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「一人で悩むな!救ってくれる人は必ずいる」資金調達に苦しんだ経営者 善井靖さんインタビュー(前編)

コロナウイルスの感染拡大防止による緊急事態宣言は、かつてないほど日本経済に大きな影響を与えています。いつ収束するかもわからない事態に、「これからどうしたらいいのか?」と、八方ふさがりになっている中小企業の経営者も多いのではないでしょうか?

私は関内にあるシェアオフィスG Innovation Hub Yokohama(以下G)に勤務し、受付や運営のお手伝いをしています。Gの入居者さんは専門的な知識を持った方が多くなおかつ業種も幅広い、私にとっても刺激的で楽しい場所です。そんな入居者の有志の方が、自分たちの専門性を活かし地元の中小企業を応援するメディアを立ち上げようと動き出しました。

私は専門的な知識はないですが、何か役に立てることはないかと思い、かつて、大きな困難を乗り越えた経営者をインタビューする企画を担当することになりました。Gの入居者で東日本大震災当時秋田で会社を経営していた善井靖さんです。
今や、観光庁から派遣される民間専門家で人気ナンバーワンのアドバイザーで、全国を飛び回っていますが、実は震災以降何度か倒産の危機があったといいます。当時を振り返ってお話をききました(3月下旬取材)。

インバウンドビジネスで好調一転、アプリリリース直前に震災発生

2030年のインバウンド訪日客6000万人を目標に掲げる日本は、国を挙げて施策を展開し、観光地域づくりに力を注いでいます。そこで求められる専門的なノウハウを提供するのが2017年に設立された観光マーケティング協会です。創業者の善井さんは、2000年から観光再生に携わり、2010年には秋田観光アドバイザーに着任。中国やASEAN各国に衛星放送を通じ番組配信しながら、秋田産品の販路拡大と、インバウンド旅行開発を仕掛けてきました。同年10月には秋田営業所を設立、地元で20人採用します。翌春には観光客向けのアプリのリリースを控え、順調に事業が推移していた矢先、2011年3月東日本大震災が発生しました。

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「当時横浜から秋田まで新幹線で通っていたんですけど、震災後は誰も乗っていない。外国人も日本人もだれも秋田に来ない。本当に大変なことになったなと」

善井さんは振り返ります。銀行に借り入れし開発したアプリは、震災の翌月にリリースしました。しかし観光客がこなければ、収益はあがりません。さらには営業所開設時には、政府の緊急雇用創出推進事業を活用したため、事業費と人件費を賄うことができても、どんな状況でも解雇はできませんでした。

「収益はでませんでしたね。特に震災から1年過ぎたあたりから本当の厳しさを感じました。しかし、雇用は続けなければいけない。人件費が賄えるといっても、この事業所を管理する東京の社員、また社会保険以外の社員にかかる経費は収益から出す必要がありますから」

”震災の1年後に本当の厳しさが来る”とは、今まさに苦境に立たされている経営者の方には、さらに重い現実を突きつけられるかもしれません。「今は何とかなっている」という状況でも、その先を考える必要性がありそうです。

2012年7月、善井さんは初めて東京本社にいた3人をリストラすることになります。苦渋の決断でした。しかし、これが社員の不安をうみ、一人辞め二人辞めと退職者が続きます。ついには、東京の社員は半数に。銀行の借入金の返済や、社会保険料の未払い分の交渉など、まだまだ先は見えませんでした。

直感を信じていれば…

こんなときには、弱みに付け込む人が出てくるのは、ドラマ上の話だけではなく…。

「”一緒に事業しよう、社会保険料の未払いはこっちで負担するから”という話をいただいたんです。直感でなんとなく怪しいなぁとは思ったんですが、負担してくれるなら…と、背に腹は代えられない状況に話にのってしまった。そしたら、未払いの負担をすることもなく、私の肩書きだけを利用して仕事を請け負い、去っていきました。いつもなら怪しいってすぐにわかるのに、冷静になれていないんですよね」

「今苦しんでいる中小企業の経営者さんもたくさんいると思います。冷静になればおかしい話だと気づきますが、焦ると判断を誤ります。最後は自分の直感を信じてほしい」と、善井さんは言います。

取材中、直感という言葉が何度も出てきました。経営は、直感を信じる繰り返しなのでしょう。しかし、東日本大震災や今回の緊急事態宣言は、今までにない状況下で冷静になれず、いつも信じていた感覚を忘れてしまうかもしれません。逆に言えばそれほど追いつめられているわけです。それでも冷静にならなければいけない経営者とは、どれほどの心の強さが必要なのでしょうか。

善井さんのお話を聞き、私は、実家のことを思い出しました。自営業の家庭に育ったのですが、高校3年のとき、両親が私と弟を居間に呼び出し、「店を閉める」と告げられたときの状況は今でも覚えています。「店のことを気にしなくていいから、受験を頑張りなさい」と言われても、涙がとまらなかったその理由は、資金的な心配ではなく、それよりも私の中で、店=両親であるからでした。両親が店のために力を尽くしていたかを見ていたからこそ、両親を思うとどんな言葉をかけてよいかわかりませんでした。

今苦境に立たされている経営者の方も、子どもがいらしっしゃる方、また多くの従業員にも家族があります。自営であれ、会社員であれ、親の仕事は子どもの誇りです。現状が打開できる最善の方法が見つかるように、助成金などの活用、友人や公的機関に相談するなど、なんとか危機を乗り越えましょう。

インタビュー後半では、善井さんがどのように乗り越えたのか?また、その経験がいまどのように生かされているのかを紹介します。


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