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〇チとの遭遇

なんか字を隠すとエッチな感じですね笑
残念ながら、全く色っぽい話ではありません。

学生は総じて貧乏である by私

学生で金持ちなのは、実家が太いか夜職かなんだか上手い事良いバイトやってるかで、総じて貧乏である。
私も金の使い方がなってないせいもあるが、貧乏な部類だった。
先ず、エアコンなどない。何なら京都のあの暑さなのに扇風機すら持っていなかった。買った所で電気代が怖いので使えもしない。
夜は大概、TVだけを付けてるかごみ置き場から拾ってきた、電気スタンドがせいぜいの灯である。
思い起こせば、ローボードもガラステーブルも粗大ゴミから回収した物だった。そもそも、夏に電灯点けると暑い。
そして冬は冬で、底冷えで有名かつ、市内の中でも標高の高い位置にも関わらず、電気ストーブはあったが、効率が悪いのでほぼ不使用。
外も中も、服装はほぼ一緒。寒い時は毛布か布団を被る。
そして、シャワーだけが部屋に付いていたが、能力がとんでもなく低い。
昔、おばちゃんの家の台所に鎮座してたあれ。湯沸かし器。
冬は温まろうにも、お湯全開にしてせいぜい適温の打たせ湯程度。
ボタボタと、情けない状況になるだけ。
そして、それでも頑張って使ったら部屋が一酸化炭素が充満してた。
即、頭痛がした。
そのくせ、変にデザインに拘ったのか窓は小さい横向きに開く窓と、押し開きに下が15㎝ほど開く二つだけだった。

それはあの夏に来た

余りに暑いのでセキュリティ<風通しとなり、ドアは全開のまま。
どーせ入った所で、金どころか金目の物もない。
常に財布に入っているのは、中学生レベルのお金だし。
汗臭い学生が半裸で寝ているだけだ。
実際、夜中に友人が勝手に入ってきていた事はあったが。

そして、そんな小さな窓では風通しが悪く、また風の抵抗になりそうな物を見つけてしまった。
網戸がまだあった。
開け放った。少しは違う感じになった。
もう、この部屋には外部から侵入するにあたって、何の隔てもない。
つーつーのスースーである。
田舎の家でもさすがに玄関の戸を閉めたりするだろうに。
要は、京都で沖縄方式で暮らしていた、と言えば分かりやすいだろうか?
もう、平安時代と何の進歩もない状況だ。
だが、我が家よりそれで暮らしてきた沖縄の民家の方が、一枚上手である。
蚊帳と言うシステムがある。
その沖縄を遥かに文化レベルで下回る我が下宿部屋。
そんな過酷な状況でも、アルコールレスで寝てしまう若さが懐かしい。
取り敢えず、毎日卵掛けご飯1合と納豆だけで、腹を満たしておけば寝れた。

そして、運命の朝

一番気持ちの良い早朝に響き渡る、聞きなれぬ音。
ブゥゥゥゥゥーーーーーーー
この時間を一番逃したくないのに、何だ?と。
まあ、そもそも侵入OKにしか思えない状況なので、文句を言う筋合いではないのだが。

スズメバチ来襲

多分、10㎝近いサイズだったと思う。
目を開けた時、天井近くを周回警戒中だった。
絶対に目が合った。
私「え?マジ?ハチ?でか!!」
ハチ「え?マジ?人間?でか!!」
異種交流の瞬間だった。あれは人類初めての記念すべき瞬間だったはずだ。現代の様に動画が録れれば、世界的にバズったこと間違いなし。

巨大スズメバチも多分窓から入ってはみたものの、そのちっこい脳みそでは来た道が分からんらしい。
あっちかなー、こっちかなーと周回を繰り返す。
取り敢えず、私は敵ではないと認識されたいので、そっとベッドから降り、匍匐前進で刺激しないよう、玄関まで行った。途中、小銭とマルボロとライターを握りしめ、
もうこれで俺たちは終わりにしよう。
荷物をまとめて、俺が一服してる間に出て行ってよ。

と、本当にマルボロが似合う奴のように、ビビり散らかしてる事を隠しながら、ニヒルにサムアップでスズメバチを部屋に置いて出てきた。
きっと、あいつなら分かってくれるさ…
でも、ハチってそもそも女王以外オスじゃね? BL的な感じ?

だが、俺との新生活を望んだスズメバチ(♂)は、情が深かったのか、踏ん切りが付かなかったのか、タバコ2本と缶コーヒー分の時間では出て行ってなかった。
俺って、悪い男だな…(♂)が虜になっちまったようだ。

別れ際(キンチョール)が悪いと反撃をくらって、こっちがダメージを受ける可能性がある。自分は傷つきたくない悪い男なのだ。
だが、最後まで優しさを捨てられない俺は、そっとテーブルにあった団扇で風を起こし、窓へ窓へと追いやった。
もう、それは種を超えた寛一お宮の金色夜叉の光景だ。
それでも名残惜しく振り返り、振り返り(ただの周回運動)やっとのことでこの邂逅から去ってくれた。
お陰で涼しい朝寝の時間はなくなり、汗だくになった。(また寝たし、学校には行ってない)

ハチとの遭遇

これは貧乏が引き起こした、京都の夏の夜に生まれた種を超えた奇跡の愛の物語である。
もちろん、それから網戸を開ける愚行は一度もしなかったと後の世まで語られることとなる。


自己肯定が爆上がりします! いつの日か独立できたらいいな…