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掌編小説集

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掌編小説を載せております。また、掌編小説に写真と音楽を付けて動画化した作品もあります。基本無料設定ですが、お気に召したらサポートいただけると大変励みになります。
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#物語

【掌編小説】画面の向こうに

 友達に佐藤君という人がいるんだ。学生時代から付き合いのある悪友みたいな奴。そいつから奇…

【掌編小説】廃墟は見おろす

 千葉県某市のある地域は、近年過疎化の影響で空家が増えている。その中SNSで交流している…

【掌編小説】最後の饗宴

 寝つけないまま夜明けをむかえようとしていた。昨夜友人たちと酒を飲み交わした名残で血液は…

【掌編小説】曼珠沙華の置き土産

 暗闇の中にはびこる稲が街灯に照らされて海藻のようにうごめいている。太陽の光を浴びている…

【掌編小説】骨と影

 それを拾ったのは大学の友人たちと海水浴に出かけたときだった。海水浴とは名ばかりで実情は…

【掌編小説】雨の手

 うちの同僚の知り合いにタカハシさんって人がいてね。これはね、その人の話なんだ。  梅雨…

【掌編小説】蝶化身

 コクチョウが行方不明になった。  アパートの大家にたずねても彼の安否はわからなかった。それどころか無愛想で付き合いのわるいコクチョウを快く思っていない大家は、いつものように部屋で自慢のチョウとたわむれているのだろうと揶揄した。子供の頃からチョウを偏愛しているコクチョウは、その中でもクロアゲハに尋常ならざる愛情を抱いていて、飼育している数十匹のクロアゲハすべてに名前を付けて室内に放していた。アパートの外からは彼の部屋を飛びまわる無数のクロアゲハが見えた。たまらないのは外に出る

【掌編小説】鳴き声のする風景

 煎餅布団に横たわる友人はミイラのように痩せ衰え、根ぶかい苦悶の痕跡を土気色の顔に残して…

【掌編小説】工廠を照らす激しい日光

 京橋駅の裏手にある慰霊碑をおがむところから見舞いははじまる。それから公園の随所にのこる…

【掌編小説】闇の底から

 あまたの死傷者をだした都内の地下鉄脱線事故は記憶にあたらしく、原因究明の捜査はいまもな…

【掌編小説】回帰する魂の話

 とおりすぎる人に会釈する。その初老の男はうつむいたまま、千里川に沿うように去っていった…

【掌編小説】雲隠れ

 堺市のR病院は心霊スポットとして有名であり、経営当時のうわさばなしに食いついた物好きの…

【掌編小説】京田辺の知人

 京田辺をテーマとした怪談が募集されていることをしり、U野は思いきって挑戦することにきめ…

【掌編小説】田辺公園の休憩所にて

 自宅にかえる途中、田辺公園でひとやすみすることにした。竹ノ脇池に設置された屋根付きの休憩所の椅子に腰をおろして、鞄からちいさな紙袋をとりだす。なかには土産にもらった三個のでこ栗が入っている。そのうちの一個を食べる。はじめて口にする味だが、なかなか美味だった。  そうしてくつろいでいると、どこからか視線を感じた。ふりかえるとむかいの椅子に髪のながい女の子がすわっていた。黒い衣服をきたすがたは、まるで人形のようだった。  いつの間にきたのだろうか。親と一緒ではないらしい。ぽつん