美しさってなんだろう

何もできない苦しい夜に、ふと心に火が灯されてしまった夜に、美しさとは何かを考えていた。

あの人が放った芯がある優しい怒りが、美しく見えた。
きっとその高潔さにあるんだろう。

彼女が私に向けた誰のためでもない目線を、美しいと思った。
ひとりの存在として、誰にも媚びることのない強さを持った輝きを放っていたからだろう。

シワだらけのシャツを着て、無精髭の生えた彼が、朝早く珈琲を淹れる一連の所作に、美しいと感じた。
温かい心根と丁寧さが所作に現れていたからだろう。

私はきっと、顔の造形や数学的なものに、あまり美しさは見出せないのだと思う。共感はできるけれど、心の底まで響かない。

一瞬の出来事なのに、それが永遠かと思えるほど脳裏に焼きつくあの光景に、美しさは宿ると思う。

刹那的で永続的な、あの瞬間に、宝箱いっぱいの黄金よりも輝くものを見出すのだと思う。

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