春の夜の夢

まだまだ昼と夜の気温差が大きい4月中頃。

夜の冷たい空気を胸に溜め込んで一気に吐き出す。身体の中に溜まったこの重い雲の塊も一緒に吐き出せればいいのに。しかしそれらは吐き出されることはなく、寧ろ胸の奥の方で存在感を増していく。

あの時こうしていれば、なんて夢見心地に思いを巡らす。歴史にたらればはないし、つまり人生の道のりにもたらればはない。それでもたらればを考えてしまうのは想像力、創造力をもつ人間という種族だからなんだろう。

夢は記憶を整理する役割を持つと言うけれど、思い出を整理してはくれない。全てが夢のような現実で、確かにそこにあったはずのものはもうない。今になってはまさに夢のような空間だった。

春は出会いの季節。だからこそ、記憶の底に沈めたいことでさえ夢に見てしまうのかもしれない。

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