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危険ですが、黄色い線まで下がるかどうかは自己判断でお願いします

運転免許の更新に行った。
もっと早く行こうと思っていたのに、気づけば失効期日が目前に迫っている。

1度あったタイミングを生理前の肌質の悪さを理由に見送ったらそこから忙しさが重なり、結局また周回してきたボロボロ肌期に更新せざるを得なくなってしまった。何故かいつもこうなんだ私は。これを仕方ないねで片付けるから成長も変化もしない。

新しく受け取った免許証の顔写真は、肌の色と目つきがものすごく悪かった。そのことよりも、免許証に写っている3年前の自分の肌質がこんなに良かったんだということに驚かされる。当時はコロナ禍で家から出ず、大学生活も折り返して授業もほとんどなく、思えばあの頃がいちばん身体的に「健康」ではあったのかもしれない。

当時していた就活を手堅くこなして週休完全二日制の内定を得ていたら、当時付き合っていた年上の恋人とそのまま関係を続けていたら、もしかしたら今頃には安定した生活基盤や、よもや結婚も視野に入れていた可能性だってある。ただし書いていて笑えるくらい想像ができないから、あるのは「可能性」だけで、決して現実ではないんだろうな。同じような解像度で、100年前に生まれた俳優と会う可能性や、天才的な語学力を持った自分の像を描けてしまう。可能性は無限大だって、具体例が思いつかないくらいにはうたい尽くされている。

新卒社会人のレールを降りてから、随分と気楽な性分になったように思う。齢25にもなって未だに自活もできない身分にいながら、奔放に生きることを以前ほど躊躇わなくなった。あたしに迷惑かけられそうな人は自衛して勝手に離れてくださーい、危ないかどうかは皆さんの自己判断でお願いしまーす、の気持ちで渡り歩いている。そんなスタンスでも、意外と近しい距離を保ってくれる人がいるもんだということにも最近気づいてきた。たすかるね。

毎日毎日考えているのは、将来のことに見せかけた、目の前に広がっているだけのおそらくは小さな問いで、身体は使っていないのにすぐ眠くなるからすぐに寝落ちして、でも毎日眠くて、数年前から3倍くらいに増えた喫煙量でごまかしながら日々を繰り返している。

それでも私の喫煙量なんてかわいいものです。昭和期の煙草広告なんかを見ていると、「煙草は1日10本ほどを目安に吸いましょう」とか、「女性の喫煙は、一度深く吸い込んで満足したら、あとはふかすくらいが美しいのです」とか、一応は健康を考慮しつつ、吸わない選択肢なぞハナからないようなものばっかりだもん。良い時代だよなあと、ここからだとそう見える。今よりも規制が緩くて、でもその頃に女として生まれるのはなかなか苦労が多そうで、それは嫌だなと思う。時代錯誤?そうですね。当時を実感として知らないから憧れるんだと言われたら、まぁその通りではある。でも美しく見えるのは事実だし、今より良くも悪くも自由な時代であったのも本当じゃない?ねぇ?

映画を勉強しているというと、大人たちはたいてい昔の映画館の話を始める。今の映画って高いよね、自分が学生の頃は映画館って入退場自由で、入れ替えもないからずっといられたけど、今は大変でしょう、昔の学生はいろんな映画を見ていたけど、最近の学生は全然映画を見ていないよね、もっとたくさん見ないとだめだよ
うるせーとは感じるけど、私は同世代と比べても映画を見始めた時期が遅いから、たとえ数十年前に生まれていたとして、それほど多くの映画を見られたとも思えなくて、そうですねーで済ましている。東京にいる限りは今も名画座はあるにはあるし、大人たちの世代と違って配信だってある。映画体験は変わっているだろうけど、なくなったわけじゃない。なにより、古い映画で、まだ言われていないことがたくさんあるじゃないか。

ないものねだりはキリがないから適当なところで打ち止めにするしかない。欲望だけつらねれば、小さい頃から映画を見ていればよかったし、さらに言えば1960年代に生まれたかった。免許証だってもっと綺麗に写りたかった。マジで肌のくすみがヤバすぎる。ほんとにどうなってんのこれ。せめてもう少しビタミンとか摂取しておけばよかった。

マイナンバーカードが登場してくれたおかげで、最近は身分証明で免許証を出す必要がないのがせめてもの幸いで、持ち歩きこそすれ、次の更新日までは日の目を見ないところにいてもらうことにしよう。あぁでも、裏の臓器提供の欄に記入しようと思ったまま忘れてたな。あそこだけ記入しようかなあ。

取り出してみて、あら意外と悪いと言うほどは悪くないんじゃない?と咄嗟に思おうとしてみたけど、やっぱり望んだ写りではないなと思い直して、裏面にしっかりチェックを付けたことを確認してから、財布にしまった。また3年後に会いましょう。

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