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洋服の売り方と買い方の話

服を作るにあたって、「新しい服とお客様にどんな出会い方をしてもらいたいか」も、広義にはブランドコンセプトのひとつです。

D to Cとは、エンドユーザー(その服を着るお客様)への直売のこと。
B to Bは、セレクトショップや百貨店、小売店への卸売。また、どちらを選んだ先にもEC(オンラインショップ)と、お店(セレクトショップor直営店、受注会やPOP UPイベントなど)での販売など、選択肢があります。

売り方を決めるのはブランド側の自由ですが、何を選ぶにしても相対的にメリットとデメリットがあります。

私が選択しているのは「ショップへの卸売」。これは、ブランドにとっては多くの在庫を抱えないメリットがある代わり、利益率は低いです。卸値との差額で当然、直売と比べると価格帯も少しお高めになります。では、それを承知で卸売にこだわるのは何故か。

KONTRCTの服は、できれば購入の前に試着をして欲しいのです。

実際に着てみて、様々なアイテムとのコーディネートを試みるほどに、その良さがわかるデザインでありたいからです。
COLLECTION#001の写真撮影は頑張りました。フォトグラファーさんメイクさんモデルさん、素晴らしいコンビネーションのお陰でルックの仕上がりは上々です。

それでも、モデルではないお客様自身が、袖を通して鏡を見た時の感動をオンラインや写真だけで伝え切ることはできません。

そしてもう一つ。
私は、セレクトショップが好きだからです。

東京の企業で働いていた数年間、担当したのは2社で合計4ブランド。うち3ブランドが「セレクトショップ直営のオリジナルブランド」でした。企画デザイナーなので基本は内勤だったけれど、必要な時には店頭で販売ヘルプもしていました。ここで、国内外の直営店を持たない多くの素晴らしいブランドを知り、セレクトの底知れない面白さを知りました。

洋服、バッグ、靴、ジュエリー、生活雑貨。お店によってはヴィンテージ衣料やアンティーク。有名無名かかわりなく、ショップのコンセプトに沿って厳選されたブランドの商品。そして、そこにある他のブランドの服や雑貨などとその場でコーディネートを組んで試着ができる。

自分が望むテイストを教えてくれる場所。愛すべき、自分だけの1着に出会える場所です。

同じ理由で、三越伊勢丹のRe.Styleや高島屋の style and edit、阪急百貨店のモードフロアなども好きでよく見に行きます。(ブランドごとに区切られた各ショップを集めた専門店街ではなく、テイストごとにカテゴリー分けされた平場になっていて、複数のブランドの服や靴を合わせたり一緒に試着したりできます。)
個人店など、コンセプトのはっきりしたセレクトショップにはまた違う面白さがあります。商品としてだけでなく、お店の世界観を構築するパーツとしての服。言葉やアートでなく、キュレーションで表現するコンセプト。

私のデザインした洋服とセレクトショップで出会ってもらうこと。

そこに生まれる無数のコラボレーションやコーディネートの可能性を思うほど、デザインを考えるに当たっての視野が広がると感じています。

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私は、一人で旅行に行く時は必ず現地のセレクトショップを調べて、自分の好きそうなお店をピックアップしていきます。現地のお店のスタッフさんやオーナーさんと色々話をして、少ない予算で散々悩んで、実際に買うのは1、2着。それでも感動的な思い出と出会いが数多くありました。私の旅の記憶はほとんどその時に購入した洋服やバッグやジュエリーと結びついていて、今も日常的にそれを身につけていることで、訪れた場所や人々と繋がっています。

KONTRCTのお客様になってくれる方には、願わくばそんな出会いを経て、私のデザインした服を着て欲しい。私自身がこれからも、各地の素晴らしいセレクトショップと出会い続けていきたい。好きなことを仕事にしたからには、可能な限り好きだと言える方向に、努力をしたいと思っているからです。

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