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渡り鳥を待つように

 家の目の前の川に、カモ達が戻ってきた。

6月あたりからあまり見かけなくなっていたので、

どこかに渡っていったのだろうか、カモってそもそも渡り鳥だっけ?

などと考えながら、少し寂しく感じていた。

 カモは意外とかしましい鳥だ。

朝だろうが夜だろうが、構わずクワックワッと鳴いている。

大雨で川が増水したときなどは、大声で鳴きながら濁流に流されているのをよく見かけた。

 先日の台風の日、久方ぶりにその声を聞いた。

その翌朝、仕事に向かう途中でふと川を見遣るとカモ達がいて、

やぁやぁ久しぶりだねぇと、やっとその顔を見ることが出来た。

 彼らは暑い夏の間、どこに行っていたのだろう。

私達が、オリンピックをなんだかんだ言いながら観ている間、

ワクチンの予約が取れず大騒ぎしている間、

会いたい人になかなか会えず、やきもきしている間、

カモ達はそんなことはあずかり知らず、どこか涼しいところで暮らしていたのだろうか。

 私は朝晩いつでも彼らの声を聞いていたから、

なんだか勝手に仲間のようなつもりでいたけれど、

結局彼らはカモで、私は人間で、彼らが夏の間どこにいて何をしていたか、なんてことは知りえないのだ。



 お会いしていない間、あなたはどこにいて何をしていますか。

外に出て誰かに会いに行くことが、歯磨きをしたあとに蜂蜜入りのホットミルクを飲むくらいの罪悪感で済むようになったら、

是非また、あなたの声を聞かせてください。

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