ある雨の日のこと
最近、やたら空が暗い。芒種の季に入り、少し前に日が伸びてきたなと思っていたが、ここ数日はその光も暗い雲に遮られている。
14時半、カーテンを開けて外を見ると雨が降り始めてきているようだった。そろそろ梅雨の時期かと思いながら、一人用のソファに腰掛け、しばし雨を眺める。雨の日は静かで良い。人の雑踏も鳥の声も、雨の日はどこかに消えている。代わりに聞こえるのは、優しく、けれど哀しさも感じる雨の音。こんな日は本を読むか、ピアノを弾くに限る。
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