです。
 ただし、Lauraの曲はカラオケに登録されておらず、現在のところ歌うことができません。
 仕方なく最近導入されたサブスクのカラオケモードで歌いましょう。





夜のジェットコースター

夜のジェットコースター乗っかって
あなたの街まで歩いて行けたなら
どんなに幸せなんだろう


 Laura day romanceの曲は、歌詞もイントロも文学的です。
 まるで小説の出だしのようなイントロは、これから始まる物語が持つあらゆる可能性を予感させ、私たちの胸を期待感でいっぱいにしてくれます。

 「夜のジェットコースター」というタイトルと13秒間のイントロからあれこれ想像してしまうのは、私だけではないはず。
 Lauraの曲のイントロを聴いた時に陥るこの感覚は、好きな作家の新作小説を買った後のワクワク感と似ている気がします。

 私の先輩に『夜のジェットコースター』が大好きな人がいるのですが、その先輩はライブでこの曲のイントロを聴いた時、曲に纏わる思い出や感情が一斉にフラッシュバックして自然と涙が出てきたそうです。
 私は実際体験していないのですが、「その感覚分かります」と答えました。

 いろんな感情を複雑に想起させるLauraの音楽は、濃密な文学なのです(?)。





rendez-vous

そのなみだ綺麗すぎて 言葉も忘れてしまいそうで
バッドエンドの果ての夢を拾って
抱きしめるよランデブー


 Laura day romanceの音楽は様々なアーティストや作品の影響を受けています。
 メンバーそれぞれが文学ギークであり、インディーロックから芥川賞作家まで異なる文学作品に感銘を受けてきた4人が集まって、交差する幾本ものルーツを絶妙に調合した独特の世界観を形成している感じです。

 『rendez-vous』という曲も、文学作品の影響を色濃く反映しています。
 この曲の歌詞は井上が『ドリーマーズ』というフランス映画を観ながら書いたらしく、映画を観て彼女が感じたことと作品の雰囲気が上手く融合したような詩になっています。
 中国語字幕のついたMVも香港映画にインスパイアされたようで、とてもユニークです。

 井上花月の書く詩は、女性的です。もっと正確に言えば、“女性作家的”です。
 読後に圧倒され感心してしまうような男性作家の言葉と違って、余韻に儚さを含み、ほんのりと共感が残るような、そんな響きがあります..。(自分で言っておいて何ですが、女性作家的な言葉って何なんでしょうね)

 とにかく、井上の描き出す物語は素敵です。それはもう、打ちのめされてしまうほど素敵です。

 特に『rendez-vous』の詩はいい意味で隙がなく、小説を読んでいて思わず「参った!」と立ち上がってしまう程の見事な表現だけを厳選して詰め込んだような、満足感のある濃密さがあります。





sweet vertigo

君に渡されたフレーズも
次の日じゃただのガラクタで 
多少現実を恐れてる
困り顔のままでステップ


 Laura day romanceの作品にはそれぞれ独特のテーマやコンセプトがあります。

 「架空の街」をコンセプトにした1stアルバム『farewell your town』をはじめ、コロナ禍で浮かび上がった死生観をテーマにした2ndアルバム『roman candles 憧憬蝋燭』、春夏秋冬の季節に連動したEPプロジェクト「Sweet Seasons, Awesome Works」など、曲の制作とリリースの方法にかなりのこだわりをみせています。
 CDやレコードを蒐集している鈴木と川島の影響でしょう。

 『sweet vertigo』は、4連作EPプロジェクトの第三弾『Works.ep』に収録された曲です。
 冬の気怠さを夢幻的なビートに織り交ぜたこのナンバーは、リリース後すぐに話題となり、忽ち彼らの代表曲の一つとなりました。

 「sweet vertigo(甘い眩暈)」というタイトルの通り、ゆらゆらと踊り出したくなってしまうこの曲は私のお気に入りです。





         ***

 Laura day romanceというバンドの成り立ちは、理想的だなぁと思います。

 大学で自分と同じくらい文学作品に熱中する人間と出会い、お互いを尊重しながら曲として形にする。音楽の好きな人なら誰でも憧れるシチュエーションです。

 オタク気質の部分が重なり合ってできる彼らの音楽には、二次,三次創作物的な雰囲気があります。似たような趣味やルーツを持つ人にとって、彼らの作品は特に深く刺さるでしょう。
 音楽素人の私では「たぶん何かをオマージュしているんだろうな」としか感じられず、自分の知識不足を嘆いてばかりです...。

 ただ、Lauraの音楽は正統派ポップの系統も含んでいるため、一度聞いてしまえば誰でもこのバンドのことを好きになってしまいます。
 内輪ノリで完結せずに、上手くメジャーと折り合いをつけてくれるところがありがたいです。










 知れば知るほど深くハマってしまうLaura day romance。今後の彼らの活動を、これからもしっかりと追っていきたいと思います。





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