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論文が出版されました:「バスケットボールの個人攻守貢献度の開発」


論文が出版されました.2023年3本目です(2本目と3本目は同時出版).やったぜー!.

Spoana #14で宣伝した論文のうち1本です.

主著者は修士論文としてこの研究を進めてくれた卒業生,第二著者が私,の構成です.この論文は私が指導した修士論文では初めてのスポーツデータ分析を題材としたもので,その意味でも感慨深いものがあります.発表でシンガポールにも行けたし.

守備の評価は難しいのです.

バスケットボールは得点を多く取った方が勝ち,のスポーツです.ので,基本的に集計される値(スタッツ)は得点に関わる出来事の回数や割合です.得点はボール保持し,シュートする必要があるので,スタッツは原則として「ボールに最後に関わった人」に記録されます.

これで困るのが守備の評価です.大きな選手がゴール下にいるとそれだけでシュートの邪魔になるのですが,ブロックやリバウンドをしない限りはこの大型選手には何もスタッツが記録されません.また,攻撃でもスクリーンをうまくかけることができた,3ポイントを狙うコーナーに立って守備を広げた,などの貢献も定量化が非常に難しいです.

そこで本論文では以下の方法で「すべての選手の攻撃・守備それぞれでの勝利への貢献の定量化」を試みました.

  • 得点差と残り時間からどの程度有利かを予測勝率として定量化する.

  • プレイごと・1秒当たりの予測勝率の変化を,コート上の全選手に分配する.攻撃と守備を分けて評価する.

  • ラインナップ(コート上5人)ごとに評価する.

  • 個人の評価はラインナップ評価から算出する.

  • 最終的に,ある選手について「攻撃/守備でコート上に立っている1秒当たりの予測勝率の変化量の期待値」が求められる.

    • さらに,「その選手が含まれていないラインナップの評価」と比較することで,出場の有無がチームにどのような影響を与えるのかが定量化できる.

2018-19シーズンの評価値を可視化したページも作成しました.

BリーグのPlay-by-playデータを見つけてからずっとやってみたかった手法です.無料で取得できるデータの中では最も詳細なもののひとつで,これを活用した提案手法を論文にできました.バスケのメトリクス開発はひと段落かなぁ,という気分です(実はこの前に類似の手法を試していて,それ論文化をさぼっているのですが…)

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