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HONEY ROSIE HOUSEがある日々

2024年8月10日、私は再び HONEY ROSIE HOUSEへと赴いた。

なんやかんやで去年の12月以来であり、久々のポップアップとなる。本当は関西圏でやりたかったようだが上手いこと都合がつかなかったそうな。今度もまた、渋谷代官山にある前回と同じ建物での開催となった。

私としては行きやすい。

まあまあ運にも恵まれチケットを数枚手にしたので、1年に1回の楽しみとばかり足を運ぶ。真夏も真夏なので当然熱いが、持病がバグを起こす確率がゼロに近いのでその意味では安心だ。前回のような謎の電車酔いにも襲われず(あれは本当になんだったんだ……?)、すんなりと到着する。

受付を済ましてお店に入る。買いたかった新商品のTシャツを手に取り、しばらく物色してからレジへと進む。そこには当然、蘭世さんが立っていて。

おお、おしゃれだ……。

前回訪れたときの蘭世さんはフェイバリットカラーの赤いシャツを着た比較的シンプルな出で立ちだった。いろいろ装備する前のガンダムや仮面ライダーみたいな趣があり、来店1ターン目としては与しやすかった。

他方、今回はおしゃれの基本フォームといった塩梅あんばいだった。乃木坂時代後半によくしていた髪型で、私のおしゃれ語彙では形容しがたい上着を羽織っている。首には今回の目玉ことネックレスに加え、もう1つアクセサリを付けていた。

おしゃれの店を開いている人がガッツリおしゃれをしている。そんな寺田蘭世さんの前にいたのは、おしゃれレベル1の人だった。

………………

…………

……

私は元々おしゃれに疎い人だ。無地の服を毎日テキトーに着ていて、それを良いとも悪いとも思っていない。ただただ何のこだわりもなかった人だ。

おしゃれにこだわる蘭世さんの在り方をおもしろいとは思ったが、そのおしゃれなるものはてんでわからない。まあ精々、HONEY ROSIE HOUSEに通うことでほんのちょびっとでもオシャレになれればいいなあくらいに思っていた。

しかし、#HONEYROSIEHOUSE が発信するLINE配信(もうすぐ終了して別のサービスになるらしい)を読んでいるとき、ふと思った。

"ただ単に寺田蘭世の真似をしていても寺田蘭世から遠ざかるのではないか"

私が知っている蘭世さんは意思なき模倣を良きとしない人だ。人ひとりずつの個性を(たとえささやかであっても!)大事にして、それを活かす在り方を求め続けている。そんな人だからこそ、酔狂だなあと思いつつ未だに追っている。

だがそんな蘭世さんにあやかりたいなら、蘭世さんがお出ししたものをただ買って付けて終わるだけでは足りないのではないか。前回の来店からちょくちょくそういうことを考えるようになった。

そんな折、仕事の帰り道のこと。駅前に露店っぽいお店が開いていた。何やらいろんなデザインのTシャツを売っている。

……買ってみようか。

おしゃれに暗い私にできることなどたかが知れている。しかし、ちょっとTシャツをがんばってみるぐらいならできる。

この "ちょっと" ってやつが良いのではないか。

HONEY ROSIE HOUSEへ通う上で大事なのは、今よりほんのちょっとでもおしゃれになろうという気概なのではないか!

……とまあ大袈裟なことを考えつつ、普通にTシャツを買うことにした。そんで実際になにを買うか。これはもうその場でビビッときたものを買うしかない。服選びのポイントは自分がときめくかどうか。そう蘭世さんも言っていた。

よし、これにしよう。

買って、帰って、家で着てみる。……悪くない。良いかどうかはわからないが、少なくとも気分は悪くない。そんな私の目にふと映るものがあった。

ピンクの帽子だ。

HONEY ROSIE HOUSEで買ったはいいが、流石に自分には合わなすぎると思って放置していた。紺の帽子は使ってる。リュックは使ってる。ベルトも使ってる。アクセサリ類はリュックに付けて一応使ってる。しかしピンクの帽子となると、物は試しに買ってみたはいいたが流石に使いづらかった……が、なんとなくかぶってみることにした。物は試しだ。

ぷかー

流石に素顔を出す度胸はないので、その辺にあった懐かしのキーホルダーを写真に撮って、背景を抜いて、上からかぶせておく。

うん、まあ。

そもそも着てるやつがダサく、おしゃれからはほど遠いにしてもだ。無地の服の上にかぶったときよりはしっくりきた。少なくとも、気分はそう悪くない。

そこで私は気がついた。私がかぶるものとしては非日常が過ぎるピンクの帽子に対し、他に着ているものが無地のTシャツではあまりにもミスマッチなのだ。色や柄をちゃんとがんばった服の方がまだおしゃれに近い……か?

そもそもの話として、どう足掻いたところでピンクの帽子が私に似合うとは思えない。しかし、そこで諦めてしまうのではどうにもつまらない。今この瞬間、『このピンクの帽子をどうにかしてギリ成立させようチャレンジ』が始まった。

そしてまた仕事の帰り道、また同じ露店がTシャツを売っていた。

さあ考えどころだ。私の乏しい知識を総動員する。そういえば以前、ひょんなことから観たヒルナンデスでブルベ・イエベとか言ってたな。今持ってるのは青だろ。おしゃれにおける対極は黄色か。なら対比をすれば何かがわかる……?

よし、これだ!

作戦名は『ここまで振りきればピンクの帽子が浮くこともないんじゃないか大作戦』。自分でやっててかなりムリがあるとは思うが、気分はそう悪くない。

実際これを着ていると、だいぶ気分が変わるのだけは確かだ。

……

…………

………………

そんなこんなでレベル0がレベル1にはなったと仮定して、私はこの帽子をかぶったままHONEY ROSIE HOUSEを訪れた。室内でかぶることへの葛藤もなくはなかったが、説がアリかどうかを聞いてみたかった。なんやかんや考えた結果、シャツは青い方を先にするのが良かろうと思った。

結果から言うと、やって良かった。

コーデが良かったかどうかはともかく、Tシャツは目に見えてウケていた。ブランド名まで聞いてきてなんかやたら気に入っていた。抜けた感じがいいらしい。たまたま蘭世さん好みなやつを引いたのかもしれない。その後、間を置いてから黄色を着てもっぺん来店したら一応は良きと言ってもらえた。

そんな蘭世さんのことは一層おしゃれに映った。たとえミリ単位でもおしゃれについて真面目に考えた結果、そうなったのかもしれない。

お会計を済ますまでの短い時間でいくつか喋る。前回、100円玉で絨毯爆撃したアホのことを覚えていてくれたのは驚いた。しかしそれ以上に驚いたのは、こちらの靴まで観察していて褒めてくれたことだ。ぶっちゃけ大した靴ではないが、来る前に(汚れが悪目立ちするといけないから)磨いておいたのが良かったのかもしれない。驚いた私に蘭世さんはこう言った。

"みんなのおしゃれ見てる"

私がどれだけ蘭世さんのことを理解できてるかは怪しい物だが、少なくとも、蘭世さんはおしゃれがしたいから、そしておしゃれをしてほしいからあの店を開いているのだ。乃木坂時代、おしゃれに餓えていた時のことを思い出す。

蘭世さんと実際に話してみた感触として、1ミリでも2ミリでもとにかくやってみるかの精神はやっぱり大事だなと思った。

ピンクの帽子にはより良いデザインのシャツが要る説については蘭世さんも肯定してくれたが、そうはいってもピンクの帽子を使いこなしたと思いあがれるほど脳天気な人間ではない。しかし、それでもいくつかの学びを得た。

『これ、私が着ても大丈夫か?』はファッションの母なのだ。

このアイテムには何が合う?と考えることで次に繋がる。最初から無難に大丈夫そうなものを選ぶと問いが生まれないから進歩もない。

個性を大事にとは、そういうもんでもあるかもしれない。

なので私は、ネックレスの購入を検討する際もその思考を反映することにした。金と銀があり、銀の方が無難に使えそうで人気もあったが金で良きと思った。金の方が何かを教えてくれる気がしたのだ。

ありがとう、HONEY ROSIE HOUSE。

それはそうと、最後に1つ質問した。

私「ひょろひょろくん、元気?」

蘭「元気、元気、一緒に寝てる」

末永く……!

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