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ナーガールジュナ(龍樹)は大乗仏教を確立した存在:オンライン講座「ナーガールジュナ(龍樹)と日本の高僧たち」の紹介

(これはオンライン講座「ナーガールジュナ(龍樹)と日本の高僧たち」の紹介です)

ナーガールジュナ(龍樹)は大乗仏教を確立した存在

ナーガールジュナは古代インドの高僧で、日本仏教の伝統では「八宗の祖」として尊ばれてきました。
「ナーガ」はインドの言葉で蛇神のことで、中国で龍と訳され、「アルジュナ」は樹の名前、あるいは古代の英雄の名前で、ナーガールジュナを龍樹、あるいは龍猛(りゅうみょう)と訳しています。

ナーガールジュナは、仏教の歴史で、大乗仏教を確立した存在とされています。
世界には、アジアを中心にさまざまな仏教の伝統が伝わっていますが、大別すると二通りに分けることができます。
ひとつは東南アジアに伝わるテーラワーダで、阿含経典を釈尊の教えとして認め、大乗経典は認めません。
もうひとつは中国や日本、チベットなどに伝わる流れで、阿含経典だけでなく、大乗経典も認めます。
日本でポピュラーな『般若心経』『法華経』『華厳経』浄土三部経などはみな、大乗経典で、日本人としては、「『般若心経』がお経でなかったら、いったい何が仏教のお経なのか」と思いがちですが、成り立ちを考えるなら、大乗経典に疑問を抱くほうが自然、すなおな反応です。

仏教は、釈尊がさとりを開いて仏陀となって説いた教えで、インドのさまざまな教えのなかで、仏教は医学的な発想の教えとされていました。
釈尊は「これが仏教の教義です。あなたたちはこれに従いなさい、これを信じなさい」と説いたのではなく、ちょうど、お医者さんが患者さんの症状を見て、その人にあった薬を処方するように、相手に合わせて異なる教えを説いたといわれています(対機(たいき)説法)。
ですので、釈尊の存命中には、お経というものは存在しませんでした。釈尊が亡くなられーー普通の人にとって死は苦しみですが、釈尊はさとりを開いて苦しみから解放された存在なので、その死を、インドの言葉で安らぎを意味するニルヴァーナ(涅槃)と呼びます。
釈尊が涅槃に入られた後、教えを聞いたお弟子さんたちが集まって、「私は釈尊がこう説かれたのを聞いた」「私も聞いた、これは釈尊の教えとして間違いがない」と編纂したのが、阿含経典とされています。
大乗経典は、それに含まれていませんから、教えを聞いたお弟子さんの編纂した阿含経典にはいっていないという時点で、釈尊の教えか疑問を持つほうが、むしろ自然なのです。

では、なぜ中国や日本やチベットの伝統では大乗経典を認めるのかというと、それは古代インドのナーガールジュナの仏教理解に従っているからです。
ナーガールジュナは、単に自分は大乗経典を信じるというのではなく、大乗経典を仏陀の教えと認めなければならない理由を論理的に説きました(『菩提資糧論』『宝行王正論』)。
中国や日本やチベットの仏教は、釈尊の教えに従う伝統であるとともに、そのナーガールジュナの理解に従う伝統でもあるのです。

仏教は医学的発想の教えですから、薬の成分やなぜそれが効くのかを理解していないと薬を飲むことができない、ということはありません。
理由を知らないまま、『般若心経』をお唱えしたり、写経することは、もちろんかまいません。
しかし、なぜ私たちは『般若心経』を認めているのか、大乗経典をお経としているのかを知ろうと思うなら、ナーガールジュナの仏教理解を学ぶ必要があります。

日本仏教の諸宗派の実践には、密教、坐禅、極楽往生を願うなど、さまざまなものがあります。それらはみな、八宗の祖とされるナーガールジュナの仏教理解に基づいた実践です。
ナーガールジュナの仏教理解を学ぶことで、表面的にはバラバラにみえる日本仏教の諸宗派の実践が、同じ頂上を目指す異なる登山道、道は異なるものの、同じ頂上にたどり着くものであることが見えてきます。

講座内容

ナーガールジュナ(龍樹)は日本仏教の伝統で、「八宗の祖」として尊ばれてきました。日本仏教の各宗派の実践はそれぞれ違いますが、ナーガールジュナの仏教理解を踏まえることで、それらが同じ山の頂上を目指すそれぞれの登山道であることが見えてきます。

会議ソフトZoomを使ったオンライン連続講座です。期間限定の見逃し配信もあります。
全6回、毎月第四土曜日 15時~16時30分(途中休憩あり)
6月26日(土)開始
(全6回で参加募集しますが、6回で完結ではなく、来期も引き続きこのテーマを取り上げる予定です)

予定内容

・ナーガールジュナと仏教
・釈尊のさとりと、その教え方
・ナーガールジュナに学ぶ仏教入門(『宝行王正論』)
・『中論』の戦略性
・ナーガールジュナと日本仏教(空海・道元・親鸞)

詳細およびお申込みは、passmarketからお願いいたします。

関連する拙稿

「大乗仏教は大乗経典に基づく教えか? : 大乗の仏教理解と阿含経典」『サンガジャパン』25号(特集 原始仏典 : その伝承と実践の現在)
「謎解き『中論』」(上・下)『チベット文化研究会報』2012年7月号・10月号
「ナーガールジュナ(龍樹)の理解を基盤としたチベットと日本における仏教の展開」『比較思想研究』39号

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