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スポーツとデータに関する一般向け科学読み物を書きました

こんにちは.名城大学で教員をしている小中英嗣(こなか・えいじ)です.

実はこの1年本を書いていまして,2024年早々に発売されます(一部地域の書店ではすでに店頭に並んでいるそうです).ばんざーい.


どんな本なんですか?

私がここしばらく専門にしている,「スポーツとデータ」をテーマとした一般向け科学読み物です.構成はこんな感じ.

  • 第1章 野球とセイバーメトリクス ――スポーツデータ分析のパイオニア

  • 第2章 サッカーのデータ分析 ――スポーツデータ分析のフロンティア

    • 1章と2章ではスポーツにおけるデータ計測・分析のパイオニアとフロンティアである野球とサッカーそれぞれの歴史と現在を振り返ります.

  • 第3章 3ポイントシュートの革命 ――ルールが誘導する動作

    • 3章ではスポーツを魅力的にするためのルール変更について,バスケットボールの事例を筆頭に様々な競技・種目について紹介します.「どのような行動をどのような量に結び付けるのか?」は,スポーツにおける本質の一つです.

  • 第4章 「順序をつける」巧みな方法 ――様々なレーティング・ランキング手法

    • 定量的な実力評価(レーティング)や順位付け(ランキング)の方法とその数学的な仕組みについて解説します.pythonで動かせるサンプルプログラムも配布します!(サンプルプログラムは無料!!)

  • 第5章 予測モデルの腕試し ――実際のスポーツ大会を予測してみよう!

    • 実力評価は結果予測に直結しますので,その実践事例について紹介します.一部はドキュメンタリー風味です.

「科学読み物」ですので,数学はかなり控えめにしました.大半の内容は数学の知識が無くても面白がってもらえると思います.ただし,数式を使わないとかえって分かりにくくなる考え方や,具体的なランキングの計算方法については高校~大学初年度程度の数学を含みます(ポアソン分布と,行列を使った最小二乗法が多分最難関ですが無視しても大勢に影響はありません).

目線は一貫して「スポーツを観戦するファン」からのものです.トレーニングには生理学を含めた人体に関する知見が必要ですが,それらについては不勉強ですのでほとんど触れていません.

想定している読者像

スポーツ観戦が好きな方,どなたでもお楽しみいただけると信じております.特に球技(野球,サッカー,バスケットボールなど)への言及が多いので,それらのファンの皆様にはおススメです.近年プロスポーツでは中継中に言及されるデータが増えていますので,その計測や算出に関する歴史を豆知識としてお楽しみいただけます.

本書と著者の特徴

かなり多くの競技・種目について言及できたのでは?と自負しております.オリンピックがあると適当な競技の中継をぼんやり眺めてきた人生がここで役に立つとは思いませんでした.私自身はほぼ競技経験がありませんが,その代わりの観戦経験の幅広さを活かせたと思っています.私の観戦経験はnoteにもまとめています.

また,計測・制御工学や計算機科学の訓練を受けている,現役理系大学教員が書くスポーツ本,という特徴も出せたと思っています.あんまり無いタイプの本だと思っていますが,類書があったらこっそり教えてください.データ計測の原理やデータ処理における計算機科学の役割について,類似書籍に無い観点と詳しさで書けたのではないでしょうか.

研究者の卵としてほんのちょっとだけサッカーシミュレーションに興味を持っていた時期もあり,それについては以下の記事で書いています.


執筆経緯など

本書,なんと出版社はあの技術評論社さまです.マジか.

新しいソフトウェア技術の勉強に迫られたときに買って写経するための分厚い解説書をばんばん出している出版社…というイメージが強かったんですが(偏っていてすいません),そういえば一般向けの書籍もありましたね.出版社からの執筆オファーという栄誉ある機会,次があるかわからないので,依頼のメールには即快諾で返答しました.

私はここ数年,発表の度にspeakerdeckでスライドを公開しているのですが,そのうちの一般向け講演会の資料が編集さまの目に留まったようです.

COVID-19の騒ぎがあった2020年以降,在宅勤務でこつこつまとめていた資料です.ちょうど当時弊学科あてに一般向け講演会の依頼が複数あり,分野のキャッチ―さを活かして方々で話しまわっていた時期でした.インターネット経由で案件が舞い込んでくるとか都市伝説だと思っていたんですけど,人間長く生きてみるものですね.みなさん,成果物は気楽にネットに公開しましょう.

あと,宣伝ですが,本書の内容や上記資料をご覧になって,この内容での講演会を企画したい!という方はどうにかして連絡をください(大学の授業,学会大会での講演などであれば私に直接,それ以外のイベント・出演・高校生向け模擬講義などでしたら名城大学の広報関連の部署にお問い合わせください).


執筆環境

自宅と大学で切り分けて執筆していました(在宅勤務時に自宅のノートPCで執筆,大学では原則書かない).2022年の11月に企画が動き始めて脱稿が2023年8月ごろ.執筆ソフトはLaTeXで,諸々のコマンドも含めて16万文字くらいの.texファイルを生み出しました.執筆終盤はplatex1回通すのに何十秒も待つまでに成長.参考文献の.bibデータベースや,本文中のグラフの作図用のMATLABスクリプトも含めるともっとキーボードたたいてますね.

これが3冊目の出版なのですが,前2冊は教科書&底本となる資料が十分あった状態で出版作業に入っているので,今回が一番作業の密度が高かったです.全体の構成は企画時点で建てられていましたが,実際に執筆しながら資料を集めて作図して…はそれなりに大変でした.楽しかったですけどね.

さらにさかのぼる執筆経緯

これは完全に余談なんですが,私は学生時代クイズ研究会に所属しておりまして,そのころからスポーツ関連の問題を作るのが好きだったんですね.定番は名選手を覚えることなんですが,どうもマイナースポーツであったりルールの変遷をまとめた本を読むのも大好きでした.スポーツの問題のみ200問くらい作って会員内で1日楽しんだこともあったなぁ,とつい最近思い出しました.浅く広く時には深く,という知識の広げ方はクイズの経験によって培われています.

そもそもスポーツ観戦は幼少期からの父親との思い出であり,インターネットなどかけらもなかったあの時代における数少ない世界への窓でもありました.このように,スポーツは私にとってはただのスポーツではない何かであった,ということが本書執筆の遠い遠い経緯です.このことをじっくりと振り返り,かつ私の人生における一つの到達点になったであろう本書の執筆機会をいただきました,技術評論社編集佐藤さんに厚く御礼申し上げます.また,いろいろと迷惑をかけた家族,私のスポーツ趣味に多大な影響を与え続けている友人諸氏,そして本文書をお読みいただいた皆様にも御礼申し上げます.(お買い上げいただいた方には本書内で再度お礼を申し上げます(笑)

本,長く読まれると,いいなぁ.(たくさん売れるともっといい!)

追記:作図プログラムの一部を公開しました.

本文中でMATLABについて言及したところ,Mathworksさまからリポジトリ公開はどうですか?とご提案いただいたので慌てて整備しました.githubアカウントはこのために作成.

書籍内の図(の一部)とほぼ同じものを出力できます.MATLAB作図のサンプルとしてもそこそこバリエーションがあるものになっているので,書籍をお持ちの方やMATLABに興味がある方は遊んでみてください.無料のMATLABアカウントが必要ですが,ブラウザ上で動くMATLAB Onlineで利用できます.



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