放課後、魔法少女V
第10話
「新学期は嵐の予感?
二人の大喧嘩」
私、マキ。魔法少女やってます。なんと、とうとう三つ目のマジカルエッグ。グリーンタートルをゲット。残るはあと一つ、ホワイトタイガーのマジカルエッグ。魔法界、人間界を守るためにも頑張ってゲットしちゃうよ。なんとか海にも行けたし、魔法少女としても小学生としても、最高の夏を過ごせて本当に幸せ~!今日から、新学期。どんなことが起きるのかな?どんなことが来ても、みんなで協力して頑張っちゃうぞ!
「おはよう。マキ」
「おはよう、うおちゃん」
あれ?うおちゃんちょっと肌焼けてる?
「うん?どうしたの、マキ?」
「いや、うおちゃん肌焼けてるから海にでも行ったのかなって」
「あぁ、野球クラブの取材に行ってたから。けっこう日焼け対策してたんだけど、それでもちょっと焼けちゃったよ。マキは夏休みなにしてたの?」
「うん、私はね、
「おはよー!!」
私が海の話をしようとしていると、後ろからほづみが大声で挨拶をしながら、抱き着いてきた。
「ほ、ほづみ。おはよう」
「えへへ、久しぶりに会ったから嬉しくて抱き着いちゃったぜ。なんちて」
ほづみは、なにやらやたらとテンションが高い。毎朝そうだが、今日は特にうるさい。久しぶりとは言っても、昨日一日会っていないだけで、他はほぼ毎日会っていたんだけど。
「・・・おはよう」
あれ?うおちゃんがちょっと不機嫌?いつもほづみが割り込んできても特に気にしていない様子だったのに。どうしたんだろ?
「うおちゃん、大丈夫?」
「えっ?なにが?」
「ううん、私の気のせいならいいの。それより、私の夏休みはね、」
「夏休みの話か?海行ったよな!」
「海?マキとほづみの二人で?」
「ううん、ウメコも一緒だったぜ」
「そっか。」
すっかり私が話すタイミングを執られてしまった。それにしても、今日のうおちゃんどうしたのだろう。心なしかちょっと元気がないように見えるんだけど。
「うおちゃん、やっぱり今日おかしいよ。体調悪いの?」
「えっ、だからそんなことないって。さぁ、早く学校行って新学期一番のウメコ様の姿をカメラに収めなきゃ!マキ、走るよ!」
「えっ、ちょ、うおちゃん」
そのことが気になっていただけなのかな?うおちゃんは、私の手を引っ張って元気よく学校まで走っていた。
「・・・俺は無視かよ・・」
学校に着くと、ウメコさんがいつものようにファンに囲まれながら下駄箱に向かって歩いていた。私の横で、うおちゃんがパシャパシャとその姿をカメラに収める。
「はぁ~、やっぱり新学期のウメコ様は1学期に比べてもっと素敵になられて、カメラに収めきれないわ~」
うおちゃんが興奮気味にいつものように写真を撮っていると、ウメコさんがこちらに気づいて、軽く手を振った。思わず、私も振り返す。ウメコさんが、それに対して軽く微笑む。
「・・サンキュ、マキ」
あまりの神々しさに、うおちゃんは鼻血を出して少しの間気絶していた。
教室に戻ると、先に教室に来ていたほづみが私の席に座っていた。
「あれ?ほづみ先に来てたの?」
「うん、だって二人とも置いて行っちまうしさ。また、ウメコ撮りに行ってたのか?」
「そこ、マキの席でしょ?退いてよ」
うおちゃんが、少々怒り気味にほづみに声をかけた。ほづみも、ムッとしたのか言い返す。
「はぁ?なんでうおが偉そうに言うんだよ」
「偉そうになんて言ってない。いいからそこ退きなさいよ」
「嫌だ。なんだ?何怒ってんだよ」
「怒ってない!私は当たり前のことを」
「いつもそんなこと言ってこないだろ?それに、俺置いて行って先に行ったくせに謝罪もないのかよ」
「じゃあ、私も言わせてもらうけど。毎朝人が話してるのに迷惑なのよ突然後ろから抱き着いてきて、マキも迷惑してるでしょ?」
「はぁ?じゃあその場で嫌って言えばいいじゃねーか。マキもそう思うだろ?」
だんだん二人の怒りが、高まってきた。やばい、どうしたら。そもそも、なんで二人ともこんなに不機嫌なんだろう。
「ええっと、」
どう声をかけていいのかがわからない。片方の味方をすれば、もう片方が爆発しそうだし。二人とも新学期からどうしちゃったの。私がこう悩んでいる間も、二人は抑えきれないのか、ガンガンと言い合っている。もうすぐ先生も来ちゃうし、どうしよう。
「そこまで!!」
突然、私たちの頭上で大きな声が聞こえた。さっきまで、言い合っていた二人もシンとして、その声の主を見る。私も、ごちゃごちゃしていた頭の中が真っ白になって、ぽかんとした顔でその声の主を見た。
「新学期からケンカなんて、どうしたんだ?もう授業始めてもいいか?」
その声の主は、見たこともない男の先生だった。ただ、先生のおかげかわからないが、二人は、黙って席に着いて行った。
「君も席に着いてくれるかな?」
「は、はい・・」
このまま、怒りが収まって二人が仲直りしてくれるといいんだけど・・・。
放課後まで二人はずっと黙ったままだった。私もなんとなく声が掛けづらくて、授業中も休み時間も誰も声を発さなかった。ほんと、どうしちゃったの。二人とも。
「マキ、悪い今日はもう帰るわ」「ごめん、私も帰るね」
二人は、私にそれだけ言って先に帰ってしまった。私も帰ろうかと思ったけど、やっぱりこのままなんて嫌なので、ウメコさんに相談しようと思い六年生の教室へと向かっていた。
「あら、どうしたの。マキそんな顔をして」
「ウ、ウメコさん・・・」
私は思わず涙を流していた。ウメコさんの顔を見たら、安心したのか不安が一気に押し寄せてきた。
「わっ、私・・・」
「いいのよ。今は思いっきり泣きなさい」
ウメコさんに、背中をトントンされながら私は周りを気にすることなく、わんわんと大声で泣いた。