見出し画像

発明の「種類」

皆さんの周りのそこかしこに様々な発明が存在しています。
スマートフォン1つとっても、スマートフォンを構成する各種の部品に発明が含まれていますし、様々な機能を実現するプログラムにも発明が含まれています。普段使う物やサービス、そして食品等、実に様々な「発明」が存在しています。

ただ、「発明」と一言で言っても、実はいくつか種類があります。


発明の種類

それが、「物」の発明と「方法」の発明です。

更に「方法」の発明は、「単純方法」の発明と「物を生産する方法」の発明とに分かれます。

しかし、特許法の中には発明の種類は直接的には定義されていません。では、どこから「種類」の話が出てくるのでしょうか?

特許法第2条3項の発明の「実施」の規定

実は「実施」の規定から出てきます。特許法第2条3項には「発明の実施」について以下のように規定されています。

「この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
二 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為
三 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」

つまり、発明の種類ではなく、発明の「実施」の規定で「物」の発明、「方法」の発明、そして「物を生産する方法」の発明を登場させ、各発明の「実施」がどのようなことを指すのかを規定しています。

ここから「発明の種類」の話が出てくるのですね。そして、種類によって「実施」の内容が変わってきます。これが特許権侵害においては重要なポイントになってきます。

例えば、仮に「発光ダイオードを点滅させて所定の情報を送信する方法」というような発明について特許が成立した場合、その方法をビジネスで使用すれば当然に特許権侵害になります。しかし、発光ダイオード自体を製造する行為や発光ダイオードを販売する行為などは基本的に特許権侵害にはなりません。「実施」の内容が異なるためです。

このように発明の種類によって侵害を問える実施の射程範囲が異なってきます。

発明の種類の例

そして、実際に特許出願した発明がどの種類の発明であるかは、基本的には「特許請求の範囲」の記載を見て判断できます。

例えば、以下のような感じです。

・「AとBとを備える料理器具。」や「CとDとを含有する化合物。」
  →「物」の発明

・「Eステップと、Fステップとからなる料理器具の使用方法。」
  →「方法」の発明

・「Gステップと、Hステップにより得られる組成物の製造方法。」
  →「物を生産する方法」の発明

発明の種類に応じて「実施」の内容が変わるので、特許権侵害を判断する場合に発明の種類の確認は非常に重要です。

そのため、特許出願する際には、通常、様々な実施態様を捕捉できるようにするため、「物」、「方法」、場合によってはさらに「製造方法」の請求項を作ったり、その他にも実際のビジネスに合わせて「物」や「方法」を様々な態様で捉えることができる請求項を作ったりします。

この点、他の弁護士、弁理士との共著ですが、日本大学知財ジャーナルVol.16(2023年3月発行)の「国境を越えたサービスの提供と特許侵害 属地主義との理論的整合(ドワンゴ事件・第三者意見の提出)」というタイトルの論文の中に「2 「サーバ~クライアント型」システムを権利化する特許出願書類作成実務」の項で少し記載してありますので、興味があればぜひご参照ください。


東急目黒線から三田線直通で御成門駅近くの今知的財産事務所!
 弁理士 今 智司
ホームページ http://kon-ip.jp/

東急沿線の商標屋さん!ビーエルエム弁理士事務所
ホームページ http://blm-ip.jp/index.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?