方言ハンコ

広島で個展をするにあたって、何かわくわくすることはないだろうかと考えていた。
そんなとき、ファンの方から「方言でハンコがあったら集めちゃいます」とメッセージをもらう。

方言のハンコかぁと想像する。
2秒後には「うん、おもしろそう!」という結論に至った。
まずは情報収集だと思い、作ろうと決めた1分後にはインスタのストーリーに「広島の方言を教えてください」と流していた。

「たわん」「たいぎい」「ほうじゃな」
「たう」「はぶてる」「じゃけん」

広島色に染められた言葉たちを、うっとりとした気持ちで眺める。わたしは言葉や文字が好きなので、方言にも興味があるんだ!というちいさな発見もあり、ますます嬉しくなった。

現地の人に食を教えてもらい、その土地の料理を食べることはあるだろう。
方言を教えてもらい使うことも。
けれど、それでグッズを作ろうとまではなかなか思わないはずだ。
ふふん、と得意げな気分になる。

教えてもらった方言の中で、自分の好きな言葉を選び取っていく。「たわんの~」「なにしよるん?」「ほうじゃね」
最終的にその3種類に決まった。

しかし、ここでちいさな疑問が持ち上がる。
広島の方言を、広島の人が本当に買ってくれるのだろうか?そもそもこのハンコ、どこに押すのだろう??
先ほどまで得意げな気持ちがみるみる萎んでいく。どうしよう勢いにまかせてたくさん作っちゃった…。

しかし蓋を開けてみると、方言ハンコはよく売れた。しかも広島の人たちに。

「どこに使ってくださるのですか?」とは怖くて聞けなかったが、きっとポンっと心地いい音を鳴らしながら、どこかに押されているのだろう。

広島を超えて、どこまでも運ばれてゆく様子を思い浮かべると、ふふっと笑みがこぼれた。

実際に作ったハンコ↓

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