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航空機事故から学ぶ:Boots on it!

1997年1月9日、米国Cincinati空港からDetroit空港へ向かっていたComair3272便(Embraer120型機)は、FL190から磁方位050°でRwy03Rへアプローチしていた。3:06pmに速度190ktへ減速し、標準降下のチェックを行って、先行するCactus50便(A321)との間隔を開けるため、更に150ktへ減速した。

左へ90°旋回してthrottleを上げながら自動操縦装置を解除したところ、速度が上がらず左旋回が解除出来ないまま錐揉み状態に陥った。同機は滑走路から22NM離れた荒れ地に墜落した。


NTSBの調査官はBlackboxを回収して本部へ送付し、Detoroit空港の管制官と面接した。American West航空50便の事故後であったため、先行するA321型機のwake vortexの影響を想定した。NASAへも空気力学的な影響を調査依頼したが、同機は事故機の1,500ft以上上を飛行しており、NASAはその影響を否定した。

またASA航空のEmbraer事故ではプロペラ内部のクウェルが摩滅によってProp-featherとなって墜落したので、その可能性も検証された。事故機のプロペラは墜落地点から遠くに飛ばされており、回転していたことは明らかであった。

1994年10月にAmerican Eagle機がIndiana州でicingによる墜落事故を起こしており、Comair機でも墜落寸前で機体を回復できたことがあったので、同様な可能性について検証された。NASAの解析では、低速でゆっくり旋回する状態では、薄いicingでも危険なことが解明された。

事故機の機長は"Buy the book"タイプの真面目さで、翼前面がice bridgingするまではbootsを作動させない「神話」を実践していた。プロペラ機ではすぐdeicingすべきであるが、Embraer社の規定ではfirst signで直ぐ作動させるとあるところ、Comair社のmanualでは1/2インチ成長するまで待つこととなっていた。

FAAはEmbraer120型機で、同様な事故を何度も記録して把握していたが、何の勧告も出さずに看過していた。事故機は速度150ktまで減速了承した時点でdeicingすべきったと、NTSBは結論した。

主翼がicingする状況は、機種によっては操縦席から目視することができる場合がありますが、どのタイミングでdeicerを作動させるかは、間違った認識が流布していました。つまり、ある程度凍ってからでないとバリッと脱落しないという航空伝説であったのです。僅かな着氷でも、速度が出ていれば、翼上面からの気流の剥がれは重大ではないかも知れませんが、低速で旋回でもしていれば、直ちに失速・錐揉みのリスクがある訳です。

自分も小型機のIFRの技能審査で、「ある程度のicingを経験してごらん」を言われたことがありますが、低速や旋回は回避することが身のためと痛感した事故でした。


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