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朝比奈宗源訳註『臨済録』(岩波文庫旧版)のすすめ

 私がチベットの先生方から伝統的なやり方で仏教を学ぶようになって数年がたち、当初は「この真言を○回唱えなさい」と言われたら疑問を挟まずその通りにして、師の教えと自分の解釈、理解をまぜこぜにしないよう気をつけていたのですが、そろそろ自分で本を読んでも大丈夫だろうと、本を読むことを再開したときに、たまたま当時、古本屋さんで安く売られていた昭和の高僧の法話集などを見つけて、驚きました。
 日本でも、昭和の高僧までは、チベットに伝わっているのと同じ伝統的仏教理解が伝わっていた!と感じたからです。

 そのひとつが、朝比奈宗源師の『臨済録』岩波文庫(旧版)でした。
 伝統的な訓みに従っていて、現在の中国語研究から見ると間違いがある、と新訳に置き換えられたのですが、旧版には旧版のよさがあると思っています。

 臨済禅師が言葉を使うのは、弟子に言葉を越えた境地を気がつかせようとするためです。『臨済録』岩波文庫旧版は、そのことをよくわかっており、訳者自身もその境地をご存じで、そこに読者を導こうと日本語訳をされているのです。

 朝比奈宗源師の『覚悟はよいか』もおすすめで、最近、復刊されて、入手が容易になりました。

 岩波文庫旧版の『臨済録』は、実際には朝比奈師の指示に従い、足立大進師(現在の臨済宗円覚寺派の管長で花園大学の学長でもある横田南嶺師の直接 の師)がお仕事をされたようです。
 新宗教系の出版社から復刻版も出ているのですが、それを勧めていいかどうかわからないので、興味ある方は自己判断でお願いします。

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