2月の肌に触れるやさしさ[ショート小説]
ダウンコートを脱ぎたくなる気温が続いて、週末、近所の咲き始めた梅園には人が群がっていた。ある人はスマホのカメラを枝に向けて、ある人はビニールシートを敷いて焼きそばを食べている。
冬も終わりか・・・
もうマフラーを巻いていられなくなる。
例年だったら、これからどんどん暖かくなることにそわそわと期待したり、春に何を着ようか悩んだりしていた。
今年は違う。彼女にカシミヤのセーターをもらったのは一昨年のクリスマス。今度のクリスマスは僕がちょっと高い冬物のアイテムをプレゼントしようかなと思っていたけど、冬が来る前に別れた。
予兆はずっと感じていたけれど、ささいな行き違いで気づいたら別れ話になっていた。
この冬も僕はもらったセーターをしているけど、そろそろ衣装ケースにしまわないといけない。
次の冬は取り出すんだろうか。
急に突風が吹いてきた。ぬるい風をわざとらしく寒がるように、マフラーの巻きを強くして肩をすぼめた。
あごに当たるカシミヤの肌触りに、誰かが僕を受け止めてくれたような気がした。
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